砂漠の虎

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2016 [2016年09月01日 01時00分]
コーヒーメーカーはコーヒーを淹れる道具である。その様を、西加奈子は《「珈琲入れるしか、ようしませんのや」という真摯な意思をむんむんにたたえている》(「珈琲儀式」/『ごはんぐるり』 文藝春秋:刊)と言っていた。しかし、どうも最近はそうでもないらしい。《コーヒーを作ることだけが、何かを伝えるにせよ私に出来る唯一のことかもしれません》(「大坊珈琲店のマニュアル」/『大坊珈琲店』 誠文堂新光社:刊)と言っていた大坊勝次を超えて、コーヒーメーカーも‘種割れ’する時代になったのか?…
 砂漠の虎 (1)
 
 《南米コロンビアの工業デザイナーが、朝のコーヒーだけでなく夕食用のおいし
  いキノコを栽培するコーヒーメーカーを発明した。このHIFAコーヒーメーカー
  は、コーヒーの抽出かすを食用キノコ栽培の培地にしてしまうのだ。抽出カス
  は本体下部に格納されて、キノコ栽培の肥料になる。ここに菌糸を植え付け
  て水を与えると、キノコが生えてくるというわけだ。本体上部は二重構造になっ
  ていて、コーヒーを長時間保温することができ、またキノコ栽培に最適な暗さ
  と湿度を確保している。》 (「コーヒーの抽出かすを利用してキノコを栽培!?
  優れモノのコーヒーメーカーが登場」/Webサイト『AOL News』 2016年
  8月17日)
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Adrián Pérez(エイドリアン・ペレス)とMauricio Carvajal(マウリシオ・カルバハル)が発明した道具は、コーヒーを淹れるだけではなくてキノコを栽培する。ヘミレイア・ヴァスタトリクスという菌類を病原体とするCLR(コーヒーさび病)に泣かされ続けているコーヒー業界、そこへ菌類であるキノコを栽培する多機能コーヒーメーカーが登場するとは…これはシック・ジョークの一種か? 《このHIFAコーヒーメーカー》は、《コーヒーの抽出かすを利用》などとリサイクルを気取っているが、《真摯な意思をむんむんにたたえている》とはいえない。
 
 《Evan Booth氏は、設計とプログラミングの専門家。このほど、キューリグの
  コーヒーメーカー「K350」をたったの8日間(199時間56分36秒)で、義手
  に変えてしまった。完成した義手を見ると、これが本当にコーヒーメーカーか
  らできているのかと疑ってしまうが、動画にはその裏付けが記録されている。
  200時間に迫る動画が5分に早送りされているので、かなり見づらいが、次
  第に手の形が形成されていくのがわかる。完成した義手は、実際に物を掴む
  ことも可能で、動画ではコップを持ち上げる様子が確認できる。》 (「コーヒー
  メーカーを義手にDIYしちゃった動画が話題に」/Webサイト『RBB TODAY』
  2016年8月15日)
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空港の保安検査を通過する機器だけを使って凶器を作り続けるEvan Booth(エヴァン・ブース)は、コーヒーメーカーをバラバラにして義手に作り変えた。キューリグは、2006年にグリーンマウンテンコーヒーに吸収され、2016年にJABホールディングに買収された。‘Hedberg’と名付けた義手の元に、投資会社に(傘下のヤコブダウエグバーツやピーツコーヒーアンドティーやカリブーコーヒーと同様に)義肢か装身具のように扱われているキューリグのコーヒーメーカーを選ぶとは…これもシック・ジョークの一種か? 《真摯な意思をむんむんにたたえている》とはいえない。
 
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コーヒーに義手、といえば「砂漠の虎」ことアンドリュー・バルトフェルドが思い浮かぶ。バルトフェルドは、《今回はモカマタリを5%減らしてみたんだがね…》とか、《今度のにはハワイコナを少し足してみたんだが…》とか、《僕はコーヒーにはいささか自信があってねぇ》などと言っていたが、《コーヒーが美味いと気分がいい。さ、戦争をしにいくぞ》と嘯いて、左眼と左腕と左足を失った。それでもコーヒーサイフォンで淹れたコーヒーを飲み続けたから、義手となってもコーヒー愛好家であることに違いないが…。だが、所詮はランバ・ラルの焼き直しでしかないアンドリュー・バルトフェルド、コーディネイターとはいっても(日本創芸学院の)コーヒーコーディネーター程度だろう。広義に解すればコーヒーサイフォンもコーヒーメーカーであるが、それを用いる「砂漠の虎」が《真摯な意思をむんむんにたたえている》とはいえない。コーヒーメーカーも人類も、改変し過ぎて‘種割れ’させるとロクなことにならない。そして、「砂漠に飛ぶのはサボテンの棘(とげ)」と決まっているように、コーヒーメーカーはコーヒーを淹れる道具である。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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