女好きか!

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2016 [2016年06月26日 01時00分]
《私はコーヒーが大好きです。コーヒーをいれるのも好きですし、飲むことも好きです。》(『コーヒー入門』 日東書院:刊 1975年)と自ら語っていた柄沢和雄氏(「ユナイテッド・コーヒー研究所」主宰/「日本コーヒー文化学会」元顧問)が、2016年5月3日に死去した。飲食店業界の経営コンサルタントとして活躍した柄沢和雄氏であるが、赤土亮二氏や永嶋万州彦氏ら同業者に比しても、コーヒーやカフェに対する愛着と執心は抽(ぬき)んでていたか?…昭和の世才に通じた人がまた逝った。
 女好きか! (1)
 
 《昨秋に柄澤先生からお手紙を戴いた。私の起業挨拶への励ましのその文面
  には、ご自身の闘病の記録が綴られていた。 『現在の私は身体とのたたか
  いです。「胃全摘出」「胆嚢摘出」「腸閉塞」「腰椎骨折」「難聴」。特に2年前
  に腰を骨折し、毎日リハビリに通っております。』 満身創痍の言葉しか浮か
  ばなかった。痛々しい文面ではあったが、それでも最後はこう結ばれていた。
  『幸い、頭とペンの仕事はおとろえておりません。現在79歳。畔柳さん(元・
  本学会副会長)の歳まで生きられるか、あと数年はがんばりたいと思ってお
  ります。』》 (狭間寛 「元・本学会顧問 柄澤和雄師を偲ぶ」/『日本コーヒー
  文化学会ニュース』第69号 2016年6月5日)
 
 《「世界カフェ紀行」も、私のコーヒー人生観の現われだったから、楽しみなが
  ら書けた。特に女性がよく登場するが、「女好きか!」と誤解されそうだが、
  不思議と外国では出会いの場が多い。女性を加えた方が「華」があってお
  もしろいと思う。文章に表せない裏話は、これから先、冥土の土産としよう。》
  (柄沢和雄 『世界カフェ紀行』 いなほ書房:刊 2002年)
 
 女好きか! (3)
《畔柳さんの歳まで生きられるか》…いや、及び難かった。柄沢和雄氏は、畔柳潤氏より約10年遅く1936年に生まれ、畔柳潤氏より約1年遅くに逝った。アムステルダムのキナ、サンフランシスコのアイリーン、ニューヨークのエリザベス、ヴェネツィアのロミーナ、ウィーンのルイゼとカタリーナ、ハンブルクのゾーフィ…世界中を飛び歩いてカフェと女性を視察した柄沢和雄氏が《冥土の土産》とした裏話は、どこの街のどの店の女についてだったのだろう? 《「女好きか!」と誤解されそう》と言っていたが、《コーヒーが大好き》だったことに間違いはあるまい。そして、氏のコーヒー話には確かにある種独特の《「華」があっておもしろい》と思えた。その風韻ある「柄沢節」を肉声で私が聴いたのは、2010年11月の「日本コーヒー文化学会 第17回年次集会」での講演が最後となったが…。
 
 《言い換えると、コーヒーには人生哲学のようなものがあるような気がしてなら
  ないのです。 (略)コーヒーは、一般にむずかしいといわれております。たし
  かに専門的にみると限りがありませんが、むずかしく解釈する前に、正確に
  いれ、味わうことがおいしさにつながると思います。 (略)茶道でもいわれる
  ことですが、たてる人の気持ちがすべてあらわれるところに、コーヒーの無限
  の奥行きがあるといえましょう。》 (柄沢和雄 『コーヒー入門』 日東書院:刊)
 
 女好きか! (2)
《コーヒーを手軽に!!》と謳っていた柄沢和雄氏が逝って、コーヒー界は、また少し‘演芸’を失った。それがどれほどの喪失なのか?…《私はコーヒーが大好きです。コーヒーをいれるのも好きですし、飲むことも好きです。》と言いながら、その《コーヒーの無限の奥行き》を考え続ける。
 
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コメント

No title
しまなかろう URL [2016年07月03日 15時30分]

柄沢先生も亡くなってしまいましたか。ボクたちは親しみをこめて〝カラやん〟と呼んでいました。記者時代はよく先生の事務所に遊びに行きました。会社からほんの200㍍ほどのところにありました。行くとコーヒーを淹れてくれて……笑顔がそのまま好人物の証しでしたね。謹んでお悔やみ申し上げます。

to:しまなかろうさん
帰山人 URL [2016年07月03日 20時02分]

厭味を感じさせない自己演出、愛嬌のある話しっぷり…抜群でした。〝カラやん〟メモリアルコンサートでも催してほしいところですが、今のコーヒー業界には故人ほどのタレント性を継いだ指揮者がおりません。生き残っている方へ愁傷を述べて悼詞とします。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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