大坊珈琲の時間 贅言

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2015 [2015年06月02日 01時00分]
2015年5月30日の「『大坊珈琲の時間』を楽しむ会」に参加しての雑感を附言してみよう。
 
 大坊珈琲の時間 (6)
トークショウで大坊勝次氏は、《常連が増えていくに連れて、店の空気が停滞するというか、沈澱する。キムさんの器を置くことで、店の空気が攪拌されるというか、風が流れるというか、そんなことが起きるんだな、と…》と言っていた。金憲鎬(キム・ホノ)氏の作品に関して、《好きか?って言われて、「好きです」って言うものじゃない…》とも。「大坊珈琲店」という店は、どうだったのだろう?…少なくとも、大坊さんの作るコーヒーは皆が皆「好きです」って言うコーヒーではなかったのではないか、私にはそう想える。ただ、大坊さんのコーヒーを喫した人には、その人自身の《空気が攪拌されるというか、風が流れるというか、そんなことが起きる》のではないか、と。今般の「楽しむ会」では、大坊さんのコーヒーを初めて口にした参加者が過半数だったが、さすがに面と向かって「嫌いです」と言う者はいなかったにせよ、「よくわからない」「ただ濃くて苦いとだけ思った」という声もあった。私は、その成行きに対して善し悪しを論じたいのではない。南青山の「大坊珈琲店」というコミュニティ、一種の集人の装置であり、感受の機構である「店」と、ちくさ正文館での「楽しむ会」というイベントでは、流れる空気も風も何か異なるところがあるのだろう。私にとっては、いずれも「大坊珈琲の時間」である。だが、それらは決して同じではないとも、ひしひしと感じていた。
 
 大坊珈琲の時間 (7)
トークショウでの参加者からの質疑では、「大坊さんの焙煎度合いの揺らぎ」(コレは私が投じた)、「先般対談したブルーボトルコーヒーのジェームズ・フリーマンについて」などに加えて、「大坊さんキムさんの死生観」までも訊かれていた。私は、死生観に関する2人各々の答えよりも、そうした質疑がイベントで飛び出すこと、応答を聴いている会場の雰囲気が興味深かった。今般に大坊さんが作ったコーヒーを「軽やか」と評したのは私だけではなくて、そうした声に「フワッと浮いた感じ」から「日本舞踊の足運び」まで話が及んで…そもそも感性による抽象の表現が飛び交う場であったから、話題が死生観や宇宙観・世界観に及んでも何ら不思議はない。ただ、これは他のコーヒー催事では少ないことだろう。少なくとも、サードウェイブコーヒー絡みのセミナーやイベントでは及ぶとは思えない話題である。私は、その成行きに対して善し悪しを論じたいのではない。実は、大坊さんのコーヒーに限らず、深煎りとネルドリップを標榜する日本の自家焙煎コーヒー店のコーヒーには、概して感性による抽象の表現がつきまとう。そのこと自体が、コーヒーを飲んだり論じたりする場の雰囲気に大きな影響を与えているのだろう。私にとっては、そうした雰囲気の醸成も「大坊珈琲の時間」である。だが、それは危うくも楽しい、また広くも深い「時間」であろう。「『大坊珈琲の時間』を楽しむ会」は、深煎りとネルドリップのコーヒーから醸成されていた。
 
 《向こうもこっちを「この野郎、何ていう珈琲をつくるんだ」と、見てるという。そ
  れっきりなんだけども、でも目の合った瞬間のその時の目というのが、これ
  がコミュニケーションだと思うんです。》
  (大坊勝次:談/『大坊珈琲の時間』pp.116-117)
 
「この野郎、何ていう珈琲をつくるんだ」と大坊勝次氏に‘言わせる’…私の悪戯の望みだ。「『大坊珈琲の時間』を楽しむ会」に参加して、より一層その悪戯な珈琲を作り続けたいと…
 
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コメント

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じょにぃ。 URL [2015年06月03日 10時43分] [編集]

帰山人さん。

今回の記事を読んで
やはり類は友を呼ぶ。
集まるんですね。

その空気感を味わってみたかったです。

死生観・日本舞踊の足運び

あえて偏見を言わせてもらえば
昨今の店側・客側含めての”おしゃれさん”達では
人生観のような話にはなるかもしれませんが
このような話の流れにはならないでしょうね。

「よくわからない」「ただ濃くて苦いとだけ思った」という声もあった。

上手く言えないんですが
それでいいんだと思います。
良い悪いじゃなくて
珈琲を味わって大坊さんを感じて
その後その人はどうするのか
その先が大事なのかなと。
その中の一つが”時間を楽しむ”なのかなと。

大坊さん。東北に来ないですかね。
誰かイベント企画してくれないかなと
他力本願なじょにぃでございます。

to:じょにぃ。さん
帰山人 URL [2015年06月03日 16時20分]

憧憬も行きすぎれば撞着になる。聡悟も行きすぎれば齟齬が生ずる。一途と融通のどちらがよいのか。そんなことを考えながら聴いていました。
この手の催事は、開催すること参加すること、それ自体を合目的にしがちです。他人に釣られずに、時間を味わいたいものです。

kokumarou URL [2015年06月04日 01時32分]

帰山人さん
お久ぶりです。いつもの記事も、先日のFチャンネルも、楽しく見させていただきました。
実は、ひなたごこちの話を聴いて以来、省エネに興味を持ってしまい本を読んだりしているのですが、帰山人さんのお話の方が楽しくて好きです。
大坊さんと言えばなのですが、待夢珈琲の今井さんが書いている中日新聞の「達人に訊け」の記事に大坊さんが紹介されていて、その中で美美の森光さんが被っているような、何素材かわからないような帽子を大坊さんも被っていたのですが、焙煎の名人になると、あれは自然と被るものなのでしょうか。私もあれがほしいのですが、なんて検索したらいいのかわかりません。。もしご存知でしたら教えてください。

to:kokumarouさん
帰山人 URL [2015年06月08日 00時23分]

え~と、帽子に関しては詳しく存じません。で、大坊さんと長々と談話してきたのですが、その話を訊くことを失念してしまいました。申し訳ありません。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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