東京向夏 前篇

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2016 [2016年06月07日 01時00分]
第70回国際連合総会で採択された‘Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development’(我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ/2015年9月25日)は、《我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している》と述べている。私は、コーヒーの世界を卑俗的かつ凶刃な道筋で捉えるために、通底に有用な放胆かつ変則的な手段をとることを決意して、「環境の日」「世界環境デー」を翌日に控えた向夏に東京でコーヒーを想う。
 
【SusCAJ催事当日】 2016年6月4日
 
 東京向夏 (1)
早朝の隅田公園で、紫陽花と鳩と川とスカイツリーを眺めながら、ネルドリップしたコーヒーを喫する。
 
 東京向夏 (2)
「café Bach」(カフェ・バッハ)へ一番客で。コロンビア・マタレドンダ、しっかり焼いても爽やかなまま味幅が広くて面白いコーヒーだ。お供はチョコレートケーキ。ママ(田口文子氏)から『わたしが生きてきた世の中』絡みの後日談などを聴く。隣の宿「ほていや」へ荷を預けに行くと、珈琲屋バッハのコーヒーを愛したお身内の不帰を知る。トレセンに寄って中川文彦氏と談議。路地にも玉姫祭や天王祭の賑わい、人は生き人は死に街は変わりゆくが、私はこの街が好きだ。
 
 東京向夏 (3) 東京向夏 (4)
本郷へ行き、菊坂や森川の界隈を散策、随分と店が減って山手の情景が薄くなった。「萬盛庵」が閉店して9年余、じゃ昼の蕎麦は「あさひや」の天ぜいろで。濃くて甘辛い汁は変わらず、庶民の蕎麦は卑俗に正しい、それがウマい。
 
日本サステイナブルコーヒー協会 会員限定イベント
「スペシャルティコーヒーはサステイナブルか?」 (東京大学東洋文化研究所)
 東京向夏 (5)
池本幸生氏による進行。まずは、大槻佑二(THE LOCAL COFFEE STAND)・山本酉(Single Origin Roasters)・滑川裕大(TORIBA COFFEE)の3氏による「私とコーヒーの関わり」の発表。大槻佑二氏が企画した「TOKYO COFFEE FESTIVAL」は、動員も飲み比べチケット数も過去3回伸び続けている、と。2001年のコーヒー危機を存知ない3氏の《コーヒーの関わり》について、催事の後段で川島良彰氏(ホセ)は「サステイナブルコーヒーはサードウェイブ系の人たちの方が受け入れ易いかも、なぜかというと何も知らないから」と評していた。私は、知らないにも程があると思いながら聴いた。
 東京向夏 (6)
次は、伊藤亮太氏の発表「スペシャルティコーヒーとサステイナブルコーヒー」。若手3氏のスペ推し一辺倒に対して釣り合うように意図したであろうサス解読、それも時に手厳しい客観的な切り口、お見事! 「いつまでの未来を指してサステイナブルか?」や「上流(生産)側だけでサステイナブルか?」や「環境に優しい農業の要件増加はかえって原生の生態系を脅かさないか?」などの疑義を投げかけた発表、イイね! 他方で、「スペは結果(アウトプット)に基づく区分、サスは過程(プロセス)に基づく区分」という論は得心できない。「スペでもサスでも現物では区分できず、方法やベクトルを追認した運動である」という私の認識とは異なる。 換金作物の単位面積当たりの収益比較に、コカやカートやケシを並べていないことも私は不満。 伊藤さんは「環境保全のためには人類がいなくなればいい、では解決されない」とも「コーヒーにできることは限られるが、一隅を照らす精神は忘れられない」とも述べた。私は「人類やコーヒーが消滅する選択を含まない論は欺瞞も甚だしい」とも「蓋然性の薄いコーヒー賛美は、解決の具体性も薄い」とも反意を抱いた。
 東京向夏 (7)
大槻・山本・滑川・伊藤・川島の5氏によるパネルディスカッション、その後ホセが退席して質疑応答。この時限では、レインフォレスト・アライアンス日本市場代表の堀内千恵子氏による「銘葉緑茶協会」が農産物として日本初となるRA認証を取得した舞台裏の話が面白かったが、コーヒー関連では不得要領な論が多かった。例えば、ホセがアンフェアと指摘しているオークションコーヒーのシステムを問題にしないで、スペのコーヒーの値段が高い理由をお客様に説き続けたいなどという他のパネラーの話は児戯に等しい。《スペシャルティコーヒーはサステイナブルか?》という問いに、催事を通じて答えが出なかったことは予想通り。見たいものは見えると主張するが都合が悪いことは見えないし言わない…スペにしろサスにしろ、コーヒー自体よりも論ずる人間の側に課題が大きいこと、これを再認できて好い機会だった。
 
御徒町へ行き、「日本海酒場 魚作 上野店」にて妹夫婦と晩餐、酒少なく食らって談話。その後、山谷の宿へ独り戻りながら、私自身のコーヒー追究のサスティナビリティ(持続可能性)を想う。人は生き人は死にコーヒーは変わりゆくが、私はコーヒーが好きだ。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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