東京向夏 後篇

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2016 [2016年06月08日 01時00分]
「環境の日」「世界環境デー」の朝を東京で迎えた私は、宿の部屋でネルドリップしたコーヒーを喫しながら、窓を開けて外を覗った。雨が降っていた。隅田川沿いを走るのはやめておこう。梅雨入りか? いや、「優しく雨ぞ降りしきる」だ、レイ・ブラッドベリが死んでから丸4年を経た日でもあるのだから…。前日に続いて、向夏に東京でコーヒーを想う日としよう。
 
【JCS総会当日】 2016年6月5日
 
 東京向夏 (8)
雨が止んだところで宿を出て、隣の「café Bach」(カフェ・バッハ)へ。コーヒーはマラウィ・ヴィフヤ、これにバタートースト。同席した藤田・鎌倉の両氏と談話。ママ(田口文子氏)から土産を頂戴して、トレセンで中川文彦氏と少談。今日の路地にも玉姫祭の賑わい…ん? 路地で遇ったマスター(田口護氏)とも少談。私はこの街が好きだ。
 
 東京向夏 (9) 東京向夏 (10)
荷を東京駅へ預けてから、千代田図書館へ行き、企画展示「『散歩の達人』とともに振り返る千代田の街の20年」を観る。雑誌も変われば、街も変わる。人も変わるものだろうか? さくら通りやすずらん通りを散策、日曜は定休の店ばかりでさっさと進める。「三幸園」は社員旅行で全店休業、じゃ昼飯は「小諸そば 神保町店」の揚げ茄子おろしそばで。
 
「日本コーヒー文化学会 第23回総会&記念行事」 (学士会館)
 東京向夏 (11)
総会議事の前、先5月3日に逝った柄沢和雄氏(JCS顧問)を偲んで全員で黙祷。昨年の総会では畔柳潤氏(JCS顧問)を偲んだ。来年は誰に黙祷するのだろう? 議事の後、記念行事の講演一つ目は、「岡倉天心珈琲物語 (珈琲で街興し その実践の軌道)」(鈴木誉志男)。茨城県のコーヒー屋として五浦を拠点とした岡倉覚三を使ってコーヒーを売り出そうという、聞くに堪えない最低の話。史実から程遠い牽強付会の説を述べる鈴木誉志男氏(サザコーヒー会長)は、「言ったもの勝ち」とか「非常に怪しい話」とか自嘲で誤魔化すが、その悪辣は万死に値する。
 東京向夏 (12)
鈴木さんが発表した(何と後で土産に配られた)「岡倉天心が飲んだ?!アメリカンコーヒー ARBUCKLES’ ARIOSA COFFEE」に唖然とする。岡倉覚三が滞在したボストンを取り上げておいて、ピッツバーグに創業したアーバックル社を持ち出す。‘アーバックルのリオコーヒー’を示すアリオサを名乗っておいて、コロンビアまで配合する。無知にも無恥にも程がある。最も許し難いのは、第二次世界大戦時のブラジルのイタリア派兵を「アメリカにコーヒーを大量に買ってもらい続けた恩返し」などと吐いた妄言。派兵はF・ルーズベルトの善隣政策に乗ったジェジェ(ヴァルガス)のエスタード・ノーヴォ体制の一環である。当時の「ゴムの兵隊」のような苦渋を述べずに《恩返し》などとは、愚鈍の極み。この無恥の商材開発を撤回しない限り、鈴木さんにはヴァルガスの最期と同じ自死を求めたい。
 東京向夏 (13)
講演の二つ目は、「コーヒー社会学の現代的課題」(中根光敏)。産地巡りにカフェ巡りにヨシタケコーヒーに社会学と盛り沢山の話。「リントンと称してタケンゴンから出ているコーヒーがある」とか「ルアックは一匹7千円で取引きされている」とかの情報提供は中根さんらしくて好い。ガヨのワイン・コピも興味深い。他方で、『ビジュアル スペシャルティコーヒー大事典』の著者ジェームズ・ホフマンがコピ・ルアックを叩いていることに中根さんは怒っていたが、その反駁に私は得心しない。中根さんのコーヒーへの思い入れに共感するところもあるが、その嗜好や捉える切り口は私の性分に合わないと思いながら聴いた。
 東京向夏 (14)
分科会は毎度の焙煎・抽出委員会へ。「焙煎と香り ──科学的知見をどのように焙煎技術に活かすか」…つまりは、山内秀文委員長による前回の分科会催事の振り返り。コーヒー生豆の多様化・細分化に沿った‘焙煎技術’を考えることは楽ではないと思いながら聴いた。散会。
 
 東京向夏 (15)
青山の「Gentle Belief」(ジェントル・ビリーフ)を山内秀文氏と訪ねるも休みだったので、紀尾井町の「AUX BACCHANALES」(オーバカナル)へ。仔羊と白ワインとエスプレッソを飲み食いしてから、東京駅で別れる。ここまで山内さんと喋りっ放し、私はこの時間が好きだ。帰宅して、カフェ・バッハのリッチショコラとアナナスにコロンビア・マタレドンダを合わせ食べ飲みながら、東京でコーヒーを巡り遊んだ向夏の二日間を想い返す。人は生き人は死にコーヒーは変わりゆくが、私はコーヒーが好きだ。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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