後妻打ち

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2016年09月10日 01時30分]
『黒い家』(1999年)の菰田幸子、『ふくろう』(2004年)のユミエ、『後妻業の女』(2016年)の武内小夜子、3つの映画に登場した女はサイコパスであり、実は同一人物である。
 後妻打ち (1) 後妻打ち (2) 後妻打ち (3)
 
 《サイコパスは社会の捕食者であり、生涯を通じて他人を魅惑し、操り、情け
  容赦なくわが道だけをいき、心を引き裂かれた人や、期待を打ち砕かれた
  人や、からになった財布をあとにのこしていく。良心とか他人に対する思い
  やりにまったく欠けている彼らは、罪悪感も後悔の念もなく社会の規範を犯
  し、人の期待を裏切り、自分勝手にほしいものを取り、好きなようにふるまう。》
 《もっともドラマティックなのは、一般の人たちに嫌悪感を与えると同時に彼ら
  を魅了してしまう、良心のかけらもない冷血な殺人犯たちだ。彼らの多くは、
  映画の題材としてもとりあげられている。》 (ロバート・D・ヘア 『診断名サイ
  コパス -身近にひそむ異常人格者たち-』 小林宏明:訳 早川書房:刊)
 
サイコパスの女に魅入られて《映画の題材としてもとりあげ》た映画監督たちは、森田芳光が2011年に死に、新藤兼人が2012年に死んだ。『後妻業の女』で殺された津川雅彦と同い年の鶴橋康夫は存命だが、これも時間の問題だろう。大竹しのぶは、サイコパスである──まあいいか。
 
『後妻業の女』 観賞後記
  
 後妻打ち (4)
 《“平成の毒婦”と呼ばれる女が3人いる。結婚相談所や婚活サイトを舞台に
  複数の男性が所有する資産を狙った筧千佐子と木嶋佳苗。そして、いくつも
  の家族を巻き込んだ連続殺人事件の主犯とされる角田美代子である。(略)
  そこで連想するのが心理学でいう“サイコパス”である。一般的には反社会
  的人格障害者と訳されることが多く、良心がいちじるしく欠如しているとか、
  口が達者で平然とウソをつく、罪悪感が皆無といった特徴が挙げられる。
  (略)筧被告の事件から連想するのが、昨年8月に出版された『後妻業』とい
  うセンセーショナルな犯罪小説だ。著者は直木賞作家の黒川博行氏。知人
  の父親が亡くなった際、内縁の妻を名乗る女性が現れ、公正証書遺言を振
  りかざして、遺産を要求したのだという。その経緯を黒川氏はこう話す。「知
  人がその被害に遭って、相談された話をもとに書いた。そこでも9年間で高
  齢の男性が4人死んでいる。『後妻業』という言葉は、そのときに知人が使っ
  ていたものだ。入籍はしていないものの、80過ぎた爺さんに60代、50代の
  女が積極的に近づいてきたら、それはもう金目当ての可能性が高い」》
  (岡村繁雄 「平気で人を殺す女は、何を考えているか」/Webサイト
  『PRESIDENT Online』 2015年3月5日)
 
シン・ゴジラ』は「現実(ニッポン) 対 虚構(ゴジラ)」を掲げていたが、これに倣っても『後妻業の女』を「現実(木嶋佳苗・筧千佐子) 対 虚構(武内小夜子)」と捉えることはできない。何故か? 鶴橋康夫監督は《原作はハードボイルドですが、コミカルでユーモアのある作品にしようと考えて作りました》(モントリオール世界映画祭上映前挨拶/東宝Webサイト 2016年8月30日)と言う。《原作は『後妻業』ですが、原作者の黒川先生に相談して、映画は『後妻業の女』というタイトルに変更の許可を頂きました。大竹しのぶ讃歌です》(プロダクションノート/『後妻業の女』Webサイト)とも言う。クライムノベル『後妻業』がコメディ映画『後妻業の女』へと変容した時、そこに「現実(木嶋佳苗・筧千佐子) 対 現実(大竹しのぶ)」を掲げるべき映画が作り出されたのである。つまり、映画が描く内容は犯罪から離れていったが、その映画が作られた行為それ自体は犯罪に近い。『後妻業の女』は、サイコパスを描いた映画である──まあいいか。
 後妻打ち (5)
 
『後妻業の女』では豊川悦司(結婚相談所の柏木亨:役)と永瀬正敏(興信所の本多芳則:役)が頑張っているが、他の演者は誰が誰でもどうでもいい程度で「通天閣どころやない…ピサの斜塔や~」。やれ熟年婚活だの財産争いだのを‘世相’と称して《あなたの愛とお金、ねらわれてませんか?》という惹句を掲げた映画が、自ら丸ごと騙されていることに気づいていない…この実態の方が深刻である。必要なのは、後妻業を見抜くことではない。「あなたの周りにサイコパスはいませんか?」と精神病質チェックリスト(PCL-R)を示すことである。だが、サイコパスの女は半端な‘後妻打ち’(うわなりうち)では滅しない。『後妻業の女』は、ファム・ファタールを描いたつもりでサイコパスに操られた映画だった──まあいいか。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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