続・卑しいダッバー

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2014年09月07日 05時30分]
ラジーヴ(ナクル・ヴァイド:演)の悲劇である。思い通りには稼げないが、だからこそ深夜まで働いてクタクタ。妻のイラ(ニムラト・カウル:演)が作った昼飯は楽しみだったが、ある日突然に手抜き弁当に変わる。平然と「お弁当はどうだった?」と訊く妻、ここはグッと堪えて「カリフラワーがウマかった」と応えておけば、次の日もその次の日もカリフラワー尽くし! どうも妻は浮気を疑っているようだが、急にハネムーンの夜を再現しようと迫ってくる妻の方こそ怪しい。どこかの男(イルファーン・カーン:演)と恋文を交わしているようだが、何を考えているのか…不幸だ。ついには弁当さえ届かなくなった! 酷いめぐりあわせだ!
 続・卑しいダッバー (1) 続・卑しいダッバー (2)
 
『めぐり逢わせのお弁当』(Dabba/The Lunchbox) 観賞後記
 
《インド、ムンバイでは、お弁当を職場へ配達するダッバーワーラーという人たちがいます。お弁当が間違って届けられる確率は、たったの600万個にひとつ。これは、そんなお弁当から始まる物語》(映画『めぐり逢わせのお弁当』予告編)…というが、600万分の1は信憑するに足らない確率であり、仮にそれを妄信したとしても、誤配に誤配を重ねて、その確度を一気に貶めてしまった…これは、ダッバーワーラー・システムが崩壊した物語だ。
 続・卑しいダッバー (3)
 
 《私たちがよく見るインド映画を「濃淡」で表現すれば、明らかに「濃い」という
  ことになるだろう。設定、展開、演出、演技、そしてスパイスのようにちりば
  められている歌や踊りのすべてが「濃い」。ところが、この「めぐり逢わせ
  のお弁当」というインド映画は、あらゆる意味において「淡い」のだ。(略)
  このようなインド映画が存在すること自体が奇跡だが、もしこれが本当に
  インド国内で受け入れられたのだとすれば、ニューヨークやパリや東京の
  観客と同じく、インドにも洗練された「淡さ」の中に楽しみを見出すという観
  客が多く生まれはじめていることになる。最後はインド映画らしく観客に希
  望を持たせて終わる。もっとも、それも従来のインド映画とは異なり、極め
  て「淡い」ものではあるのだが。》 (沢木耕太郎「『淡い』インド映画の奇跡
  /映画コラム「銀の街から」/朝日新聞 夕刊/2014年7月25日)
 
違うね。沢木氏自身もコラムの中で引用した通りに、映画の中でサージャン(イルファーン・カーン:演)は弁当を「今日は少し塩辛かった」と評しているのだから、この『めぐり逢わせのお弁当』というインド映画は、ある意味において「濃い」のだ。確かに‘ボリウッド映画’や‘マサラムービー’の類とは異なる雰囲気だが、階上のババア(デシュパンデ夫人/バーラティ・アチュレーカル:演)は音楽をガンガン流すし、サージャンも恋慕を流行歌に乗せて贈るし、ダッバーワーラーたちは列車に揺られつつ手拍子と歌で盛り上がりっぱなし…結局は、この『めぐり逢わせのお弁当』も‘ボリウッド映画’であり‘マサラムービー’なのだ。《“料理は愛を深め”、“人は間違った電車でも正しい場所に着く”》(映画『めぐり逢わせのお弁当』Webサイト:解説&物語)という幻想は、「おいしい」けれども「いやしい」のである。もしかすると、サージャンもイラも、『スタンリーのお弁当箱』のガキが成長した姿なのかもしれない。これら「おいしい」インド映画が存在すること自体を‘奇跡’などとするならば、もしもこれらが本当に「淡い」というのであれば、ニューヨークやパリや東京の観客と同じく、インドにも‘舌バカ’が多く生まれはじめていることになる。沢木耕太郎氏も‘舌バカ’なの?
 続・卑しいダッバー (4) 続・卑しいダッバー (5) 続・卑しいダッバー (6)
“人は間違った電車でも正しい場所に着く”という文句は、悲しいほどに嘘臭い。観終わった後に、「人は間違った弁当でも漁って食べたくなる」という「いやしい」‘マサラムービー’、ソンな映画、いや、トクなところは登場していたインド料理だけが「おいしい」映画ダッバー。
 
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コメント

No title
ナカガワ URL [2014年09月08日 20時13分]

迷いが吹っ切れました。今回は見送り。東京ではこの作品は上映劇場も相性の悪いとこなので。インド料理は好きなのでみたいなあ、と思ったのですが。その代金でカレーを食べます。  近日「インドVSフランス」という映画もあるみたいで胡散臭そうなんですが、うまいところをついてくるなあ、と。  ちなみに書籍や雑誌からの引用文はその都度タイプしているのですか。結構骨の折れる作業ではありませんか。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2014年09月09日 00時38分]

へぇ、監督と女優をみると、インドVSフランスなのか、スウェーデンVSイングランドなのか…観てみましょう。
積毀骨を銷す…骨は折れますが、(誰かと同じで)タイプ練習ですナ。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
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