ラクサを想う

ジャンル:ライフ / テーマ:ひとりごと / カテゴリ:あ・論廻 [2015年01月19日 01時30分]
私は、「私はシャルリー」(Je suis Charlie/I am Charlie)とは言わない。だが私は、「私はシャルリーではない」(Je ne suis pas Charlie/I am not Charlie)とも言わない。私が見倣うべきだろうと想うのは、グルート(Groot)である。グルートは、「私はグルート」(I am Groot/Je suis Groot)としか言わない。テロがどうであるだとか、表現の自由がこうだとか、低劣な偽言を吐いたりしない。何も言わなくても、グルートには、全てが赦されている(Tout est pardonné)のである。「私はグルート」と言いたい。
 ラクサを想う (1)
 
 《この社会は絶望が足りないと思う。もっと絶望的なことが起こればいい、という
  のではなく、目の前のネガティブなことを直視して、しかるべき絶望を感じるべ
  きだという意味だ。だが、絶望することを回避するあまり、現実から目をそらし
  てしまう。そして物事の悪い面を見つめる考え方を、「悲観的だ」「もっと前向き
  になろう」という言葉で退ける。その結果、自分にとってよい選択をするのに必
  要な情報までをもシャットアウトしてしまう。私はこの傾向を、「希望依存症」と
  名づけたい。本当の希望は、絶望にも耐えうる強さを持っているが、依存症の
  希望は、むしろその強さを奪っていく。》
  (星野智幸 「希望依存症の社会」/中日新聞 夕刊 2014年12月26日)
 
「表現や言論に暴力で対抗することは絶対に許されない」と大言を吐く者が数多い。では、「異質や弱気に同調を強要することは絶対に許されない」とも言ったらどうかね? 加えて、「思想や宗教に過激と断定することは絶対に許されない」とも言ったらどうかね?…本当の暴力は、「絶対に許されない」という安易な表現や言論から生ずる。友好や親交を訴える者の多くは、《希望依存症》である。それは、「いいね!」を押す度に罹患する伝染病だ。
 
権力者も庶民も、ある一部はデモや声明で群れ、また一部は反対のデモや反論の声明で群れ、他の一部はそれらの群れを嘲って群れる。どの群集も、《絶望することを回避するあまり、現実から目をそらしてしま》った‘群れ’である。私は、「落差」を想う。‘群れ’に気色悪さをおぼえて吐き気をもよおすからだ。むやみやたらと同調して断定する、その‘群れ’自体が、感性も悟性も理性も失ってどれほど低落しているか…そこに気がつかない、それを反転させようともしない、《しかるべき絶望を感じるべき》時代の「落差」を想う。
 
 ラクサを想う (2)
「落差」を感じていたら日が暮れたので、夕食は「ラクサ」にした。(先般に友人Iがコーヒーと共に送ってくれた)即席の新加坡叻沙(シンガポール・ラクサ/Prima Taste)に、エビと厚揚げとタケノコとゆで玉子とカイワレ大根を加えて、どれほど本場との落差があるのかもわからない超‘適当’な「ラクサ」の出来上がり。ズゥルズルプッツプツシャックシャッキモックモッキゾスィゾスゴクゾゾゾゾゾ…うん、美味かった。汗を拭いながら「ラクサ」を想う。
 
[2015年1月21日 追記]
超‘適当’な「ラクサ」を食したので、もう少しだけ「落差」を想う。さて、「ラクサ」とは何か?
 
 《マレー半島周辺地域の名物料理であるラクサは、もとはといえばニョニャ料理
  です。シンガポールのラクサのスープは、ココナッツミルクをベースにしたもの
  が中心。つるりとした太めのビーフンやエビ、貝、かまぼこ、揚げ豆腐、卵など
  の具がたっぷり入っています。スープにはチリが入っているためややスパイシー
  ですが、ココナッツミルクに緩和されて全体的にはマイルドな味わいです。濃
  厚なスープにもっちりした食感のビーフンが好相性。》
  (Webサイト「シンガポールナビ」)
 
 《ニョニャ料理はペナン、マラッカ、シンガポールのストレート・ボーン・チャイニー
  ズ(海峡植民地生れの中国人)の家庭料理に起源を持つ。(略)ペナン・ラクサ
  はマレーシア全土で有名な麵料理である。(略)麵はタイのカノム・チーンとお
  なじような、コメ粉でつくった押しだし麵である。(略)ペナン・ラクサと似た味の
  するものにカリー・ミー(咖喱麺)がある。ラクサとちがう点は、スープにタマリン
  ド・ジュースをいれず、ココナツミルクをいれること、トウガラシ、ウコン、コウリョ
  ウキョウ、ニンニク、ショウガ、パンダナスの葉などのスパイスやハーブをつぶ
  して、カレーペースト状にしたルンパを調味料として使用すること、ミーmeeと
  いうコムギ粉の切り麵を使用することである。ウコンで黄色に染まり、ココナツ
  ミルクの油気のある重厚感があり、ルンパのカレー系の香りがする、まさしく本
  場のカレーうどんである。めんどうなことに、ペナンでカリー・ミーとよばれるも
  のを、マレー半島南部ではラクサとよぶのである。》
  (石毛直道『文化麵類学ことはじめ』/フーディアム・コミュニケーション:刊
  1991年)
 
ラクサ(Laksa/叻沙・拉沙)は、サンスクリットで‘laksa’(多い)が語源という怪しい俗説がまかり通るくらいに、多様な形態と香味を放つ。大まかには、米による麺が酸味のある汁に入った「ペナン・ラクサ」(アッサム・ラクサ)系と、小麦による麺がココナッツミルクの効いた汁に入った「ニョニャ・ラクサ」(カレー・ラクサ)系とに分かれるようだ。しかし、例えば、サラワク・ラクサなどは2系両者の折衷とも、或いは別物とも捉えられる。先般に私が食べた《即席の新加坡叻沙(シンガポール・ラクサ/Prima Taste)》は、ニョニャ・ラクサ系であろうが、シンガポールで‘ラクサ・レマ’や‘カトン・ラクサ’という通途のものですらも多様な形態と香味が放たれるらしい。…つまり、「ラクサ」の中にもかなりの「落差」が生じているのだ。ラクサであってラクサではない「落差」そのものの象徴である「ラクサ」を想う。
 
コメント (2) /  トラックバック (0)

コメント

No title
しんろく URL [2015年01月24日 21時58分] [編集]

すっかり明けきってしまい、めでたさのかけらも残ってませんが、今年もよろしくおねがいします。

to:しんろくさん
帰山人 URL [2015年01月25日 00時02分]

明けてめでたかったのか?…わからない年の世の中が続いています。それでも考え抜いて命を帰せば救われるのでしょうか?しんろくさんにはそうあってほしいと存じます。よろしく。

この記事にコメントする

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://kisanjin.blog73.fc2.com/tb.php/766-f87007f1
編集

kisanjin

Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

10 ≪│2017/11│≫ 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
Powered by / © Copyright 帰山人の珈琲漫考 all rights reserved. / Template by IkemenHaizin