サクラカブキ

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:art・芸術・美術 / カテゴリ:観の記:美面 [2015年04月04日 01時30分]
2015年3月29日の雨上がりの午後、ふれあい緑道と落合公園をチョット走りながら花見。
ソメイヨシノの満開には早過ぎるが、酔っぱらいもガキもいない閑寂な公園で、独り桜花見。
 サクラカブキ (1) サクラカブキ (2) サクラカブキ (3)
 
2015年4月2日の日暮れる頃、伊奈波神社(岐阜市)を訪れて夜桜を観て歌舞伎を観る。
「岐阜まち歌舞伎」は、岐阜町若旦那会が主催する地芝居としての素人歌舞伎である。サ
クラは稲(サ)の神が宿る座(クラ)であり、そうした神霊を奉ずる散楽が後に歌舞伎となる。
春秋去来の伝承に拠って稲葉山(金華山)の山の神が田の神へと霊格を変える春、麓へ
下って伊奈波神社の桜花を咲かせ、氏子らは岐阜まつりの演芸として歌舞伎を神へ奉ず
…と戯れに想えば、桜花見て歌舞伎を観る私の「サクラカブキ」観賞は全い正当な話かも。
 サクラカブキ (4) サクラカブキ (5) サクラカブキ (6)
 
岐阜祭奉賛 「岐阜まち歌舞伎」 (於:「稲葉座」 伊奈波神社参集殿3階)
『縁糸戎釣竿(えにしのいとえびすのつりざお) ~釣女~』
 サクラカブキ (7) サクラカブキ (8) サクラカブキ (9)
開演前から満席だったが、口上、素囃子「供奴」、舞踊「春霞伊奈波彌栄」と演目が進む
につれて、立ち見が廊下に溢れる大入り。幕間に境内の夜桜を観にいった私も、会場へ
戻れば立ち見。さて、眼目の地歌舞伎、演目は「釣女」。明治期、河竹黙阿弥が作詞した
狂言「釣針」を元に常磐津「釣女」が作られ、松羽目物の歌舞伎「戎詣恋釣針」へと写した。
これを底本にして、舞台を西宮神社から伊奈波神社へと移して書き下ろされた作品が今
般の『縁糸戎釣竿 ~釣女~』。包装資材屋「ヱビス」の恵比寿包之丞が恵比寿神の役と
はいえ、蛭子命(ヒルコ)を祭神とする戎(蛭子:えびす)系神社の総本社である西宮神社
の話を、五十瓊敷入彦命(いにしきいりひこのみこと)を祭神とする物部氏系の神社で奉
じてしまう…大胆不敵だ(笑)。口跡や所作が上手とまではいえないが、気迫と洒落は好い。
亀甲屋隆之進(菓子屋)の太郎冠者と達磨屋瓦楽(瓦屋)の福女の三三九度を、両替屋
十六十郎(銀行屋)の大名に釣られた焙豆屋明右衛門(珈琲屋:YAJIMA COFFEE)の
上臈がドリップポットで注ぐ…面白い!納め唄「おばば」で終演。「たいへんよくできました」
 
 《坂東三津五郎の死は、歌舞伎にとって、一人の役者の死にとどまらない打撃である。
  先年の中村勘三郎の死によって危惧されていた歌舞伎の大幹部たちと若手との世
  代の断絶が、三津五郎の死でとどめを刺されたのである。 これは大きく言えば、江
  戸から続いて来た生きた歌舞伎の流れが途絶えたことになる。江戸時代には文字
  通り観客と共に生きていた歌舞伎は、近代に入って古典化したが、反面、生きもの
  としてのエネルギーも持ち続けていた。九代目市川團十郎のいわゆる活歴物という
  新しい試みもそのひとつだったし、もう一方の旗頭の五代目尾上菊五郎は江戸文化
  の洗練を最高度に磨き上げた。 その後も伝統と創造のリレーは続き、筆者の観た
  範囲でも、戦後歌舞伎の六代目中村歌右衛門、十七代目中村勘三郎、二代目尾上
  松緑たちの舞台には、近代の精神と共に濃厚な江戸の匂いがあった。かつての吉
  原にゆかりの役者たちもいたし、振り向けばすぐそこに江戸時代に生まれた人々が
  いたのである。 今の歌舞伎の大幹部たちは戦後歌舞伎の先輩に習うことで辛うじ
  て江戸の匂いを知っている。だが二十代三十代の若手役者は完全な異邦人である。
  歌舞伎はカブキになるのか。(贔屓)》
  (「歌舞伎はカブキになるのか」/「大波小波」 2015年3月30日 『中日新聞』夕刊)
 
この「歌舞伎はカブキになるのか」のように、劇場で興行する大仰な演劇(大歌舞伎?)の
みを「歌舞伎」として捉えている論は、性根をつかんでいない下手な口説きである。それは、
「相撲」といえば「大相撲」としか思い浮かばない短慮と同様だ。「相撲」の本質がスポーツ
競技でも国技でもない武道としての神事であるように、「歌舞伎」の本質は散楽としての神
事であり狂言芝居を奉ずることでしかない。誰が死んで‘カブキ’になろうが、「岐阜まち歌
舞伎」のような地芝居や全国各地の農民歌舞伎こそが「歌舞伎」の本道として続けば好い。
 サクラカブキ (10) サクラカブキ (11) サクラカブキ (12)
サクラも花ならばカブキも花…涼やかな風に吹かれて夜桜を眺めて「サクラカブキ」を想う。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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