羊をめぐる冒険

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:art・芸術・美術 / カテゴリ:観の記:美面 [2015年01月03日 00時30分]
2014年12月21日、干支で乙未の2015年を迎うる前に、「ヒツジを巡る冒険」へ行こう!
 
まずは、自宅から南南西へ約6km走って、「羊神社」へ。古い手水や本来の狛犬もあるが、
それらの手前にある近現代的な‘羊’の像に目が向いてしまう。新しい手水舎の吐水羊や
狛羊(?)っぽい羊の親子の石像である。石造の透垣(連子窓型蕃塀)の羽目板部分にも
羊の彫紋がある。…未年にだけ詣でる無節操な大衆、その俗臭が漂う滑稽な風物に笑う。
 羊をめぐる冒険 (1) 羊をめぐる冒険 (2) 羊をめぐる冒険 (3)
 《羊神社 「延喜式神名帳」に山田郡羊神社、「本国帳」に従三位羊天神とあるのがこの
  神社で、祭神は天照大神、火之迦具土命の二柱を祀る。棟札に慶長十八年(一六一
  三)癸丑八月五日とある。またこの付近の町名、辻町の語源は「ひつじ」が転じたもの
  といわれる。 名古屋市教育委員会》
 《式内 羊神社由緒 (略)社名の由来 群馬県多野郡吉井町にある「多胡碑」(日本三古
  碑の一つ)に刻されている多胡郡の領主羊太夫が奈良の都へ上るときに立ち寄って
  いたゆかりの屋敷がこの地(現辻町)にあり、人々が平和に暮らせるように「人心を
  安らかに」という願いをこめて、羊太夫が祀ったといわれ、誰言うとなく「羊神社」と呼
  び称えるようになったと伝えられている。尾張志に「今、村の名を辻といえるのは羊の
  省かりたるやとそ」尾張国地名考に「住昔火辻村といひしを後世火の字を忌て単に
  辻村と書くといふ」と記されている。》
 羊をめぐる冒険 (4) 羊をめぐる冒険 (5) 羊をめぐる冒険 (6)
どうも腑に落ちない。同じ‘羊神社’でも、多胡羊太夫なる伝説上の人物を祀る群馬県安
中市中野谷の羊神社は、合祭が天児屋根命(アメノコヤネノミコト)であることからも春日
神社系である。対して、名古屋市北区辻町の羊神社は、天照大神の合祭が火之迦具土
神(ヒノカグツチノカミ)であるから秋葉神社系である。辻町の‘ヒツジ’神社は、亡羊補牢
の臭いがする羊太夫の伝説とは切り離して、例えば、軻遇突智(カグツチ)である火之迦
具土(ヒノカグツチ)が短く転訛して、‘火之土’(ヒ・ツ・チ)または‘火土’(ヒ・ツチ)に由来
する、とでもこじつけた方が合点がいくかも…岐路亡羊?まぁ、場所が‘辻’だけにネ(笑)。
  
次に、羊神社から南南西へ約5km走って、「ヤマザキマザック美術館」へ。そういえば、こ
の美術館が所蔵する「羊肉」(シャイム・スーチン)を、「ごはんだよ!」と食を美術へ偽装
する展覧会で観たっけナァ。しかし、今般は企画展「未年計画 名古屋ひつじ物語」を観る。
 羊をめぐる冒険 (7) 羊をめぐる冒険 (8) 羊をめぐる冒険 (9)
 《「羊飼いプロジェクト」と題したインスタレーション(空間展示)を世界各地で展開するの
  は、いずれも大阪府出身の美術作家、井上信太さん(46)と映像作家の前田真二郎
  さん(45)だ。羊が描かれたベニヤ板のパネルを森や都市に設置して、写真や映像
  に収めていく。2人は設置作業を「放牧」と呼ぶ。(略)名古屋市内では今年8月から
  10月にかけて放牧作業を展開。東山動植物園や名古屋城をはじめ、市役所、科学
  館、リニア・鉄道館、大須観音、ナゴヤドーム、そしてヤマザキマザック美術館と、至
  る所で写真や映像作品を制作した。(略)さて、羊の群れを注意深く観察すると、一頭
  一頭違った姿をしているのに顔がない。電動ノコギリで切られた造形に、ゴム判や木
  炭によるドローイングで仕上げられた平面作品の集合体にすぎない。顔のない4本足
  の生き物は、見る人の心象風景でイメージされる「羊」に生まれ変わるのだ。》
  (MAINICHI芸術食堂 「名古屋ひつじ物語 羊パネル設置、映像に」 山田泰生/
   毎日新聞 2014年11月19日)
 羊をめぐる冒険 (10) 羊をめぐる冒険 (11) 羊をめぐる冒険 (12)
どうも腑に落ちない。井上信太は、ナザレのイエスでもなければ牧師でもないが、それで
も自身を‘羊飼い’と称している。曰く、《羊飼いは目がよくて鼻がきく》(イカかっ!)、《羊
飼いは眠る場所を探している》(ホームレスかっ!)、《羊飼いは国境を知らない》(医師団
かっ!)、《羊飼いは蓄えを持たない》(雲水かっ!)、《羊飼いは移動する》(ヒツジかっ!)
…あぁ、羊のようだが《顔のない4本足の生き物》の方は放牧されているのだろうが、‘羊
飼いの肖像’などと顔出ししまくる2本足の生き物は、放牧している側のようで実は放牧さ
れているのだろうナァ。つまり、「名古屋ひつじ物語」は、‘羊’ではなくて‘羊飼い’の物語。
牽羊悔亡というスノビズムから逃れられない人間たち、その俗臭が漂う滑稽な風物に笑う。
 
