人生は四苦八苦だ!

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2015年06月04日 01時30分]
年甲斐もなくフルマラソンに挑む映画が2本、あ~ややこしい…以前に観たオランダ映画『人生はマラソンだ!』(2012年)はロッテルダム・マラソンだったが、今般のドイツ映画『陽だまりハウスでマラソンを』(2013年)はベルリン・マラソン。妻を病気で亡くし、自らも老人性うつと診断された70歳過ぎのジジイが走る。…ん? あっ! 現実は映画より奇なり?
 
 人生は四苦八苦だ! (1)
 「92歳65日でフルマラソン完走!女性の最高齢記録更新」
 《米カリフォルニア州サンディエゴで31日に行われた第16回ロックンロール・マ
  ラソンで、北カロライナ州シャーロット在住のハリエット・トンプソンさんが7時間
  24分36秒でフィニッシュ。(略)…今年1月に夫を病気で亡くし、自らも感染症
  で足が動かなくなるなど精神的にも肉体的にも“調整不十分”だった。》 (「スポ
  ニチ」 2015年6月1日)
 
『陽だまりハウスでマラソンを』(Sein letztes Rennen) 観賞後記
 
 人生は四苦八苦だ! (2)
《主演はドイツが誇る国民的喜劇俳優ディーター・ハラーフォルデン。マラソン初挑戦の彼は、役作りの為に9キロの減量に成功。パウル役を体当たりで演じ、見事に史上最高齢でのドイツ映画祭最優秀主演男優賞に輝いた》(『陽だまりハウスでマラソンを』Webサイト)…「体重が1キロ減るとフルマラソンの記録が3分以上縮まる」という田中宏暁(福岡大学身体活動研究所)が提唱する説によれば、パウル・アヴァホフを演じたハラーフォルデンは27分以上も記録が縮んだはずだが、実際には半分も走っていないので効果が不明だ。
 
 人生は四苦八苦だ! (3)
 《映画は、パウルを英雄には描かない。意固地なじいさんだ。くたびれたジャー
  ジーを着た太り気味の姿は、颯爽とはいかない。むしろ貧相だ。力強いストラ
  イドも、軽快なピッチも望めない。ただ自分のペースを守り続ける。奇跡も描
  かれない。日々の積み重ねがすべてのマラソンは現実そのもので、ファンタ
  ジーの入り込む余地はない。荒い息で走るパウルを、カメラは冷静に見つめ
  る。》 (大木隆士 「自分の人生を走れば」/「読売新聞」 2015年3月27日)
 人生は四苦八苦だ! (4)
 《これが実にうまく作られている。映画の冒頭、パウルはゴール寸前、ソ連の選
  手を抜いてヘルシンキ・オリンピックのマラソンで優勝する実写らしいフィルム
  が挿入される。この実写らしいフィルムが、実はフィクションである。(略)それ
  でも映画の設定の巧みさだろう。戦後の復興を遂げようとするドイツに、国民
  的な英雄が現れたというフィクションを、さもありえたかのように見せているわ
  けである。》 (二井康雄 「学び!とシネマ」Vol.108/日本文教出版Webサ
  イト 2015年3月20日)
 人生は四苦八苦だ! (5)
大木の評は間違っている。マラソンも映画も全くわかっていない。二井が評する通り、主人公パウルは、1952年ヘルシンキと1956年メルボルンのオリンピアード競技大会でマラソンを連覇している英雄だ。『陽だまりハウスでマラソンを』は、ファンタジー(空想)を駆け巡る《実にうまく作られている》映画なのだ。そこは素直に佳作といってよい。但し、演じたハラーフォルデンの走りがファンタスティックであっても、ハリエット・トンプソンが成し遂げた《現実そのもの》よりは《貧相だ》ともいえる。それは、映画の役者や制作者の仕業でもなければ、評者や観客の所為でもない。マラソンはマラソンであり、映画は映画である…マラソンは‘走って死ぬ’ものだから「人生はマラソンだ」といえるが、映画は観ても不死だ。
 
 人生は四苦八苦だ! (6)
『陽だまりハウスでマラソンを』は、生・老・病・死・愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦という「四苦八苦」を明るく描写したマラソン映画なのだが、コレを日本では《人生に、引退はありません。》という愚劣な惹句を掲げる…無能な連中は完走すらできない。そこは、「人生に、思いどおりはありません」と苦笑いするべきだろう。つまり「人生は四苦八苦だ」。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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