乾いた酩酊

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2016 [2016年08月08日 01時00分]
コーヒーとタバコの相性のよさは異常」という2ちゃんねるのスレッドで、《このスレは帰山人先生へのメッセージと考えていいのかな?》というレスを読んで歓笑した。ごもっともである。そもそも、私にとってコーヒーとタバコの相性のよさは‘正常’である。
 
 《タバコの「乾いた」性質は、もう一つの新しい嗜好品と深いところで繋がっていた。
  コーヒーである。すでに見てきたように、十七、十八世紀の医学書はコーヒーを
  乾いた物質として記述している。(略)タバコとコーヒーは、十七世紀以来、精神
  活動に従事する人には欠くことができないといわれながらも、それぞれの作用
  は奇妙なほど相矛盾している。タバコは安らぎを与え、コーヒーは刺激を与える。
  ふつうならばこの二つの性質は、相殺しあうと考えられるであろう。しかし、そう
  ではない。タバコとコーヒーは、補いあうのだ。その共通の目的は、精神活動を
  最高のものとして、それに従うべく他の身体機構を再構成することだった。(略)
  そしてこの二つは、それぞれ独自のやりかたでこの仕事に取りくんだ。コーヒー
  は頭脳の刺激剤かつ栄養剤としてポジティヴな働きをする。かたやタバコは頭
  脳以外の身体を落ち着かせて、その動きを最小限にまで還元する。つまりネガ
  ティヴな働きをする。》 (「タバコの乾いた酩酊」/『楽園・味覚・理性 嗜好品の
  歴史』 ヴォルフガング・シヴェルブシュ:著 1980年/福本義憲:訳 法政大学
  出版局:刊 1988年)
 乾いた酩酊 (1)
 《おいしいものとはなにか、ということをまず考えてみよう。人間は習慣の動物で
  ある。毎日、必ずコーヒーを飲まねばいられぬ、というひとがいる。また、たばこ
  を止められぬひともいる。そんなひとにコーヒーはそんなにおいしいですか、と
  聞いてみる。おいしいから止められないのではなく、たいていは習い性になって
  いて止められないひとが多い。(略)十人十色といって、そのたばこにもコーヒー
  にも、うまいまずいがあるらしい。それぞれ好みが違うかもしれない。だが、こ
  の場合のおいしいということは味つけの話で、わたしのいうところはものそのも
  の、本来の味の話なのだ。つまり、材料の原味そのものの話である。(略)「料
  理の美味不味は、十中九まで材料の質の選択にあり」と解してよい。いうなら
  種を選ぶことに、ベストを尽くすべきである。》 (北大路魯山人 「材料か料理か」
  /『独歩』3・4号 火土火土美房独歩会:刊 1953年)
 
コーヒーはそんなにおいしいですか? はい(但し、ものによる)。タバコはそんなにおいしいですか? はい(但し、ものによる)。《そのたばこにもコーヒーにも、うまいまずいがある》わけだが、私にとって《この場合のおいしいということは味つけの話》ではない。特にタバコついては、私の愛飲している「アメスピ」(ナチュラル アメリカン スピリット)が無添加で無着香の紙巻き煙草であり、《つまり、材料の原味そのものの話である》。
 
 乾いた酩酊 (2) 乾いた酩酊 (3)
閑話。愛用のライターが壊れてしまった。1941年レプリカモデル(4バレル/7ホール/ラウンドコーナー)のアメスピZIPPO(ジッポー)である。日本正規輸入代理店のマルカイコーポレーション(ローリングスマートロースターを導入してコーヒー屋に進出したワイン屋のタカムラが関連会社)に生涯保証による無料修理を依頼、2016年7月1日に郵送したところ、ヒンジが付け直され、インサイドユニットが新品に替えられて、同年同月末に戻ってきた。この間は、いわゆる100円ライターによる着火で喫煙していたが、ジッポーが帰ってきた前日、Tram(トラム)でコーヒーを喫する際には店のマッチを頂戴した。近来ではマッチを作る店も激減したが、コーヒー屋のマッチで着火したタバコをコーヒーと共に味わうこと、風流で好い。
 乾いた酩酊 (4) 乾いた酩酊 (5)
 
《「料理の美味不味は、十中九まで材料の質の選択にあり」と解してよい》こと、コーヒーやタバコでも同様であるが、この当然も声高に重ね過ぎれば鼻について鬱陶しい。北大路魯山人だろうがジョージ・ハウエルだろうが脳味噌まで湿気て腐った連中には、タバコとコーヒーを喫しながら「ウルサイ、バカヤロウ」と怒鳴りつけてやりたい。タバコが「乾いた酩酊」であるならば、コーヒーは「乾いた覚醒」であろう。コーヒーとタバコの相性のよさは、乾いた‘正常’である。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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