攻性の幻想

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2015年06月21日 23時30分]
第1の攻殻(士郎正宗の原作漫画)も第2の攻殻(押井守の映画版)も第3の攻殻(神山健治のS.A.C.)も第4の攻殻(黄瀬和哉のARISE)も、公開当時に観ていない…しかし、それは草薙素子に《この世の中が嫌いなら二度とあの世から出てくるな!》と怒られたからでもないし、《それが嫌なら耳と目を閉じ口をつぐんで孤独に暮らせ!》と叱られたからでもない。そして、「攻殻機動隊」25周年記念作品を観てみろって囁くのよ、私のゴーストが…
 攻性の幻想 (1) 攻性の幻想 (2)
 
『攻殻機動隊 新劇場版』 観賞後記
 
「想像したよりも全然面白かった。全体にテンポがよくてお話がよくできているんで、あと表現もなかなかいいんじゃないでしょうかね」という押井守の感想(「公開前夜!25周年記念オールナイトイベント“GHOST IN THE NIGHT”」)に同意する。もっとも、私には鮮明な想像があったわけじゃない、それは植えつけられた擬似記憶であり、実際の私は失う期待を持ったことがない。この点で、黄瀬和哉(総監督・キャラクターデザイン)や野村和也(監督)を《お前たちは最高の部品(パーツ)だ》と勘違いして、メスゴリラにパージされるべきであろう押井守とは、私の真意は違うのだと、欄外の解説に記しておきたい…
 攻性の幻想 (3) 攻性の幻想 (4) 攻性の幻想 (5)
 
 《今のところ、このサイバー・パンクの代表作と目されているのが、ギブスンの
  『ニューロマンサー』(一九八四年)である。(略)この作品の世界は、現代の
  ハイテク空間がデフォルメされた形で未来に投影されたものにほかならない。
  しかしそれは、現在のデータに基づいて未来世界を構築し、そこから現代を
  照射する外挿法などとは根本的に異なる。むしろ一見幻想的な電脳空間こ
  そが現代であり、われわれが現実と見なしているこの空間は過去のテクノロ
  ジーの産物に過ぎない。これがギブスンの認識だろう。現代とはあるもので
  はなく、発見されるものだ。(略)しかし、ある共同体の下で夢を見させられて
  いるに過ぎないという視点が忘却される時、われわれはまたもやあの能動
  性の神話に回収されてしまう。フロンティア神話が未来志向、科学技術志向
  を介してスペース・オペラと結びつき、反科学主義が無前提な古代志向、中
  世志向と短絡して、SF冒険ファンタジーを量産してゆくように。この事情は
  “サイバー・パンク”の場合も例外ではない。それが電脳空間という新しい西
  部を舞台に展開される“サイバー・オペラ”に堕す危険性はたえずはらまれ
  ているのである。“サイバー・パンク”は、アメリカSFの強迫観念が発見した
  新たなフロンティアであると同時に、ハイテク時代の感性が呼び寄せた認識
  可能性の様態でもある。》 (新戸雅章 「サイバー・パンクと八〇年代SF」/
  『SFとは何か』 笠井潔:編著/日本放送出版協会:刊 1986年)
 攻性の幻想 (6)
「攻殻機動隊」もまた、1989年に漫画で登場して以来、劇場用アニメとTVアニメが製作されて、サイバーパンクの代表作のように言われてきた。草薙素子の過去と攻殻機動隊(公安9課)の誕生までを描いた『攻殻機動隊 新劇場版』の世界では、《電脳空間こそが現代であり》、現実世界は《過去のテクノロジーの産物に過ぎない》。その電脳と義体によって‘攻性’に満ちた作品世界は、製作者も観客も《ある共同体の下で夢を見させられているに過ぎないという視点が忘却され》た25年余の間で、《“サイバー・オペラ”に堕す危険性》の様態から逃れられなかった。遠隔操作による脳の無い全身義体のような作品世界の中で、前髪パッツンの若きメスゴリラ草薙素子は《未来を、創れ──。》などと言っていたが、それは《能動性の神話》、つまり「攻性の幻想」に全て回収されてしまう暗示だ。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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