弄愚壱

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2016年12月17日 01時30分]
‘A long time ago, in a galaxy far, far away....’で始まる映画を、遠くもない昔、はるかかなたでもない近場の映画館で観てから1年弱が過ぎた…
 弄愚壱 (1)
 《二十二年前、『スター・ウォーズ』第一作を見た小説家として、今回の新作
  を見るにあたっての危惧がふたつあった。第一作における、あの神話素
  の集積としての封建的ロマンが再現できるのかというのがひとつであり、
  第一作で物語の歴史的背景をうすぼんやりと感じたがゆえの、あの物語
  の重層性が、サーガの濫觴である今回の新作では当然なくなるのでは
  ないかというのがふたつめの危惧だった。 (略)この他にも「より大きな最
  終的な冒険にたどりつく筈の一連の小さな冒険」つまり「探求」であるとか、
  自分がヒーローであることの証明とか、祭儀的な死とか、龍退治とか、第
  一作にはすべてが揃っていた。今度の新作にはそれが欠落しているか、
  あるいは第一作の焼きなおしになっている。》
  (筒井康隆 「『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』について」
  /『文學界』1999年8月号/『文学外への飛翔』 小学館:刊 に収載)
 弄愚壱 (2)
筒井康隆が抱いた‘危惧’は、エピソード1(TPM)・2(AOC)・3(ROS)を通じてその全てで現実のものとなり、さらにエピソード7『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(TFA)でも現(うつつ)となった。ノースロップ・フライによれば「神話/ロマンス/叙事詩・悲劇/リアリズム小説・喜劇/アイロニー」という順序で西欧叙事詩文学が類型を移してきた、と筒井康隆は前掲の稿で引いていたが、結局に《神話素の集積としての封建的ロマン》はエピソード4(NH)・5(ESB)・6(ROJ)の旧3部作に限られていたのである。そこへ、《もうひとつの、スター・ウォーズ》を名乗るスピンオフ作品が生み出された…何だか嫌な予感がするが、さて?
 
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(ROGUE ONE: A STAR WARS STORY)
観賞後記
 
クリス・ワイツの脚本にもギャレス・エドワーズが監督であることにも何らの期待をしていなかったし、さらにディズニーによってトニー・ギルロイが投入された撮り直しを耳にしていたので、エピソード7(TFA)以下の駄作を覚悟して『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を観始めた。親の死によって旅立つ主人公…またも《第一作の焼きなおしになっている》、もう駄目だ。ところが…
 弄愚壱 (3)
 《また新作では、第一作ほど豊かには、異形の者が登場しないのも物足り
  ない。神話性を持つ異形の者はロマンスでは主に身体障害者だが、こ
  れは異世界を描く時にはさらに重要である。 (略)だとすればわれわれ
  のこの新作に対する興味は、第一作にたどりつくまでの、例えばなぜア
  ナキン・スカイウォーカーがダース・ベーダーになったのかといったことで
  しかない。 (略)ここはやはり第一作との類似を避けたプロットが書ける
  協力者も必要だった筈である。それによって第一作との細部の異なりが
  さほど目立たず、比較されることも避け得た筈なのだ。》
  (筒井康隆 前掲稿)
 弄愚壱 (4)
何と新作『ローグ・ワン』は、捨て身の特攻部隊「ローグ・ワン」の全滅死を描いた単なる戦争映画だった。《祭儀的な死とか、龍退治とか》の冒険譚は何もない。《なぜアナキン・スカイウォーカーがダース・ベーダーになったのか》という興味と比べれば極めて低俗な「なぜデス・スターは脆弱だったのか」という謎だけで推す。身体障害者のチアルート・イムウェ( ドニー・イェン:演)やソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー:演)はなかなか面白いが神話性は薄いし、彼らや主人公が唱える‘フォース’はまるで念仏やシャハーダである。つまり、神話素を有したロマンス英雄のサーガを捨てて、リアリズムやアイロニーへ重心を移した2時間ドラマにしてしまった。いわば「もうひとつの、『ディープ・インパクト』または『アルマゲドン』あるいは『永遠の0』」である。物語の重層性さえ失って《比較されることも避け得た》映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、エピソード1(TPM)・2(AOC)・3(ROS)・7(TFA)などよりもずっと好い、物語を弄ぶ愚かさを作品自体が教えてくれるから。この全く神っていない安いディズニー映画を、弄愚壱(ローグ・ワン)として観賞を可とした。物語は、死んだ──。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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