浅い珈琲小話

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2015 [2015年08月01日 01時00分]
又吉氏は、直樹という名にもかかわらず直木三十五賞ではなくて芥川龍之介賞を受けた。
  浅い珈琲小話 (1)
 《「深い珈琲エッセイ」付き〈ブレンディ〉ボトルコーヒー BOOKボトルは、本年度
  の芥川賞作家である又吉直樹さんの書き下ろしエッセイ9作品(低糖/無糖
  の9作品は同一作品)を、パッケージにデザインしました。コク深い味わいの
  〈ブレンディ〉ボトルコーヒーを飲みながら、特別に書き下ろされた「深い珈琲
  エッセイ」を楽しむことができます。》
  (味の素ゼネラルフーヅWebサイト ニュースリリース 2015年7月17日)
  浅い珈琲小話 (2)
「深い珈琲エッセイ」は、 1.君と同じ味にはならない、 2.懐かしいコーヒーカップで出された、 3.飲み終えたら帰らなければならない、 4.珈琲をお代わりする時、物語は佳境に入る、 5.行けなくなった喫茶店、 6.珈琲だけが側にいた夕暮れ、 7.夏の蝶とアイスコーヒー、 8.これを飲んだら泣こう、 9.すべての風景に珈琲はいた、 の全9作品だ。私も珈琲エッセイでも書いて、又吉直樹氏と‘火花’を散らしたいところだが、私の筆力は塵芥(ちりあくた)といったところ。習作として、底が浅い珈琲小話でも記してみようと思う。
 
 
1. 味の素は君と同じにならない
「もはやインスタントではない」そんな捨て台詞を吐いて、先輩でありライバルでもある人は出ていってしまった。その人も僕もインスタントで商いをして、もう半世紀を超えている。最近の僕は、すっかりスティックに頼って歩んでいる。先輩が残していったコーヒーを淹れてみると、やっぱり味も香りもインスタントだ。先輩、また帰っておいで、いつでも、ふぅ。
 
2. 出されたコーヒーカップを手懐ける
運ばれてきた厚地のコーヒーカップには、とても熱いコーヒーが入っている。「ちんちんのコーヒー」と初めて聞いた時には赤面した私も、今では「ちんちこちんのください」と言える。砂糖を入れて、フレッシュを入れて、それでもまだ熱い。私は、ピーナッツの入った菓子をポリポリとかじりながら、コーヒーカップを手懐ける。私がコーヒーに手懐けられたかな?
 
3. 飲み終えなければ帰ってはならない
一番大きなサイズで黄桃の味がするカスタマイズを頼んでいたら、「え、コーヒー飲まないの?」と連れに言われた。カッとして「ショットとホイップとチョコチップを追加してください」と言ってしまった。受け取った飲料にシナモンを山盛りかけて、「私は美味しいコーヒーが好きなの」と連れを睨みつけた。本当は後悔。でも、 飲み終えなければ帰ってはならない。
 
4. 珈琲をお代わりする時、二杯目は半額になる
ウチの店は珈琲をお代わりする時、二杯目が半額になる。二人連れの一杯目、黒い女はゲイシャで、白い女はブレンドだった。二杯目は、黒い女がブレンドで、白い女がゲイシャだった。支払いの時、黒い女の方が1700円も高くついた。怒られるかも、と思ったが、「私がバカだった」とレジの前に崩れ落ちて泣かれてしまった。オレも泣きたくなった。
 
5. 行かなくなった喫茶店
世界で一番美味しいコーヒーが飲める喫茶店は、温暖化が進むにつれて移転を繰り返した。農園がその片隅で営業する店なので、コーヒー畑の適地を求めるにつれて、店の標高も上がっていった。何時間も余計にかかるようになっても飲みに通った。だが、酸素ボンベを使っても高所順応に五日はかかるようになって、ついに行かなくなった。残念だ。
 
6. 珈琲だけを蕎麦にした夕暮れ
寝坊した起き抜けに、なぜだかコーヒーだけの変わり蕎麦を食べたくなった。慌てて氷出しのコーヒーを仕掛けた。溜まっていくコーヒーの音を聞きながら、石臼で生豆を挽き続ける。ポチョン。ゴロゴロ。湯捏ねはしない。微粉に挽いた焙煎豆を混ぜてから、捏ねて延ばして切って茹でる。麵も汁もコーヒーだけの蕎麦をズルズルと啜った時、陽が沈んだ。
 
7. 夏の鰈とアイスコーヒー
僕が8歳の夏、叱っている父親を上目遣いで見ると「親を睨むと鰈になるぞ」と言われた。家を飛び出した僕は、海に突き出た岩の上に腰かけていた。黄昏時、僕を見つけた母親がアイスコーヒーを手渡してくれた。ゴクゴクと飲み干す僕に、「まだ鰈になっていないわね」と母親が笑った。今でも夏に鰈を見ると、僕はアイスコーヒーを飲みたくなる。涼感。
 
8. オレも飲んだら泣こう
ウチの店で珈琲をお代わりする時、一杯目を半額にした。二人連れの一杯目、黒い女はカフェ・オレで、白い女はゲイシャだ。二杯目は、黒い女がゲイシャ、白い女がカフェ・オレだった。支払いの時、黒い女の方が1700円も高くついた。怒られるかも、と思ったが、「私がバカだった」とレジの前に崩れ落ちて泣かれてしまった。オレも泣きたくなった。
 
9. すべての風景に珈琲吐いた
隣の男は酔っているようには見えなかったが、吐いた。反対側の女もシラフに見えたが、吐いた。辺りを見回すと、そこにいる全員が吐いていた。酒じゃあるまいし、どうしてコーヒーを味わっているのに吐かなきゃならないんだ。腹立たしさを感じながらも、コーヒーをズーッと啜った。途端にウッときた。ダメだ。カッピングのすべての風景にコーヒー吐いた。
 
  浅い珈琲小話 (3)
「珈琲を 飲んでまたよし 塵芥」 (帰山人)
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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