コーヒーゼリーちょうだい 制作篇

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2015 [2015年08月18日 01時00分]
『コーヒーゼリーの時間』(木村衣有子:著/産業編集センター:刊)は、読んでいる間にもコーヒーゼリーを無性に食べたくなる、絶品のコーヒー本である。コーヒーゼリーちょうだい
 コーヒーゼリーちょうだい (4)
 
 《紳士は長いステッキを持ち、威風堂々と店にやってきます。 「コーヒーゼリー、
  ちょうだい」 絹子部長がいつもこの老紳士を「セイさん、セイさん」と呼んでい
  ました。当時評判の東洋一の料理店、芝の“留園”の会長さんなのです。(略)
  そしてすかさず「マカオで、コーヒーゼリーとモカソフトの店をやらない?」と言っ
  て、小さめな思慮深い瞳で、じーっと僕の反応を窺うのです。(略)思ってもみ
  ないような、ワクワクする話です。そして、例の調子で、「コーヒーゼリー、ちょ
  うだい」と言います。(略)本当にコーヒーゼリーが大好きで、ミカドをおおいに
  利用してくれます。》 (井上紀明 『軽井沢ミカド珈琲物語 ─エピソードはアロ
  マがいっぱい─』 文芸社:刊 2003年)
 
 《「コーヒーゼリー」ではなく「ゼリーコーヒー」。(略)高瀬川に面した『喫茶ソワレ』
  で、私は丸3年、ウェイトレスをしていた。ゼリーが『ソワレ』の名物だった。お客
  さんに「コーヒーゼリーを」と注文されると「ゼリーコーヒーですね」とかたくなに
  言い直していたが、なぜそんな名かというと、他の「ゼリーポンチ」や「ゼリーヨー
  グルト」などのメニューに合わせてのことかと察される。》 (木村衣有子 「ゼリー
  コーヒー 『喫茶ソワレ』の思い出」/『コーヒーゼリーの時間』p.167)
 
妄執…《本当にコーヒーゼリーが大好き》だった盛毓度氏が「喫茶ソワレ」を訪れて、「コーヒーゼリー、ちょうだい」と言う。《ウェイトレスをしていた》木村衣有子氏が「ゼリーコーヒーですね」と言い返す。さて、その後どうなっただろう?…もっとも、木村氏が「ソワレ」にいたのは、盛氏が死んで4年以上も後のことなので、これは架空の「コーヒーゼリーの時間」だ。
 
 《この人の淹れるコーヒーはこれまでに飲んだことがないくらいおいしいわ、と、
  きわめてシンプルな感想を抱いて開けたはずのコーヒーの扉の向こうは、ず
  いぶんと、ごちゃついているのだ。コーヒーに深入りしようという気持ちが挫け
  そうになるくらい、混沌としている。(略)扉を開けてみて、その差異への拘り
  が、おいしいコーヒーへと素直に向かっているのか、ただの妄執なのか、正
  直、私には判別できなくなっている。》 (木村衣有子 『コーヒーに憑かれた男
  たち』読書感想/『もの食う本』 筑摩書房:刊 2011年)
 
確かに、《コーヒーの扉の向こうは、ずいぶんと、ごちゃついている》し、《混沌としている》…これに対して、木村衣有子氏が開けたコーヒーゼリーの扉の向こうには、「あぁ、おいしいコーヒーゼリーへと《素直に向かっている》んだな」という、ある種の秩序による理会が感じられる。だから、『コーヒーゼリーの時間』を読んだ私もコーヒーゼリーを無性に食べたくなるのだろうか?…それを《ただの妄執》で終わらせるわけにはいかない。私が私自身に対して「コーヒーゼリー、ちょうだい」と言うのだから、私がコーヒーゼリーの扉を開くしかない。
 
 コーヒーゼリーちょうだい (5) コーヒーゼリーちょうだい (6) コーヒーゼリーちょうだい (7)
『コーヒーゼリーの時間』によれば、「ゼリーのイエ」のコーヒーゼリーは「さっぱりしていてこくがある」、「カフェ・バッハ」では「コーヒーゼリーは、スイカのような存在」であると。今般、私が作るコーヒーゼリーのコンセプトは、「コーヒーを食べる」。つまり、「コーヒーを味わうコーヒーゼリー」とも言える。「コーヒーだけではないが全てがコーヒー」というゼリーを作る。
 
 コーヒーゼリーちょうだい (8) コーヒーゼリーちょうだい (9)
パッと見は上が白くて下が黒い2層に見えるが、3層で重なっている。最下部は、無糖のコーヒーゼリー。グァテマラ・プンダ(乾式精製)とブラジル・サンタアナ(乾式精製)とコロンビア・メデリン(湿式精製)の3種等分配合の自家焙煎豆を氷出しで透過抽出して「ふるふる」食感のゼリーに。その上は、加糖のカスカラゼリー。エルサルバドルのサンタエレナ農園のブルボン亜種100%のカスカラ(干しコーヒーチェリー)を煎った後に水で煎じて(エチオピアでいう‘ホチャ’)「ぷるぷる」食感のゼリーに。最上部は、微糖の生クリームゼリー。最下層のゼリーに使用したものと同じコーヒー豆をコールドマセレーションしてコーヒーの香味をアンフュゼした中沢フレッシュクリーム36%を3分だてにホイップして「とろとろ」食感のゼリーに。「とろとろ」の白い生クリームゼリーから不思議にもコーヒーが早くも匂って、その下の「ぷるぷる」のゼリーからはコーヒーの味がしないけれども違う意味でコーヒーゼリー(?)なので甘酸っぱさが相性バッチリで、さらに下から「ふるふる」と食感は柔らかいのに味は強烈に濃い主役のコーヒーゼリー、という仕立て。「コーヒーを食べる」…ウマい!
 
 コーヒーゼリーちょうだい (10)
「コーヒーゼリーの隣にふさわしい飲みものはなんでしょう?」(pp.171-174)なる問答で、『コーヒーゼリーの時間』は締められている。回答者27人中、コーヒー派は12人、牛乳派が5人。他は、水、緑茶、紅茶、酒、不要など諸説あり。私も考える…カスカラティーだろう。
 
コーヒーゼリーに「食べるコーヒー」としての妙味を感じて叫ぶ…コーヒーゼリーちょうだい!
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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