俗人たちの食事

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2014年10月20日 01時30分]
《大きな鍋で作るのは、10万食分の豆カレー》…つまりは、大量だから画(え)になるのだ。
石原軍団が誇る(?)釜がカレー5千食分だとか、要はそれと同じだろう。ま、観てみるか。
 俗人たちの食事 (1) 俗人たちの食事 (2)
 
『聖者たちの食卓』(Himself He Cooks) 観賞後記
 
 俗人たちの食事 (3) 俗人たちの食事 (4)
 《「食事は大地に近いほどうまい」。食べることにこだわった小説家・開高健氏の言葉だ。
  東京を皮切りに各地で上映されている『聖者たちの食卓』は、インドの大地の滋味が、
  じわじわとにじみ出るドキュメンタリー映画だ ▼舞台は、シク教の聖地「黄金寺院」。
  無数の人が映し出されるが、彼らが何か印象的な言葉を発するわけでも、劇的な展
  開があるわけでもない ▼身を清め寺院に入った人々は、ニンニクの薄皮を一つ一
  つ丁寧にむき、山と積まれたショウガやタマネギを黙々と刻む。巨大な釜が熱せられ、
  カレーが作られていく。黄金寺院では日々、十万人分の食事が用意されるという ▼
  インドにはカーストという厳しい身分制度がある。生まれながら貴賤を決められ、それ
  を運命として受け入れることを強いられてきた。だがシク教は「人間が子宮の中にい
  るうちは、カーストなどありはしない」と教える ▼その象徴が何百年も受け継がれて
  きたランガルと呼ばれる無料の食堂。地位や性別、年齢に関係なく、ともに料理をし、
  同じ床に座って食べ、後片付けをする。誰もが公平に働き、おなかを満たし、幸せな
  気分になる。それ自体が「聖なること」なのだ ▼スクリーンの中でカレーをほおばる
  人々の瞳の輝きを見るうち、開高氏のこんな言葉を思い出した。「心に通ずる道は胃
  を通る」。じっくり噛みしめたい至言だ》 (「中日春秋」 2014年10月18日/中日新聞)
 
バカな、解ってない。開高健氏が「心に通ずる道は胃を通る」と谷口博之氏のエプロンに
記したのは、1984年6月6日である。当にこの時、「黄金寺院事件」(ブルースター作戦)
という暴挙が生じていた。今2014年の6月6日には、黄金寺院事件の30年式典でシク
教徒同士が刀剣で斬り合う乱闘が起きた。…《もの凄いことがさらっと描かれているのだ
が、被写体たちにとってはこれが日常なのだ。この特別感のなさがおかしくて仕方ない。
だから食器を洗いながら「別に普通ですよ、こんなの」という表情さえも面白い。しかし制
作者は画面を覆う人の群れをまるでスペクタクル映画のように、飛び交う大量の食器を
アクションそのものと捉えている》という松江哲明氏(ドキュメンタリー『カレーライスの女た
ち』監督)の映画評は的確だ。つまり、10万食分のカレー作りは、事件であり乱闘である。
 俗人たちの食事 (5) 俗人たちの食事 (6)
時としては‘食事を摂る’という日常の場景さえ「もの珍しい」、そこがこの映画の面白さで
あって、『聖者たちの食卓』というクダラナイ邦題に引っぱられて「聖なること」などと評す
る「中日春秋」は、ドキュメンタリーの真価を全く捉えていない。《スクリーンの中でカレー
をほおばる人々の瞳の輝きを見るうち》に想い出すべきは、「腹が減っては戦(いくさ)が
できぬ」という言葉である。これこそが、シク教におけるランガルの意義を示しているのだ。
 
 俗人たちの食事 (7) 俗人たちの食事 (8)
『聖者たちの食卓』は、傑作である。但し、邦題は嘘だらけだ。そこには‘聖者’など登場
しない。その信心がどうであれ、ただただメシを作ってメシを食らう、大量の‘俗人’たち。
そこには‘食卓’など存在しない。その食堂がどうであれ、ただただメシを待ってメシを食
らう、大量の‘食事’。しかし、同じようにカレーが出てくる映画『スタンリーのお弁当箱』や
めぐり逢わせのお弁当』などとも違い、‘俗人’も‘食事’も卑しくない。『聖者たちの食卓』
は、待ったり並んだり作ったり装ったり食らったり片付けたりしたくなる、オイシイ映画だ!
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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