美女と把住 其の二

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2015 [2015年04月13日 01時00分]
【対決2:コーヒーな男】
 
「…わずかに是非あれば、紛然として心を失う。階級に落ちざれば、また模索することなし。しばらく言え、放行するが即ち是か、把住するが即ち是か…」(『碧巌録』第五十一則垂示) 放行は、放浪であり放出であり放任であり差別であり大要であり、絶対肯定の解放である。 把住は、定住であり備蓄であり干渉であり平等であり詳細であり、絶対否定の制約である。 《奇妙な“間”をもつ修行僧》とか《丿貫(へちかん)》とかいわれる大坊勝次、彼の公案や侘び茶に挑む者たちが、またも現われた。開店を機にする者、閉店を気にする者…対決?
 
 美女と把住 (5) 美女と把住 (6)
 《2015年3月5日。オープンを目前に控えたブルーボトルコーヒーの日本2号店
  「青山カフェ」にて、創業者ジェームズ・フリーマン氏と、大坊珈琲店主、大坊勝
  次氏が初対面の挨拶を交わしました。 (略)その翌日、1号店「清澄白河ロー
  スタリー&カフェ」のオフィスでお二人の対談がおこなわれました。テーマはブ
  ルーボトルコーヒーに影響を与えたという日本の喫茶店文化、そして大坊珈琲
  店について。フリーマン氏の目にはどう映り、どのように理解されているのでしょ
  うか?》(カフェ担当ガイド:川口葉子)
 《いつも「これは何グラムなんだろう?」とか「どうやっているんだろう?」とか、吸
  収して参考にしたいと思いながらカウンターに座っていました。大坊さんの所
  作や、どこに何を置くかなど、決まったルールの中で動いていたと思いますが、
  それを見て学んでいました。》(ジェームズ・フリーマン:談)
  (「対談:ブルーボトルコーヒー創業者×大坊珈琲店店主」/Webサイト『All About』) 
 
 美女と把住 (7) 美女と把住 (8)
 《表参道「大坊珈琲店」でのキムホノの定位置は、L字カウンターの角近く。展覧
  会などで東京にいる時は連日、開店からお昼まで手回しロースターで豆を焙
  煎する大坊勝次の真ん前に陣取り「大坊珈琲の時間」を楽しんでいた。ビルの
  取り壊しにより、四半世紀通ったかけがえのない場がなくなると知り、着想され
  たのが、この本だ。 (略)珈琲について、店と経済について、つくることについ
  て、好きなことをして生きていくことについて、存分に語り合った。》(帯コピー)
 《でも僕には、主義でやっているようなイメージしかないんですけれど(笑)。》(p.53)
  《大坊さんは自分の目で選んできたからそう言えるのかもしれないけれど、そ
  ういう風に言える人は結構少ないと僕は思います。》(p.63) 《人間が無意識に
  求めている根源的なものが、そこにあるかどうかだと思うんです。》(p.87) 《社
  会の空気と大坊珈琲店の空気は違う。》(p.105) 《だから、自分のことが信じら
  れるんですよ。自分が大好きなんですよ(笑)。》(p.134) (キムホノ:談)
  (大坊勝次・キムホノ 『大坊珈琲の時間』/自由空間:刊)
 
自由人(freeman)の名を持つ男らしく、その発言には絶対差別の世界での肯定しかない。ならば放行へ惹かれているかとみれば、大坊珈琲店では所作やルールばかりが気になっていたらしく、細部ばかりを見て《カウンターに座っていました》と。把住へ傾きすぎて、何も学んでいない。ジェームズ・フリーマンの妄見であろう。鎬の筋を則る(憲鎬:ホノ)の名を持つ男らしく、その発言には絶対平等の世界での否定しかない。ならば把住へ惹かれているかとみれば、大坊珈琲店では手廻し焙煎機の真ん前で煙い空気ばかりを読んでいたらしく、結局は《自分が大好きなんですよ》と。自己の観想を投影しすぎて、放行へ傾いている。キムホノの妄念であろう。それでも、時流に乗りたいだけの他人(川口葉子)が企画した対談におけるフリーマンの紛然とした言葉よりも、模索しつつも筋を通したい金憲鎬の言は強い。いずれが「コーヒーな男」なのか?…いや、そもそも「コーヒーな男」は、大坊勝次だったか…(但し、『大坊珈琲の時間』には、「コーヒーな女」である大坊恵子の発言も収められている)。 
 
大坊勝次は言う、《何かによって差別された時なんていうのも、すごく嫌だと思います。だから、店の中では一人ひとりが独立した個であって、みんな平等であるということは、すごく意識しましたね。それをどのように生き切るか。》(『大坊珈琲の時間』p.115)…やはりコーヒーは、美女よりも把住を求めるべきなのであろうか? いや、大坊恵子は言う、《それとね、どっちが正しいとか、そういうことじゃないでしょ。お互いに自分の気持ちがどういう感じかということを言い合う。これで終わりというピリオドのない話。それは風がふうっと入ってきたと同じような。楽しいですよね。》(『大坊珈琲の時間』p.122)…恵子と勝次は「美女と把住」である。
 
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コメント

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じょにぃ。 URL [2015年04月13日 12時51分] [編集]

帰山人さん。

どのような業界にも
大坊さんのような素晴らしい方はいらっしゃるわけですが
今回のような記事を見る度に
『変な人に引っかからなきゃ(利用されなきゃ)いいなぁ』
と思うわけです。

勿論色んな人に出会う事によって
良い刺激となる事もあるのでしょうけども。

それによって自身を下げる事もあるよなぁとも思うわけです。

to:じょにぃ。さん
帰山人 URL [2015年04月13日 19時15分]

ふむ、大坊さんが《素晴らしい方》ならば、他人に引っかかることも利用されることも含めてスバラシイんじゃないだろうか?…融通無碍であればイイんだと思う。人望ってのは他人が付ける記号であって、当の本人が縛られるものじゃないからねぇ…

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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