ワイルドだろぉ?

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2015年09月03日 23時30分]
なぜ「1600キロ」なのか?──シェリル・ストレイドは、1995年に全長2650マイル(≒4265km)のパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)のうち1100マイル(≒1770km)を踏破し、回顧録“Wild: From Lost to Found on the Pacific Crest Trail”(2012年)を著した。これを映画にした作品の邦題は、「1100マイル」ではダメなのか? ダメ! ロビン・デヴィッドソンは、1977年にオーストラリア西部の砂漠を1700マイル(≒2736km)踏破し、回顧録“Tracks: One Woman's Journey Across 1,700 Miles of Australian Outback”(1980年)を著した。これを映画にした作品の邦題は、300マイル(≒483km)もサバを読んで『奇跡の2000マイル』とされた。この「トラックス」の後で、「ワイルド」が「1100マイル」とか「1000マイル」とかでは、負けた感じで名付けづらいから、キロ(メートル)単位に換算して少しでも数字を大きく見せよう。だから『わたしに会うまでの1600キロ』? ならば「1700キロ」にすればよかったのに──ワイルドだろぉ?
 コンドルよりニワトリ (1) コンドルよりニワトリ (2)
 
『わたしに会うまでの1600キロ』(Wild) 観賞後記
 
映画の冒頭、トレイルを歩き始めて「どうしよう…間違いだったかも」と後悔するリース・ウィザースプーン。この撮影の半年前、リースは最低の日々を送っていた。2度目の夫が飲酒運転で逮捕されるのをかばって「私が誰だか知っているの?」と警官に詰め寄り、自らも治安紊乱罪で逮捕された。崖の上に座り込んで、「優等生イメージ」という痛む爪を引き剥がそうとするが、その拍子に脱いでいた靴が崖下に落ちてしまう。オスカー女優の「逮捕」という転落に悪態をついて、もう片方の靴も崖底へ投げ捨てるリース。撮影中は、昼飯を食べる暇もなく、風呂にも入れない。冷たい粥を食べることはベジタリアンなので苦にならないが、このままでは残りの人生も台無しだ。純真さがウリの自分を取り戻すために、一から出直すと決めたのだ。激しいセックスやヘロインに溺れる役柄に、催眠術師を雇ってまで挑んだリース・ウィザースプーン。果たして彼女が、パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)で見たものとは──ワイルドだろぉ?
 コンドルよりニワトリ (3) コンドルよりニワトリ (4)
 
私には「人生は驚きの連続」(ジェームズ・ミッチェナーとシェリル・ストレイド?)とも思えないし、「新しい靴をはけば 幼子も世界に恋をする」(フラナリー・オコナーとシェリル・ストレイド?)とも思えないし、「約束を果たすまで 眠れない」(ロバート・フロストとシェリル・ストレイド?)こともないし、「勇気が君を拒んだら その上を行け」(エミリー・ディキンソンとシェリル・ストレイド?)とも言われたくない。『わたしに会うまでの1600キロ』の真の主役は、小説家でもなければ詩人でもなければ女優でもない。パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)の風景そのものが主役である。この映画はココが、ココだけが、素晴らしい。トレイルは、「わたしに会うまでの──」などと自分探し(?)のために存在するワケじゃない。トレイルは、自暴自棄から更生するよりも、茫然自失で混乱するために存在する。映画では、「カタツムリよりも雀になりたい」とか「釘になるよりもハンマーになりたい」とか「道になるよりも森になりたい」とか歌われていたが、私がパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)を歩くとすれば、「コンドルは飛んでいく」よりも「ニワトリは飛んでいかない」を口ずさんで進みたい──ワイルドだろぉ?
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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