多様性の祝祭

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2015 [2015年03月22日 01時00分]
現在の日本のコーヒー界に到来した‘多様性’(?)…故‘ヴィンコ’(ヴィンチェンツォ・サンダイユ/2013年7月2日没)が生きていたならば、これをどう評しただろうか?…歓んだか?
 
 《一般社団法人インターナショナル コーヒー アソシエーションは3月2日に
  「ジャパン インターナショナル コーヒー インスティテュート(JICI)」を東
  京・南青山に開校することを発表した。(略)同校の校長には世界各地
  2000カ所以上のコーヒー農園を訪れ、「コーヒーハンター」として知ら
  れる川島良彰が就任し、理事長には西牟田実が就任する。》
  (Webサイト「WWDJAPAN.com」/2015年2月17日) 
 《講座は、レベル1「カフェ・セミージャ」、レベル2「カフェ・フローラ」、レベル
  3「カフェ・セレサ」からなり、修了試験に合格するとJICIが発行する修
  了証が授与され各レベルに応じた資格を取得することができる。(略)
  またJICIで講師として就業できる「カフェ・エクスペルト」や講師育成に
  関わることができる「カフェ・マエストロ」の資格発行も行われる。》
  (Webサイト「Fashionsnap.com」/2015年2月17日)
 
 《土浦市下高津でコーヒー専門店「ニコニコ珈琲」を営む松本正さん(49)
  が、布製のフィルターを使ってコーヒーを抽出する「ネルドリップ」の技
  術継承などを目的に5月、「全日本ネルドリップコーヒー協会」を立ち
  上げる。技術をマスターした人には資格の授与も検討している。(略)
  学ぶ人たちの意欲向上につなげようと、松本さんは協会発足と同時
  に技術を競う選手権大会を開くことを計画している。》
  (「産経新聞」 茨城/2015年3月15日)
 
コーヒー界の団体や資格は多種多様である。協会やらアカデミーやらセミナーやら教室やらは無数にある…いったいどの団体に属して学ぶべきなのか?…ハッキリしていることは、学んだり属したりする系列によって、商売や研究に息苦しさを伴う有形無形の規制や圧力が生じ、多様性が失われがちになること。鑑定士や焙煎士やバリスタやコーディネーターやアドバイザーやマイスターやインストラクターやグレーダーやカッパー…いったいどの肩書を仰ぐべきなのか?…ハッキリしていることは、どんな肩書を名乗ろうとも、それが真正に多様性のある見識が得られるわけではないこと。‘多様’であることは、‘祝祭’なのか?
 
 《フルヴィオ・エッカルディと私がこの本を始めたとき、私たちの目的は新し
  いコーヒーを探し出し、そして世界のさまざまな地域でコーヒーがいか
  に育てられ、栽培され、生産処理されているかを学ぶことであった。実
  際私たちが発見したのはさまざまなレベルにおける多様性である。コー
  ヒーそのものの中の多様性、そしてコーヒーが成長する自然環境(し
  ばしば危機に瀕している)の多様性、これらの場所に存在する植物界、
  動物界の多様性、コーヒーを栽培する農家の文化やしばしば忘れられ
  ている先住民たちの中にある多様性。それはこの本を貫いている大き
  なテーマである。》
  (ヴィンチェンツォ・サンダイユ 「日本語版への序文 多様性への覚書」
   /『COFFEE 多様性の祝祭』日本語版 2005年)
 多様性の祝祭
 
私がこの本を読んでから約10年が経過したが、この間にも私なりに《世界のさまざまな地域でコーヒーがいかに育てられ、栽培され、生産処理されているかを学ぶこと》をしてきた。だが、私が発見したのは、コーヒー界における《さまざまなレベルにおける多様性である》。例えば、インスタントコーヒーを「もはやインスタントコーヒーではない」などと詭弁を弄する《コーヒーそのものの中の多様性》、そしてコーヒー屋が競って喧伝する‘スペシャルティ’とか‘サードウェイブ’とかファディッシュでばかげた市場環境(しばしば危機に瀕している)の多様性、これらの場所に存在する協会や団体の軋轢、資格制度や競技会が濫立した多様性、‘体に良い’とか‘地球に優しい’などと妄執の観念でコーヒーを消費する文化やしばしば忘れられているカフェインを含有する飲料の中にあるかなり危うい多様性などだ。「流行への熱狂や風潮への傾倒がいかに軽愚であるか…」を省みない者が口にする「コーヒーの多様性」ほど下劣なものはない。「コーヒーの多様性」を歓ぶ前に、考えるべきは…
 
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コメント

No title
軟弱のリュウ URL [2015年03月23日 19時13分] [編集]

数年前に一度コメントした者です。
レース中盤以降は『はよ終わらして煙草とコーヒーのみたい』
そんな思いばかりの嫌われ喫煙ランナーです。コーヒーと
いっても自販機の缶コーヒー。。。

それにしても、年間通じてあちこちの大会に出てはりますねー。
またじっくりと読ませていただきます。

to:軟弱のリュウさん
帰山人 URL [2015年03月23日 22時42分]

約4年ぶりで来訪いただき、ありがたく存じます。私ゃアノ頃よりさらに数段も走力が落ちて、今じゃ貴殿のワーストタイムですら届かないかも……珈琲狂は変わっていませんがネ。
ヒザお大事にしてください。

帰山人様
じゃまめ URL [2015年03月30日 15時13分]

こんにちは、乱立する協会や団体の目的は人材育成なのでしょうか、はたまたお金なのでしょうか。
私が考える問題ではありませんが考えてしまいます。

諸先輩方のコーヒーに憧れ、目標とし日々コーヒーと共に過ごしておりますが、私にとってそれは蜃気楼のようなもの、到達不可能なものと思っております。しかし、努力しないというわけではありません。
数値化し競技化すること、疑問です。

to:じゃまめさん
帰山人 URL [2015年03月30日 22時48分]

CLCJとCCAJは悪意をもって立ち上げられていますが、他のコーヒー団体に悪気はないのでしょう。但し、その影響が‘善’であるのか否かは別の問題。コレは他分野の団体、企業、組合、自治体、国家などと同じです。

帰山人様
じゃまめ URL [2015年03月31日 20時26分]

納得。
ありがとうございます。

to2:じゃまめさん
帰山人 URL [2015年03月31日 23時15分]

某グレーダーは他店のコーヒーを飲んでエチオピアとスマトラの判別がつきませんでした。某バリスタはドリップする際に湯溜まりを溢れさせていました。某サイフォニストは自店のエスプレッソが自分には濃すぎるので飲めないと言っていました。某ラテアートの方にエスプレッソを注文すると自信がないと断られました。すべて実話です。これが現実です。

帰山人様
じゃまめ URL [2015年04月01日 00時02分]

そんな事実があったとは驚きです。
肩書きは返上すべきでしょうね。
私はタイトル返上を何としても阻止せねば。

to3:じゃまめさん
帰山人 URL [2015年04月01日 13時28分]

いや、肩書きの返上云々が論点の課題じゃないんです。団体への所属にしろ資格の取得にしろ競技の参加にしろ、システムに依拠することが目的でいいのか?システムを手段として利用しつくすくらいの気概のある主体性はどこへいった?って話なワケで…。ま、私は他人の作ったシステムに拠る性分も無いので、他者に関心が無いのですがね。

帰山人様
じゃまめ URL [2015年04月01日 18時21分]

論点ずれてしまい申し訳ありません。

美味しいコーヒーが飲みたい、それだけです。

コメントに感謝いたしま。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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