ワインへの憧憬

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:art・芸術・美術 / カテゴリ:観の記:美面 [2015年11月18日 23時30分]
テロワールとかフレイバーホイールとかソムリエとか、コーヒー界のワイン界に対する劣等感と憧憬は、相変わらず凄まじい。コーヒー界の‘From Seed to Cup’に倣った‘Bean to Bar’のチョコレート界にまで、既に3年前のカハク(国立科学博物館)の特別展で先を越されていたが、そのカハクで今般はワインに関する特別展が催されている…コーヒー界には同慶なのか? 憧憬(どうけい)なのか? 観よう!
 
「ワイン展 ─ぶどうから生まれた奇跡─」 (国立科学博物館:特別展)
 
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コーヒー集会に参加した翌日の2015年11月15日、黄葉の色づきがイマイチの雨降る上野恩賜公園へ。ワイン漫画『神の雫』とのコラボレーションを謳っている「ワイン展」だが、音声ガイドはテニプリ跡部景吾の声優、じゃあ「俺様の美酒に酔いな」とでも言いな、と呟く。「Zone1 ワイナリーに行ってみよう」を観る。《最近ではテロワールの条件に「つくり手」を入れるべきとの考えもあります》…テロワールをフィロキセラの同義語とするような愚考であろう。マット・クレイマー曰く、《ワイン界では人間は作曲家という役どころにはなくて、たかだか聴衆であるにすぎない》(『ワインがわかる』)。
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「Château Kahaku」(シャトー・カハク)はダサいが、タッチパネルで選果や足踏みで破砕や手押しでピジャージュなど、疑似体験の装置はなかなかの工夫で面白い。「Zone2 ワインの歴史」を観る。誕生・高級化・広がり…という整理は良いが、それがダサいオヤジ学者の解説だけで、『神の雫』コラボの要素は皆無なのが残念。
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「Zone3 ワインをもっと楽しむ」を観る。香り当てクイズのフルーツ香に混ぜた樽熟成香って、もろコーヒーじゃん!(笑)「バルト海の沈没船から引き揚げられたシャンパーニュ」話の展示は見事。第二会場での「ワインの現在」は、生産や栽培に関する説明が粗くて精度に欠けるところもあるが、ビオワインだのヴァンナチュールだのという軽薄な流行を取り上げない姿勢も好い。総じて展示する切り口も見せ方も(「チョコレート展」と同様に)カハク臭さが良く出ていた。
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カハク館内で企画展「世界のヒョウタン展 ─人類の原器─」(日本館)も観る。エチオピアの物入れやミルク入れにしたヒョウタンが展示されているのでひょっとして…やはりヒョウタン製のコーヒー容器もあった!
 
 《今日のワイン観は、いよいよ機械論的な色彩を濃くしている。ワインはまるでラ
  ンナーのように計測・判定されたすえ、点数をつけられる。Aワインは八九点だ
  がBワインは九二点の格にあるなどという言い方が流行しているばかりか、も
  てはやされもする。(略)厳正な等級づけがすむまで長らく控えさせておいて、し
  かもそれが当然とでもいわんばかりだ。味覚や趣味の領域ではなにごとも相対
  的であるから、比較評価が可能──といった現代人の考え方の癖がここに出
  ている。そのようなやり方は、ワインの理解とはほど遠いものであって、ただの
  順位づけに終わってしまう。我われの選択の対象にはいるワインの数が多い
  のは確かだが、個々のワインについて、いかにも正確さを装った評点をつける
  のは、いいかげん止めにしたいもの。良いワインとはどういうものか、というもっ
  と基本的なことがらを理解しようではないか。 (略)ところで、なぜワインは人を
  つかまえて離さないのだろう。(略)ワインはおとなしく点数づけに甘んじている
  が、実際は「瓶詰めされた疑問のかたまり」にひとしい。》
  (『ワインがわかる』 マット・クレイマー:著/塚原正章・阿部秀司:訳/白水社:
   刊 1994年)
 
今日のコーヒー界はワイン界に憧憬(しょうけい)するあまり、悪しき象形主義までも承継してしまった。そうした状況において、今般の「ワイン展」は、表現や説明にまだ工夫の余地はあるものの、《良いワインとはどういうものか、というもっと基本的なことがらを理解しよう》とするに足る提示であった。それは、私に「良いコーヒーとはどういうものか」をも考えさせてくれる。カハクの「ワイン展」には、フィネス(finesse)を感じる…と言っては言い過ぎだろうか? そして、(もし将来に催されるとして)カハクの「コーヒー展」には、フィネスを感じるのだろうか?
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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