千年の一擲

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2015年02月03日 05時30分]
天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』は、かつてNHK「シルクロード」を作った河邑厚徳が監督したからなのだろうか、NHK特集のような風合いの映画だった。ならば、以前にNHK「新シルクロード」を作った柴田昌平が監督した今般の映画は、やはりNHKスペシャルのようなテクスチャなのか?…同じ‘和食’のドキュメンタリー映画だし…しょうゆうこと!
 千年の一擲 (1) 千年の一擲 (2)
 
『千年の一滴 だし しょうゆ』 観賞後記
 
 《今回、だしをテーマにしたきっかけは、2011年にNHKで放送したドキュメンタ
  リー番組『クニ子おばばと不思議の森』で焼き畑農業を撮ったことでした。(略)
  そうやって人間が自然の循環の一部となっている風景を撮りながら、しいたけ
  に接しているうち、だしがテーマになると思いつきました。(略)だしは、日本列
  島全体を舞台に、人々が育んだ“食の革命”と言ってもいいかもしれません。
  (略)2011年12月に国際ドキュメンタリー映画祭「Tokyo Docs」(当時の
  「東京TVフォーラム」)が開催されました。(略)僕は『出汁:日本料理のうまみ
  を生み出す不思議世界を旅する』というタイトルのテレビ番組を提案し、フラン
  スのテレビ局「アルテ」に採択されました。でも、国際共同制作を成立させるに
  は、日本側の放送局の力も借りなくてはなりません。(略)NHKに提案すると
  「だしをテーマにした番組は過去にもある」と言われて困りました。そこで、だし
  と2本立てで番組になるテーマを探して、たどり着いたのが醤油だったんです。
  (略)こうして撮影した醤油の映像は、2013年12月にNHKスペシャル『和食―
  1000年の味ミステリー』というタイトルで放送されました。フランスのアルテに
  は、そのNHKの番組を再編集した映像だけでなく、だしについての新しい映像
  を持っていきました。そして「だし」と「しょうゆ」をトータルにアレンジしたものが、
  今回、映画になった作品です。》 (柴田昌平:談/越膳綾子:文/「今週の読
  み物」柴田昌平さんインタビュー 2014年12月23日/Webサイト『週刊 通販
  生活』)
 千年の一擲 (3) 千年の一擲 (4) 千年の一擲 (5)
『千年の一滴 だし しょうゆ』に出演している焼畑農民でシイタケ栽培人の椎葉クニ子は、柴田昌平が代表を務めるプロダクション・エイシアが制作したNHKスペシャル「クニ子おばばと不思議の森」からの《循環の一部》である。同様に、プロダクション・エイシア制作の「和食が世界遺産? おいしい日本 1万5千年の旅」(NHK 2013年1月5日放送)に出ていたカツオ節作り人の今給黎秀作も、より枯れて『千年の一滴』に出演した。「和食が世界遺産?」はユネスコの無形文化遺産登録に向けてのプロモーション番組であったからだろうか、日本の料理人としては京料理「木乃婦」の高橋拓児が出演した。対して、今般の映画『千年の一滴』には、割烹「祇園川上」の加藤宏幸が登場する。政界や財界の圧力からも、組合とか研究会とかアカデミーとかの団体からも、より距離を置きたいと《たどり着いたのが》「祇園川上」の二代目主人だったのか?…そこで余所者の表面に伝統が付着する‘へぎ造り’の味を感じたかったが、結局は再編集だし…しょうゆうこと!
 
出汁や醤油の煌めく滴(しずく)に作意が透いて見える画、欠伸一つさせないで見つめさせるような仕向け、やはり『天のしずく』と同様に『千年の一滴』もNHKの特集番組臭い感…美味しそうではあるけれども、面白味は薄い。伏木亨や北本勝ひこを出演させる科学の裏付け志向も悪くはないが、昆布出汁みたいな木村多江や薄口醤油みたいな奥貫薫には、‘語り’ではなくて実体で登場して欲しかった。‘和食’は見た目だし…しょうゆうこと!
 
 千年の一擲 (6) 千年の一擲 (7)
『千年の一滴 だし しょうゆ』の上映後、柴田昌平監督と加藤宏幸店主によるトークショー。最も傾聴に値したのは、来場していた加藤店主の父君の言。(父君自身は洋食、宏幸氏の兄は中華の料理人だが)「どうして息子を川上へ入れたのか?」と問われて、「和食が一番儲かるから」とアッサリ答えた。《和食文化は確かに素晴らしい。ただ、それを支えている生産の現場が疲弊し、場合によっては消滅の危機にさらされている》(『和食の知られざる世界』 新潮新書)、《もしこの列島の食の伝統が失われたならば、日本人としてのアイデンティティさえも手放すことになるかもしれない》(『千年の一滴』映画評)、という辻芳樹氏の憂いに対する本質の一滴、いや一擲が、「一番儲かる」という見識ではないか? 商行為としての飲食業の中でしか食文化の典型を考えられなくなった時点で、千年の伝統を一擲するべきだろう。『千年の一滴』が示すのは「千年の一擲」だし…しょうゆうこと!
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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