 
2015年1月1日、干支で乙未の今2015年を賀して、また「ヒツジを巡る冒険」へ行こう!
 
元日に島田市内で「羝羊の爽走」の後、大会会場から西北西へ約10km車を走らせて、
同市内の大代地区へ。ここの土人(どにん)の衆が作った、‘羊’の大きなオブジェを見る。
 羊をめぐる冒険 (13) 羊をめぐる冒険 (14)
 《島田市大代の県道81号線沿いに、来年の干支(えと)の「未(ひつじ)」をかたどった
  高さ3.2メートル、全長4メートルの巨大オブジェ2体が登場した。一目見ようと市内
  外から多くの見物客が訪れている。展示は来年2月下旬まで。地域おこしに取り組む
  「王子田会」(片岡幹男会長)が毎年制作していて、今年で20年目を迎えた。(略)木
  や竹で作った骨組みに軽トラ3台分のわらを張り合わせた。わらを編んで羊の毛の
  柔らかさを表現し、角は藤の木のつるにわらを巻くなどクオリティーの高い作品に仕
  上げた。訪れた人々は、オブジェの前で記念写真を楽しんだ。》
  (「ひつじの巨大オブジェ 島田・大代地区」/静岡新聞 2014年12月11日)
 羊をめぐる冒険 (15)
どうも腑に落ちない。「ジャンボ干支(えと)」と称する置物は、大代に限らず、三重県津市
美里の辰水神社などでも飾られているが、‘羊’は生肖や属相の一つであって、十の天干
を示す‘えと’とは何ら関係が無いし、十二の地支にも方角の相はあっても大きさの概念
は無い。示す方向を誤ったか?…などと論をぶっても、「ほうか?いちいち、せんしょった
いで、はぁやっきりしたっけ。しらすか!ふんとにぶっさらうぞ!」などと言われそうなので、
黙って‘羊’の大きなオブジェを見る。出来は悪くない。その俗臭が漂う滑稽な風物に笑う。
 
私の「ヒツジを巡る冒険」は羊很狼貪なので、結局、本物の生きた‘羊’には逢えないまま
か…それからメイナード・ファーガソンの「スター・ウォーズ」を聴きながらコーヒーを飲んだ。
 
[2015年1月4日 追記]
 羊をめぐる冒険 (16)
案の定、《羊神社に脚光 例年の10倍の人出 …三が日の参拝者は例年2000~3000
人ほど。ただ、前回の未年の03年は約3万人が訪れた。今年は元日だけで約2万7000
人が参拝。2日も時折ふぶく悪天候の中を多くの人が訪れ、静かな住宅街に200メート
ルを超える列ができた。旅行社の初詣ツアーも組まれ、この正月は、さらに多くの参拝者
が見込まれる。》(スポーツニッポン 2015年1月3日)という羊神社の賑わい。当に「羊
は祥なり」(by許慎)ということか?…ところで、羊神社に関する某ブログ記事に、驚嘆す
べき新説が述べられていた。曰く、《じつは書いてあるよう もと元は 火の神社だったんで
すが 印象が悪く 火と当地の辻町の地名が くっついちゃって 火辻 ひつじ それで 羊神社
になったそうです》と。前掲した名古屋市教育委員会の説明文を、主客顛倒して誤解して
いる。‘ヒツジ’と‘つじ’、神社名と地名が成立した時代や順序から考えて、受け入れ難い
奇説ではあるが、「そうかもなぁ」と思わせるところもあり、意外と味わい深い偽言である。
ふと想う…この羊神社の語源に関する偽言が、そうとは知らず拡がっていけば、これは
コーヒー界でも騒がしい(?)アノ「銀ブラ」語源問題と同じく、風説に惑わされる態になる
かもしれないナァ、と。「ヒツジを巡る冒険」は、事後も、その俗臭が漂う滑稽な風物に笑う。
 
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コメント

No title
ちんきー URL [2015年01月05日 17時47分]

山田天満宮に牛(丑)が祭ってあるのは知ってましたがこんな近くに羊」(未)が祭ってある神社があるとは知りませんでした。

to:ちんきーさん
帰山人 URL [2015年01月05日 20時40分]

あるんですよ、そのものズバリの「羊」がネ(笑)

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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