半夏の夜の夢 2

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2016 [2016年07月01日 23時00分]
今2016年も半分を終えて半分を残して、半夏生を迎えた。私の雑念連想を並べ申し上げて、「暑中見舞」に代える。
 
 半夏の夜の夢2 (1)
1年前の2015年7月1日、アメリカ合衆国とキューバ共和国は54年ぶりに国交を回復させることで正式に合意した。「キューバの雪解け」はコーヒーにも及び、2016年4月にアメリカはキューバ産コーヒーの輸入と販売を条件付きで解禁した。フィデル・カストロは同月にキューバ共産党大会で「私がここで話すのはおそらく最後だ」と話したが、その前月には公開書簡で「帝国からの施しを必要としていない」と述べている。私はフィデル・カストロの意を汲みたい。悪の帝国アメリカごときが誇りあるキューバ産コーヒーを扱うことは許されない。地球上の全てのコーヒーは、《帝国からの施しを必要としていない》。
 
 半夏の夜の夢2 (2)
コーヒー色(珈琲色)とは、どんな色なのだろう? 山川直人が描く漫画「シリーズ小さな喫茶店」の単行本2冊目は、『珈琲色に夜は更けて』と題されていた。ビームコミックス『珈琲色に夜は更けて シリーズ小さな喫茶店』(KADOKAWA エンターブレイン:刊 2016年6月)で「珈琲屋ブランキ」が舞台となった話は、「いつもの席」(第11話)と「匂う女」(連載第12話・収載第13話)と「第四会議室」(連載第13話・収載第14話)と「病気の名前」(連載第15話・収載第16話)の4つで、単行本1冊目『一杯の珈琲から』より倍増した。《なんか…世の中ぜんたいの空気が……》(「匂う女」)という通り、幻夢の臭いも倍増していた。夏の夜更けに読むには適したコーヒー漫画かもしれない。
 
「…夜は更けて」といえば、「あゝモンテンルパの夜は更けて」(代田銀太郎:詞/伊藤正康:曲/渡辺はま子・宇都美清:歌/ビクターレコード 1952年)が想い出される。このフィリピン共和国のニュービリビット刑務所に収監されていた大日本帝国軍人が作った歌を口ずさみながら、『まぼろしの珈琲 サリサリコーヒー・ハロハロライフ』(麻生洋央:著/里文出版:刊 1995年)を久しぶりに読み返す。
 半夏の夜の夢2 (3)
 《「…戦争は、悲しい。月曜の朝は、日本の天皇に向かって東の空に皆頭を下
  げさせられ、校庭には日の丸が上がり軍歌も歌わされた。歌わないと兵隊に
  殴られ、反抗する者は投獄された。学校から広場へ連れ出され、一般市民
  や半日ゲリラが何人も殺されるところを、無理矢理見せられた。その中には
  知人もいた。銃殺者は横一列に並ばされ、各自穴を掘るよう命令され、そし
  て皆にタバコをくわえさせて、ババーン、ババババーン」 銃を持つ格好をして
  説明するアントニオ氏の口元は歪んでいた。》
  (『まぼろしの珈琲 サリサリコーヒー・ハロハロライフ』 pp.212-213)
 
コーヒー色(珈琲色)とは、どんな色なのだろう? 岡本綺堂が著した怪奇小説「麻畑の一夜」(『慈悲心鳥』 国文堂書店:刊 1920年)には、次々に人を呑んでしまうフィリピンの島の河水がコーヒー色に描かれている。夏の夜更けに読むには適したコーヒー色の怪談かもしれない。
 半夏の夜の夢2 (4)
 《高谷君が元船からボートをおろして、その島の口へ漕ぎつけたのはもう九月
  の末の午後であったが、秋をしらない南洋の真昼の日は、眼がくらむように
  暑かった。藍のような海の水も島へ近づくにしたがって、まるでコーヒーのよ
  うな色に濁っているのは、島のなかに大きな河があって、その下流が海にむ
  かって赤黒い泥水を絶え間なしに噴き出しているからであった。(略)「なんだ
  かあのコーヒー色の水の底に、人間の知らない魔物でもひそんでいるんじゃ
  ないかとも疑われる。(略)君も勇気があるなら一度あの島へ探検に出かけ
  ちゃあどうだね。」》 (「麻畑の一夜」)
 
コーヒー色に更けた半夏の夜には、幻なのか夢なのかも判然としないコーヒー話を想い狂ってみるのも楽しいものだ。2016年の半夏の夜の夢である。
 
コメント (0) /  トラックバック (0)

コメント

この記事にコメントする

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://kisanjin.blog73.fc2.com/tb.php/928-412ecfb0
編集

kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

04 ≪│2017/05│≫ 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
Powered by / © Copyright 帰山人の珈琲漫考 all rights reserved. / Template by IkemenHaizin