銀ブラと壁ドン

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2014 [2014年11月08日 05時00分]
「銀ブラ」とは何か?…日本のコーヒー界における‘不都合な真実’である「銀ブラ」語源問題に、また一石が投じられたか?…大きな声では言えないが、小さな脳で考えてみる。
 
 《…明治生まれのお袋は、いつもの入り口に近い席に座り、いつも決まって(最
  近では死語の)「銀ブラ」を話題にした。大正時代、流行の先端の「モボ・モガ」
  (モダンボーイ、モダンガール)は用事もないのに、銀座をブラブラ歩いた。
  「銀ブラ」である。でも、お袋の説は違う。銀座の「カフェーパウリスタ」で、ドー
  ナツ付きの1杯5銭のブラジルコーヒーを注文するのが「銀ブラ」だという。実
  家の料亭「柳橋・深川亭」のお座敷で、ごひいきの作家センセイから聞いた話
  らしい。1911(明治44)年にオープンしたこの店は、ブラジル政府からコー
  ヒーの宣伝販売権をもらって「鬼の如(ごと)く黒く、恋の如く甘く、地獄の如く
  熱き」のキャッチが話題に。菊池寛、芥川龍之介、久保田万太郎ら著名文化
  人が集まっていた。(作家・小島政二郎の「甘肌」に、この「銀ブラ=銀座でブ
  ラジルコーヒー」説は詳しい。この店は、現在も東京都中央区銀座8丁目で
  営業中) お袋は「でも……5銭は私たちにはちょっぴり高根の花だったから
  ね」。お袋が亡くなって17年。今や、コンビニで100円のコーヒーが飲める。
  (略)》 (牧太郎「高根の花のコーヒー」/コラム「牧太郎の大きな声では言え
  ないが…」/毎日新聞 夕刊 2014年9月29日)
 
このコラムで、《作家・小島政二郎の「甘肌」に、この「銀ブラ=銀座でブラジルコーヒー」説は詳しい》という牧太郎氏の言説が、(掲載直後に飯間浩明氏がWeb上で正している通りに)誤認であることは紛れもない。だが、私は別の点に注目したい。牧太郎氏の母(牧ふみ:1907年生まれ)が、《実家の料亭「柳橋・深川亭」のお座敷で、ごひいきの作家センセイから聞いた話らしい》という、「銀ブラ=銀座でブラジルコーヒー」説の登場する時期と出処である。《お袋が亡くなって17年》というから、牧太郎氏が《お袋の説》を聞いたのは、1997年よりも以前ということになる。これは、『「銀ブラ」の語源を正す カフエーパウリスタと「銀ブラ」』(いなほ書房:刊/2014年)において、星田宏司氏が《珍説の出典となった本》(p.26)とする『日本で最初の喫茶店 「ブラジル移民の父」がはじめた カフエーパウリスタ物語』(長谷川泰三:著/文園社:刊)が発売された2008年11月や、岡本秀徳氏が阿部真士氏によるWebページ「かめかめ日記」を引いて、《既に同社では「銀座でブラジル珈琲説」を唱えていたことがこれで判明》(p.137)とする2003年12月よりも古く遡った1997年以前に、「銀ブラ=銀座でブラジルコーヒー」説が伝聞されたことを示す。その説の出処は、牧太郎氏、牧ふみ氏、そして深川亭を《ごひいきの作家センセイ》までしか遡れないが、‘カフエーパウリスタ’を営業する日東珈琲の元社長である長谷川泰三氏が発信源であると断定できない証言として、興味深い。ここに注目したい。
 
 銀ブラと壁ドン (1)
「銀ブラ」とは何か?…その語源が、銀座通りをぶらぶら散歩することなのか、銀座の無頼漢(ブライカン)なのか、未だハッキリとしていない。銀座でブラジルコーヒーを飲むことである可能性は無に等しいが、この説の根本は戯れや冗談としての‘洒落’(しゃれ)であろう、と私は憶測する。‘洒落’は‘洒落’として笑って聞き流すのか? ‘洒落’にならない、‘洒落’では済まされないとして誹謗するのか?…もし仮に、日東珈琲の宣伝文句とそれに踊らされた連中を‘洒落’では済まされないとして糾弾するのであれば、私は提案したい。星田宏司氏や岡本秀徳氏が属する「日本コーヒー文化学会」は、「日本スペシャルティコーヒー協会」に対して、現会長である長谷川勝彦氏(日東珈琲の現社長)と直前会長である田口護氏(カフェ・バッハの代表)の解任と除籍を求めるべきである。笑いを忘れて怒りを増長させて社会的責任を問いただすということは、そういうことなのである。私は、提案を‘洒落’として笑い続ける、銀座を散策してブラジルコーヒーを飲みながら…
 
 銀ブラと壁ドン (2)
「銀ブラ」とは何か?…「壁ドン」みたいなものだろう。集合住宅などで隣人が騒がしい時に壁を強く叩く「壁ドン」、男性が女性を壁際に追い詰めて手を壁に突く「壁ドン」、どちらが日本語として‘本来’であるのか、伝統性や広範性に照らしてハッキリさせるべきものだろうか? いずれの「壁ドン」も、根本は戯れや冗談としての‘洒落’であろう、と私は憶測する。それは、「銀ブラ」でも同じであろう。日本のコーヒー界は、「銀ブラ」語源問題に騒がしい。日本のコーヒー界は、「銀ブラ」語源問題が気になって仕方がない。「銀ブラ」に「壁ドン」したくなるのは、私だけであろうか? どちらの「壁ドン」か…巷間に一任したい。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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