嗟来のコーヒー

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2016 [2016年02月12日 01時00分]
雑誌『サライ』(小学館:刊)を1989年の創刊号から欠かさず買って読んでいた。丁寧な取材と練った編集が誌面から匂うような好い雑誌だったが、数年後には情報の使い回しと付け焼刃が目立ち始めて質が落ちて、十年ほどで読むに堪えなくなってからは、数年に1冊程度しか買っていない。だいたいガキやババアじゃあるまいし、頻繁に付録でジジイを釣るな、ってぇの。嗟来(さらい)の食(し)は受けず、だ。その雑誌『サライ』の2016年3月号がコーヒーと漫画の特集で、「新寳島」と「ジャングル大帝」の漫画が付録?…さ、嗟来の食は受け…買うぞ読むぞ。
 嗟来の珈琲 (1) 嗟来の珈琲 (2)
 
『サライ』の特集「自分で挽いて、自分で淹れる、最高の一杯 「家飲み珈琲」を極める」。まずは、大坊勝次氏×いしかわじゅん氏の対談…って、何でいしかわじゅん氏なの? いや、大坊さんの対談相手がいしかわじゅん氏であること自体に文句はない。そこは、コーヒー界の‘リトル・メジャー’対マンガ界の‘ビッグ・マイナー’だから、面白いし。だが、大特集の漫画のページにいしかわじゅん氏が起用されていないという不釣り合いが異様で笑える。いしかわじゅん氏には、さいとう・たかを氏のインタビュアーに回ってもらって、ぜひ彼の息の根を止めてきてほしかったのに…。私が大坊さん家へ次回行った時には、自分でコーヒーを淹れて、いしかわじゅん氏から大坊さんへ贈られた本『今夜、珈琲を淹れて漫画を読む』を借りて読もう。
 
 嗟来の珈琲 (3)
次は、「なぜ今「手淹れ」なのか」を解く嶋中労氏の文。《舶来の「第三の波」による再評価、淵源は日本の喫茶店にあった》だと…上手いこと言うなぁ。労師はサードウェイブコーヒーの騒ぎについて(私と同様に)バカバカしいと思っているクセに、今般の寄稿では《酸いも甘いも噛みわけた》物言いで説いている。察するところ、労師の家の冷凍庫には《カップに注ぐとぺしゃんとへこんでしまう》程度の《全国各地から買い求めた深煎りコーヒーがぎっしり詰まっている》ようなので、また気が向いた時にでも私が焼いた豆を送って差し上げよう。嗟来のコーヒーを送ろう、というワケだ。
 
 嗟来の珈琲 (4) 嗟来の珈琲 (5)
そこから先の生豆や焙煎や粉砕や抽出や道具の話は、どうでもよい感じでつまらない。例えば、約10年前の『サライ』2005年12月1日号のコーヒー特集「人生の句読点に欠かせない一杯 珈琲「基本のき」読本」と比べても、どうってことはない。この約10年前の特集では、泉谷希光氏が日本コーヒー文化学会会長と、田口護氏が日本コーヒー文化学会焙煎抽出委員長と、楠正暢氏がUCCコーヒー博物館副館長と紹介されているが、その後に泉谷さんは会長を降りて故人となったし、田口さんは日本スペシャルティコーヒー協会会長を務めて‘レジェンド’とか呼ばれているし、楠さんは博物館の館長を務めて退任したし…当に十年一昔。2005年12月1日号の『サライ』には、コーヒー特集とは別に、落合正勝氏による素晴らしいコーヒー話が載せられている。
 
 《おいしい珈琲ができない原因はふたつあると、私は思っている。ひとつは、
  私の珈琲の淹れ方が習慣化し、工夫がないことだ。人はある行為を長年
  続けていると、無意識にそういうものだと勝手に思い込み、それ以上のも
  のを求めなくなる。(略)もうひとつは、珈琲という嗜好品の奥深さである。
  (略)コクや酸味、苦み、まろやかさという問題以前に、品質や収穫時期が
  まるで異なるものを、同じ方法や工程で淹れたとしても、その特徴が出な
  いのは当然といえば当然のような気もする。》
  (落合正勝 「銀座の名店で覚えた味」/連載「もちものが語る」 第44回
   珈琲その1/『サライ』2005年12月1日号)
 
この2005年における落合正勝氏の見識こそが《最高の一杯 「家飲み珈琲」を極める》姿勢の手本というべきものだが、氏はこの翌年8月7日に死んだ。特集や連載でコーヒーを語る人を取り上げておかないと、《人生の句読点に欠かせない一杯》を飲む前に人は変わったり滅んだりするのである。時は、人拐い(さらい)である。『サライ』の2005年の特集に登場していたパナソニックのコーヒーメーカーはNC-A55で、2016年の今般の特集ではNC-A56である。そういう意味では、また10年後くらいの『サライ』でコーヒー特集が組まれてもよい…復習(さらい)ということで。果たして、パナソニックのコーヒーメーカーはNC-A57になっているだろうか? いや、まだ『サライ』は刊行されているのか? 私の興味はその程度だ。嗟来のコーヒーは受けず。
 
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コメント

No title
しまなかろう URL [2016年02月12日 08時48分]

帰山人さま
参ったな……あれってねえ、何度も書き直したのよ(笑)。編集部の意向に添うようにね。ボクは焙煎せずしてコーヒー通もヘチマもない、という原稿を書いたんだけど、焙煎については次の機会にということで、今回は「抽出」だけに絞ってくださいと言われ……きれいにまとめすぎたきらいはあるな。それと多少のおべっかも(笑)。帰山人閣下が読んでいるかと思うと、怖くて書けないよ。どうかお手柔らかにね。

to:しまなかろうさん
帰山人 URL [2016年02月12日 17時57分]

労師、お疲れ様でした。まぁ、所詮ジジイ雑誌の「家飲み珈琲」特集ですからね、「焼かねばただの湯通し屋」論をぶっても仕方がないでしょ、そりゃ(笑)。イイんですよ、これで労師のバンド「蛮爺's」のファンが一人でも増えればなぁ、くらいにしか私ゃ思っていませんから…今後も気楽に書きなぐってくだされ。

ども
庭ガール URL [2016年02月12日 21時07分] [編集]

祝 日本珈琲狂会創設6周年そらから
B.D謹んでお祝い申し上げます。
>だいたいガキやババアじゃあるまいし、頻繁に付録でジジイを釣るな
すっごく笑えた!どんな付録か興味津々。これから検索してみます。

to:庭ガールさん
帰山人 URL [2016年02月12日 22時47分]

ども。CDやDVDやカレンダーなんか当たり前としてショルダーバッグとか手帳とか万年筆とか筆ペンとか双六とか…付録で釣るようになったら雑誌もオシマイですよ。もう廃刊にするべきです。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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