便所の落書き

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2016年08月06日 05時30分]
展示映像『巨神兵東京に現わる』が公開された頃の庵野秀明は、《怪獣映画は製作当時からゲテモノ扱いされていたと聞きますが、日本の特撮作品は海外で高い評価を得ている。日本が誇るべきなのは、アニメーションよりもまずゴジラだと思います》(『朝日新聞』be 「フロントランナー」)と言っていた。サンディエゴのコミコン・インターナショナル会場では、約2年後に劇場公開されるギャレス・エドワーズ監督版『GODZILLA ゴジラ』のストック・フッテージが突如映し出された。共に2012年7月14日のことである。「あのゴジラが最後の一匹とは思えない。もし、水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類が、また世界のどこかに現れてくるかもしれない」(by山根恭平)……そして、その同類は現れた。‘忌まわしき虚心兵’である庵野秀明へと変態する怪獣は、2016年7月29日に東京湾から現れてきた…
 便所の落書き (1)
 
『シン・ゴジラ』 観賞後記
 
 《総監督・脚本に「エヴァンゲリオン」の庵野秀明、監督に樋口真嗣という日本
  アニメと特撮を代表する2人を迎えた本作は、ゴジラシリーズ研究の精華であ
  る。巨大怪獣の格好良さを強調する構図とカメラアングル、あるいは自衛隊
  の戦力を総動員しての対ゴジラ大作戦。それこそかつての特撮ファンが見た
  かった理想のゴジラ映画であろう。自作を引用してしまう庵野の限界をも見せ
  たとしても。第2次世界大戦の戦禍が1954年の「ゴジラ」を作らせた。ならば
  「シン・ゴジラ」は日本を壊滅させる巨大地震と制御不能の原発にほかならな
  い。だがそのゴジラに対峙する「オタクと変人の集まり」、カップラーメンとおに
  ぎりが並ぶ徹夜明けのゴジラ対策本部とはなんだろう。それこそはこの映画
  を作り上げた日本特撮の叡智の結集、雑駁なアメリカ的解決から怪獣ゴジラ
  を取り戻す苦闘の姿ではないか。なるほどその戦いは真摯なものだろう。だ
  が日本特撮の申し子が作った日本特撮の神髄がそれでしかないのなら、ひ
  どくわびしく感じるのも事実である。》 (柳下毅一郎 「日本特撮の真摯なる戦
  い」/『朝日新聞』夕刊 2016年8月5日)
 
 便所の落書き (4)
例えば、『機動警察パトレイバー the Movie』(1989年)の帆場暎一まがいな牧悟郎が岡本喜八で『日本のいちばん長い日』(1967年)のカット割りや『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年)のテロップだとか、昔に敵としたヘドラやデストロイアのように変態する呉爾羅(ゴジラ)が放つ光線が『伝説巨神イデオン』(1980年)まがいで『風の谷のナウシカ』(1982年)の巨神兵もどきの破壊と停止が「火の七日間」だとか、それらも含めての『シン・ゴジラ』が《ゴジラシリーズ研究の精華》で《日本を壊滅させる巨大地震と制御不能の原発》で《雑駁なアメリカ的解決から怪獣ゴジラを取り戻す苦闘の姿》であると捉えるならば、柳下毅一郎の評はほぼ尽くしている。
 
 便所の落書き (2)
もう少し加えるならば、その《研究の精華》の背景は、庵野秀明が《エヴァではない、新たな作品を自分に取り入れないと先に続かない》(『シン・エヴァンゲリオン劇場版』及びゴジラ新作映画に関する庵野秀明のコメント 2015年4月1日/「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」Webサイト)という「逃避の精華」である。《自作を引用してしまう》それこそは、《オタクと変人の集まり》の雑駁な「便所の落書き」から庵野が自己を取り戻す苦闘の姿ではないか。なるほど「私は好きにした。君たちも好きにしろ」としか庵野は言えないのである。この庵野秀明による身勝手で苦し紛れの「逃避の精華」だけが、『シン・ゴジラ』を佳作にしている神髄なのだ。
 
 便所の落書き (3) 
2013年の夏の映画『パシフィック・リム』は‘怪獣映画’の傑作であり、2014年の夏の映画『GODZILLA ゴジラ』は‘怪獣映画’の駄作だった。だが、2016年の夏の映画『シン・ゴジラ』はそもそも‘怪獣映画’などではなくて、‘パロディ映画’として佳作である。《カップラーメンとおにぎり》ばかり食べて腹具合が悪くなり、嘔吐と排泄をしていたら「便所の落書き」を見つけた。読んでみると滑稽や諷刺の効いた面白いパロディ作品だった。そして、《ひどくわびしく感じるのも事実である》。この「便所の落書き」が、映画『シン・ゴジラ』なのだ。そろそろ‘忌まわしき虚心兵’である庵野秀明に対しては、尻尾から妙なモノを取り出す前に八塩折之酒を口から注ぎ込んで動きを封ずるべきであろう。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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