珈琲ぐるり

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2016 [2016年03月19日 01時00分]
西加奈子が著した『ごはんぐるり』は、NHKテレビテキストの「きょうの料理」と「きょうの料理ビギナーズ」に連載されたエッセイを加筆し修正したもので、単行本は2013年4月にNHK出版から出ていたが、さらに2016年2月に文春文庫(文藝春秋)になったので、読んでみた。『ごはんぐるり』から始まる「珈琲ぐるり」だ。
 
 珈琲ぐるり (1)
西加奈子の「珈琲儀式」はこう始まる。《朝起きて、最初にすることは、珈琲を淹れることだ。顔を洗うより、歯を磨くより先。》…オレも同じだ。 だが、次からズレる。《珈琲を淹れることは、習慣というよりはむしろ儀式のようになっていて、これをしないとなんとなく落ち着かない。(略)例えば珈琲を飲む時間もないままに外出、などということがあると、その日は一日しまらない、うまくゆかない。(略)体調が悪い日は珈琲なんて本当は飲みたくない。》…オレのとは違うなぁ。オレは《珈琲を飲む時間もないままに外出》などしない。コーヒーを飲むためには遅刻も欠席もする。試験も危篤も関係ない。オレは《体調が悪い日》でもコーヒーは飲みたいし必ず飲む。禁忌も入院も関係ない。 また、さらにズレる。《だが、私は珈琲をブラックで飲むことはしない。(略)私は、珈琲の2倍の牛乳を温め、それに混ぜて飲む。いわゆる、カフェオレである。》…オレのとは違うなぁ。オレはオレで飲むこともあるが、ほとんどが《ブラックで飲む》し、一日で最初の一杯は必ず濃厚で少量のブラックだ。
 
西加奈子は言う。《珈琲メーカー、家に渋いヤツがあるんよ。》(「舐める春」)、《ただの、何の変哲もない、お洒落でもない、普通の、あーもう、一度見ただけでは覚えていられないようなものである。ここまで書いてしまうと、コーヒーメーカーが「失礼やがな!」と怒り出しそうだが、(略)…何の不平も不満も言わず、黙々と珈琲を落とし続ける彼(彼女)の姿は、もはや職人の域である。「珈琲入れるしか、ようしませんのや」という真摯な意思をむんむんにたたえているのだ。》(「珈琲儀式」)と。 そういえば《黙々と珈琲を落とし続ける》大坊勝次も、《コーヒーを作ることだけが、 何かを伝えるにせよ私に出来る唯一のことかもしれません。》(「大坊珈琲店のマニュアル」/『大坊珈琲店』 誠文堂新光社:刊)と言っていたので、《珈琲入れるしか、ようしませんのや》という西加奈子の家のコーヒーメーカーと大坊勝次は大差ないのかもしれない…「失礼やがな!」。
 
 珈琲ぐるり (2)
『Discover Japan(ディスカバー・ジャパン) 特別編集 ベスト・オブ・コーヒー』(枻〈えい〉出版社)は、月刊誌『Discover Japan(ディスカバー・ジャパン)』の2013年12月号(Vol.31)「特集 コーヒーとお茶」と、2015年2月号(Vol.40)「ローカルカフェはいま、旅の目的地だ!」と、2015年11月号(Vol.49)「特集 あらためてコーヒーとカフェ。」を、加筆も修正もなく1冊に寄せ集められて2016年2月に発刊された。つまり、《枻(えい)出版社のコーヒームックは常に自ら焼き直した陳腐な仕立て一本槍である》ので、私は買わないし読む価値もない。『ベスト・オブ・コーヒー』は、中身がどうであれ存在が貧相で愚劣である。悲しき「珈琲ぐるり」だ。
 
 珈琲ぐるり (3)
廣瀬幸雄と後藤裕と井上久尚が執筆した『問題形式で学べる コーヒー学の基礎』(全国大学連合コーヒー学特別公開講座編:編)は、『なるほどコーヒー学 コーヒーを楽しむ最新知識のQ&A』(金沢大学 コーヒー学研究会:編/2005年)と『コーヒー学検定《上級》 金沢大学編』(圓尾修三・広瀬幸雄・後藤裕:著/2013年)とに続いて、金沢大学の‘コーヒー学’講義に絡んで2015年12月に旭屋出版から出された3冊目の本である。「アイリッシュ・コーヒーには、何が入っているでしょうか」という問いに「スコッチ」を正解とする(?)など相変わらず噴飯ものの問答だらけであり、執筆者や出版社に学んだ形跡が全くみえない。『問題形式で学べる コーヒー学の基礎』は、中身も存在も無恥で愚鈍である。悪しき「珈琲ぐるり」だ。 
 
 珈琲ぐるり (4)
「コーヒー本をぐるりと見廻ってみてもロクなものがない」と嘆息しながら、大坊勝次がディスカバリー焙煎機で焼いたエチオピア・イルガチェフェを濃く淹れて、関口一郎が考案したドゥミタッス・カップで喫する、旨い「珈琲ぐるり」だ。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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