ツマラナイ回転

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:art・芸術・美術 / カテゴリ:観の記:美面 [2016年09月18日 23時30分]
エッセイ「ジブン的コーヒー史三つの時代。」(全日本コーヒー協会広報誌『Coffee Break』Vol.83 2015年8月)で、しりあがり寿は「憧れの時代」と「主食の時代」と「健康の時代」の3つの時代を挙げていた。「健康の時代」なんてのは‘全協’に媚び過ぎだし、別の‘スタバ’本でコーヒーに合う本を紹介する稿でも、《スターバックスの空間ってとても落ち着くから、そこでいろんなことを考えてもいいよね》(エイムック『スターバックス大解剖』 枻出版社 2007年)とか臆面もなく言っていた。いや、しりあがり寿にも臆面はあるんだろうけれど、そこを取り繕うことも面倒臭いんだろうな、たぶん。《だけどホントは「主食の時代」に友達とだべりながら飲んだ自動販売機のカフェオレこそが、ボクにとっては大切な「珈琲」だったのかもしれないなー》(前掲 広報誌)とか、《水木しげるさんの『怪奇死人帳』とか、小栗虫太郎の『魔境』とか、幻想的、怪奇的な作品をコーヒーが引き立てると思うんだ》(前掲 エイムック)とか、ナルホドと思えるから好いのだけれども…。そして、しりあがり寿の展覧会が巡回、いや、回転して来たから、そこでいろんなことを考えてもいいよね…
 ツマラナイ回転 (1)
 
「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」 (刈谷市美術館)
 
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刈谷市美術館で催される「回・転・展」の初日、入場してみるとロビーのあちこちで大きな赤いネジが早くも回転していた。
 
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マンガの原画はどれも回転していなかったが、「非劇のプリマ」(作:しりあがり寿/画:西家ひばり 1985年)はコマの中で回転していた、シェー! 作品名が「悲劇のプリマ」と表示されている、シェー! そして、「弥次喜多 in DEEP」(1997年)…
 
 《どん詰まりの中で、どう、どん詰まるか、突き抜けるかっていうのをすごく一
  生懸命やったマンガな感じがして、好きなんですよ。どん詰まり感と始まり
  感、両方あるなって感じですね。(略)いいところはやがて回ってくるはずな
  んです。それをスムーズに回させればいい。》 (夏目房之介/アエラムック
  AERA COMIC 『ニッポンのマンガ』 朝日新聞社:刊 2006年)
 
例えば、みうらじゅんの作品はクダラナイが、しりあがり寿の作品はツマラナイ。どん詰まらないで再び始まって《やがて回ってくる》、つまりツマラナイ回転なのだ。墨絵のインスタレーション「崩」もツマラナイし、「回るヤカン」も「回転派のアトリエ」も「まわる歴史」も「まわる白昼夢」も「回転体は行進するダルマの夢を視る」も皆ツマラナイ回転だ。 ♪ 回転は強いぞ すごいんだぞー ヨッホヨッホホ そりゃいくぞー ♪
 
 ツマラナイ回転 (8) ツマラナイ回転 (9) ツマラナイ回転 (10)
「弥次喜多 in 刈谷」の終結部を墨絵で描きながらのトークを楽しんで…しりあがり寿がロビーの奥で障子にマンガを描(か)いてんだ。あ、こうしちゃおれん! 途中で映像作品の「ゆるめ~しょん」と「回転道場」を観にいって笑い転げる。短編映画「回転道場」は傑作だ。公開制作の見物に戻れば、芋川うどんの‘ひらべってぇ’世界がメビウスの帯になってストーリーは完結、いや、回転した。「愛はウラオモテ」と名付けていたが、「会い(逢い・遇い)はウラオモテ」でもあるだろう。
 
 ツマラナイ回転 (11) ツマラナイ回転 (12) ツマラナイ回転 (13)
美術館併設の茶室‘佐喜知庵’で、ぐるぐる回転するエビフライの小間を観る。館に戻って、巨大で黒い作品「ピリオド」のツマラナイ回転をもう一度観る…
 
 《マルセル・デュシャンはほぼ100年前、男性用小便器を「泉」と題して美術
  館に展示し、「芸術」や「創作」の意味をアイロニカルに問うた。ひょっとす
  ると、今作はデュシャンへのオマージュか。(略)会場の最後に、真っ暗な
  部屋があった。地面に碁石形の巨大な黒い物体があり、じわじわと回って
  いる。タイトルは「ピリオド」。「この作品が一番、気に入ってるんだよね」。
  頻発するテロや停滞する経済──。社会は混迷し、行き詰まっている。
  「でもね、止まっちゃうよりはいい」。そんな思いを込めた。》 (「世の停滞
  感、くるくる回す 現代美術で初の大規模個展」 佐々木宇蘭:文/『日本
  経済新聞』夕刊 2016年8月3日)
 《デュシャンとか赤瀬川原平とか赤塚不二夫とか皆スキ。バカダダとか宣言
  したい。ダダとかよくわからないけど。》 (しりあがり寿/「Twitter」 2016
  年7月6日)
 
しりあがり寿がバカダダ宣言するのはケッコウだが、日本経済新聞の紹介はバカだな。「回・転・展」にマルセル・デュシャンを引例するならば、「泉」よりも「アネミック・シネマ」(Anémic Cinéma)の方が相応しいだろうに。そういえば、赤瀬川源平も《黒褐色のコーヒー宇宙》に《白いミルクが何本も尾を引きながら、くるくる回転して渦巻きギャラクシーを形成》する様に執心していたな。刈谷市美術館を出て、西尾の「フレーバーコーヒー」へ遊びに行った。これで「回・転・展」の面白くてツマラナイ回転にピリオドを打ったことになるのか?──《でもね、止まっちゃうよりはいい》。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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