大穴登場

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2016年04月20日 01時30分]
「アベンジャーズ」のマーベル・シネマティック・ユニバースはディズニーが支配しているのでロクでもないが、といって「ジャスティス・リーグ」のDCエクステンディッド・ユニバースの方がマシとも思えない。だから、『マン・オブ・スティール』も観なかった…けれども、その続編にあの唯一無二の‘大穴’スーパーヒロインが登場するのであれば観てみよう。
 大穴登場 (2) 大穴登場 (1)
 
『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(Batman v Superman: Dawn of Justice) 観賞後記
 
 《まあ、色々と考察してみましたが、スーパーマンの超能力のなかで最もすごい
  と思いますのは、やはりあの「正義感」でしょう。その気になれば世界征服も
  不可能ではないのに──ま、世界征服をやろうというのも一種の正義感からで
  しょうけれども──そんな気がさらさらない。まあこの辺がマッド・サイエンティス
  トにとっては不思議なわけでございます。アメリカ的な正義感というのはスー
  パーマンが代表しておるのかもしれません。》 (堀晃 『マッド・サイエンス入門』
  第9章「おれはスーパーマン」/新潮社:刊 1986年)
 大穴登場 (3)
 
 《繰り返し申し上げているとおり、アメコミの「スーパーヒーロー」のほとんどはア
  メリカの「セルフイメージ」である。(略)アメコミの実写映画化が近年非常に多
  いが、それはたぶんアメリカ人の「アメリカって、ほんとうは何なのだろうか?
  何のためにこの世に存在しているのだろうか?」というおのれの存在理由に
  ついての懐疑が亢進していることと関係があると私は思う。(略)『スーパーマ
  ン』も『バットマン』も『スパイダーマン』も、高い理想を掲げ、日々こつこつと世
  界の平和に寄与しているのだが、周囲の人間たちはその努力を知らず、彼
  に少しも感謝しようとしない。それどころか、「おまえがそのスーパーパワーを
  発揮することで、世界の秩序はかえって乱されているのだ。世界はおまえな
  んか必要としていない」と罵倒を投げつけられるのである。その無理解に傷
  つき、いっときは「世界を救う仕事」なんかもうやめちゃおうかな、と思うのだ
  が、彼を信じる少数の理解者たちのために、ヒーローはまた立ち上げって、
  世界を救う仕事に向かう……という話型を私たちは何度見せつけられたであ
  ろう。》 (内田樹 『街場のマンガ論』 「アメコミに見るアメリカのセルフイメージ」
  /小学館:刊 2010年)
 
 大穴登場 (4)
まあ、色々と推察してみたが、映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のなかで最もひどいと思うのは、やはりあの「マーサで和解」だろう。光の神であるクリプトンの青い息子クラーク・ケント(ヘンリー・カヴィル:演)、闇の人であるゴッサムの黒い蝙蝠ブルース・ウェイン(ベン・アフレック:演)、その気になればどちらかをサイドキックにした風通しの良い話も不可能ではないのに──ま、マーベルとDC合わせて公開済みのシェアード・ワールド作品の計14本のうちで最長の152分という長尺なので──そんな気配はさらさらない。オッサン2人分の身の上話と敵愾心をだらだらと並べた挙句に、「え? 母ちゃんの名が同じマーサ? じゃ仲間じゃん」という実にくだらない理由で和解をする(?)映画だった。これは、ひどい。レックス・ルーサー(ジェシー・アイゼンバーグ:演)に対してではなくて、この作品自体について「あんたはサイコ(精神異常者)だ」と言ってやりたくなる。
 
 大穴登場 (5)
つまり、ミソジニー(女性嫌悪)と表裏一体であるエディプスコンプレックスを抱えたアダルトチルドレンが《世界を救う仕事》に挑むという『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』は、現在の《アメリカの「セルフイメージ」》そのものである。そして、マーサ・ウェイン(ローレン・コーハン:演)やマーサ・ケント(ダイアン・レイン:演)やロイス・レイン(エイミー・アダムス:演)を超える国家的‘母性’の‘大穴’スーパーヒロインが登場する。ワンダーウーマンことダイアナ・プリンス(ガル・ガドット:演)こそが『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の真の主役であり見どころである。《アメリカ的な正義感》を代表している、いや、代表してほしい存在としてワンダーウーマンが登場した時のみ、映画は明るく輝いて、その力と美が復活していた。アメコミ映画に見るアメリカのセルフイメージは、これでいいのか? アメリカは、これでいいのか? 私は、「ワンダーウーマン」が観られるならば、それでいい。
 
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コメント

No title
t.matsuura URL [2016年04月21日 22時09分]

個々のキャラクターは結構好きでしたが、
映画として弱かったですね。152分は長かったです。
(ヘイトフル・エイトは167分であっという間でしたけど)
レックス・ルーサーがジョーカーみたいになっていたり。
でも、スーサイド・スクワッドは見に行こうかなとも
思っています。

to:t.matsuuraさん
帰山人 URL [2016年04月22日 14時16分]

余裕と滑稽が足りない映画は疲れるよな。
「スーサイド・スクワッド」が公開される頃には、現実世界でも大統領選の「シビル・ウォー」がほぼ決着しているだろうから、そのUSAという国家の自殺願望の度合を計ってから観る観ないを決めるよ。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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