こねくり回すな!

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2016年02月10日 01時30分]
アンディ・ヘイラーパーム・パイタヤワットスティーヴ・プロトニキアイステ・ミセヴィチューテケイティ・ケイコ・タム…《最高のレストランを求めて地球を駆け巡る彼らは“フーディーズ”と呼ばれ、SNSを駆使して情報を発信している。しかも、この5人は現在、美食家の最高峰と称えられ、カリスマシェフからの信頼も厚く、どんな予約困難なレストランでも、たちどころに席を確保するのだ。なぜ彼らはそんなにも、〈食べる〉ことに情熱をかけるのか? 5人の背景と素顔に迫る!》(『99分,世界美味めぐり』Webサイト イントロダクション)…ふ~ん。どこの店が《最高のレストラン》だろうが知ったこっちゃないし、誰が《美食家の最高峰》だろうがなんぼのもんじゃい。なぜ‘フーディーズ’はそんなにも、〈評する〉ことに情熱をかけるのか? そういう映画だろ?
 こねくり回すな! (1) こねくり回すな! (2)
 
『99分,世界美味めぐり』(Foodies: The Culinary Jetset) 観賞後記
 
 《今日では、旅行先で楽しい食事を出してもらえそうな場所を教えてくれる美
  食案内書がかなり多くあって、意のままに利用することができる。このよう
  な案内書の起源は全く新しく、自動車旅行の発達につれて生まれ出たも
  のと考えられるが、事実はそうではなかった。》 (「昔の観光客と美食家」)
 《風景と美食を楽しむ観光旅行をしながら、フランス全土とイタリアを遍歴し
  たシャルル・コアポー・ダスーシーは、最初の「食味旅行家」(ガストロノマー
  ド)の一人であったに相違ない。ちなみにこの「食味旅行家」という言葉は
  わたしの造語である。ダスーシーはたいてい徒歩旅行をした。そして、心
  のおもむくままに立ち止まり、景色を眺め、人々や風俗を観察し、豊富な
  料理の並んだ食卓について、長い旅の疲れを癒すのであった。ダスーシー
  の一生は奇妙な小説のようである。一七世紀の初め、一六〇四年に生ま
  れ、七十数歳で死んだ。》 (「最初の「食味旅行家」」)
  (キュルノンスキー/ガストン・ドリース:共著 『美食の歓び』 大木吉甫:訳
   柴田書店:刊/“Gaités et Curiosités Gastronomiques” 1933年)
 
キュルノンスキーことモーリス・エドモン・サイヤン(1872-1956)が言う通りに「食味旅行家」(ガストロノマード)と美食案内書は、ミシュランガイドが発行される以前から存在していた。そして、キュルノンスキー自身も「食味旅行家」であったし、例えば、辻静雄(1933-1993)やグラハム・カー(1934-)やジェフリー・スタインガーテン(1942-)や山本益博(1948-)やアンソニー・ボーデイン(1956-)なども「食味旅行家」であろう、と私は思う。そういう流れでは、映画『99分,世界美味めぐり』に登場する5人の‘フーディーズ’についても「食味旅行家」と呼ぶべきなのかもしれないが…私が映画を観た限りでは連中をそこに列したくない。連中の素顔が、《SNSを駆使して情報を発信》することに《情熱をかける》、その捻じ曲がった承認欲求を自制できない精神異常者だからである。
 こねくり回すな! (3) こねくり回すな! (4) こねくり回すな! (5)
映画の中では飢餓や貧困の問題やWeb情報の影響力の問題にも触れているが、これらの問題に主役である5人の美食(?)ブロガーたち‘フーディーズ’は厚顔無恥の反応をみせる。実にえげつない。連中の食いっぷりがあまりにも醜怪なので、そして‘フーディーズ’の評言に面白味がないので、作品内に登場する料理に全く食指が動かない。何を意図して『99分,世界美味めぐり』が制作されたのか私には捉えられなかったが、映画を作った者にも言ってやりたい…世界の美味を、こねくり回すな! この‘食’のドキュメンタリー映画は史上最悪だ!
 こねくり回すな! (6) こねくり回すな! (7) こねくり回すな! (8)
 
 《おぼしき事言はぬは腹ふくるるわざなれば、筆にまかせつつ、あぢきなき
  すさびにて、かつ破り捨つべきものなれば、人の見るべきにもあらず。》
  (卜部兼好 『徒然草』 第十九段)
 
自らの食い意地の病理を説くこともできない無能で破廉恥な‘フーディーズ’を描いた映画は、何も食べていないのに観ながら胸焼けがする「99分、世界不味めぐり」だった。もしも救いがあるとすれば、映画界も料理界も踏み込みきれない中途半端な実情を示した『99分,世界美味めぐり』にピッタリの料理、香港「ボー・イノベーション」のアルヴィン・ランが下卑た口調で説く‘Sex on the Beach’…アレだけだ。 
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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