危ぶむべき辞典

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2015 [2015年05月21日 01時00分]
《アントニオ猪木が、誠文堂新光社から14日発刊の「コーヒー語辞典」(山本加奈子著)に紹介される。13歳の時にブラジルに渡り、コーヒー豆の収穫などを行っていたという猪木。》(アントニオ猪木「コーヒー語辞典」に登場/「日刊スポーツ」 2015年5月8日)…「この辞典を引けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば辞典はなし 読み解けばその一語が辞典となり その一語が辞典となる 迷わず引けよ 引けばわかるさ」…本当か?
 
 危ぶむべき辞典 (1)
『コーヒー語辞典 珈琲にまつわる言葉をイラストと豆知識でほっこり読み解く 』(山本加奈子:著/村澤智之:監修/誠文堂新光社:刊 2015年5月7日発売)の誤りを解こう…
 
《19世紀に入り戦争中の一時期コーヒーの輸入が禁止されるが終戦後、再開。(略)19世紀後半にはシアトル系カフェの参入。20世紀には豆や淹れ方など細部にまでこだわった、新しい文化も生まれコーヒーの世界は常に進化し続けている。》(p.15)…19世紀が20世紀の、20世紀は21世紀の間違いだろう。コーヒーの世界は常に誤り続けている。
 
《ウォッシュト 収穫したチェリーをパルパー(果肉除去機)にかけ、パーチメントの状態にする。(略)セミウォッシュト ウォッシュトの果肉除去の際にパーチメントも同時に取り除き作業工程を簡略化した方法。》(p.19)…説明は簡略化ではなく根本的に間違いだ。
 
《アメリカ合衆国【Unted States of America】 国別コーヒー消費量は世界一で、セカンドウェーブ、サードウェーブともにアメリカ西海岸から始まった。》(p.41) 《サードウェーブ【third wave】 90年代後半に始まり、初期の興りは北欧。(略)…誤用の多い用語》(p.95)…一貫性に欠けている。また、誤用も何も、始りはトリッシュ・ロスギブの思いつき。
 
《ウェットカプチーノ【Wet cappuccino】 フォームドミルクよりスチームミルクの割合が少ない、少しとろりとしたカプチーノ。》(p.50)…これでは「ウェット」の説明になっていない。
 
《ウツカフェ【utzkapeh】 現在はグッドインサイド。》(p.51)…間違い。‘ウツ’が‘鬱’に通ずるので‘UTZ’を使用しない日本独自のロゴに変えていたのは、2012年4月まで。2012年5月以降は、国際統一の新‘UTZ Certified’ロゴを日本でも使用している。
 
《えう゛ぁかん【エヴァ缶】 監督の庵野秀明氏がUCCの缶コーヒーを愛飲していたことから『新世紀エヴァンゲリオン』の劇中にも登場、以来映画公開に合わせて発売されている。》(p.54)…それは違うな。所詮、エヴァ缶は開発過程のプロトタイプ。けど2007年以降のヱヴァ缶は違う。これこそ、実戦用に作られた世界初の本物のヱヴァンゲリヲンなのよ。
 
《エクセルソ【excelso】 スクリーン12以上=エクセルソ・カラコール、14以上=エクセルソ・マラゴジペ、15以上=エクセルソ・ヨーロッパ、16以上=エクセルソ・エクストラ、17以上=エクセルソ・スプレモなどエクセルソの中でもスクリーンサイズによって呼び名が変わる。》(p.55)…誤解だらけ。カラコールは12~14主体(90%)のピーベリー、マラゴジペは18主体(95%)のプレミアムを指す。そもそも、「エクセルソ」と「スプレモ」では、規格の調合水準が異なる概念であり、同じ土俵上で大小を比べて表することはできない。
 
…辞典の「基礎知識」と「あ行」、まだ全体の4分の1程度だが、この後の残りにも適正を欠いた説明や誤った注釈が多過ぎて、とても訂正しきれない。もっとも、《そんなコーヒーに関する単語を辞典形式にまとめました》(「はじめに」p.3)とも、《書き上げてもまだまだわからないことだらけですが…》(「おわりに」p.199)とも著者が言っているので、この本は辞典の体裁を取り繕って虚構を描いた戯作であるのかもしれない…あぁ、《ほっこり》した。
 危ぶむべき辞典 (2)
《とうげい 【陶芸】 取っ手は思い切ってユニークに曲げてみたり、(略)自分で作ったカップはいつも以上にコーヒーを味わい深くしてくれるに違いない。》(表紙)…ひょっとすると、精確性までも《思い切ってユニークに曲げてみたり》した本が、『コーヒー語辞典』なのか?
 
『コーヒー語辞典 珈琲にまつわる言葉をイラストと豆知識でほっこり読み解く 』を引けばどうなるものか…形式は辞典でも危ぶむべきコーヒー本である、引けばわかるさ、迷うぞ。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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