温新知故のコーヒー

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2014 [2014年08月18日 01時00分]
サードウェイブコーヒー、それは‘温故知新’によるものか、それとも‘温新知故’であるか? 例えば、ホイチョイ・プロダクションズのコラム「サード・ウェーブ・コーヒー 新しきを温ねて故きを知る」(Webサイト『GQ JAPAN』/コンデナスト・ジャパン/2014年8月12日)は、サードウェイブコーヒーの読み解きで誤謬に誤謬を重ねていって、ところが滑稽にも結局にはその本質を捉えきってしまった、サードウェイブという‘波’を解いた驚異の言説である。
 温新知故珈琲
 
 《浅煎り、手淹れ、シングル・オリジンの3拍子!うまいコーヒーのブームがアメ
  リカからやって来た。(略)1981年、まだボクが日立製作所の海外宣伝課の
  新米宣伝マンだった頃、出張で初めてアメリカに行かせてもらったとき、サン
  フランシスコの現地会社のオフィスで出されたコーヒーは、砂糖やクリームを
  入れなくても十分に美味かった。それから何度となくアメリカに出張したが、そ
  の都度、アメリカのコーヒーの美味さには感心させられていた。(略)…ファー
  スト・ウェーブとは、19世紀末からコーヒー豆の大量生産が可能になり、アメ
  リカで日常的にコーヒーが飲まれるようになったときを指す。このとき普及した
  のが、豆は浅煎りで、味は薄めでやや酸味のあるコーヒー。ボクが初めてブ
  ラックでも飲めると思ったコーヒーも、まさにコレ(いわゆるアメリカン・コーヒー
  ってやつですね)。(略)それから20年近くが過ぎてのサード・ウェーブである。
  (略)…アメリカのサード・ウェーブは日本の喫茶店文化の逆輸入と言えるの
  かもしれない(ここらへんの話は、ライバル誌「BRUTUS」のコーヒー特集から
  の輸入です)。その逆輸入のサード・ウェーブ・コーヒーが、最近、日本に逆・
  逆輸入され始めている。日本のカフェ業界は、去年あたりからコンビニ・コー
  ヒーに席巻されっ放しで、少しでも差別化を図ろうとしていた矢先だったから、
  高級感のあるサード・ウェーブのコーヒーは渡りに舟だったのだろう。(略)た
  とえば、昨年ロイヤルホストが赤坂の山王パークタワーの地下に出店した『ス
  タンダードコーヒー』は、スタバやドトールのようなセルフ式カフェなのに、常時
  4種類の浅煎りの豆を手淹れしてくれる、サード・ウェーブの代表のような店。
  仕事で赤坂に行った帰りに飲んでみたけど、懐かしい昔のサンフランシスコ
  のコーヒーの味がした。さらに、ドトール創始者・鳥羽博道の次男の鳥羽伸博
  が、この4月に銀座7丁目の資生堂パーラーのはす向かいにオープンさせた
  ばかりの『トリバコーヒー』は、自店の2階で焙煎した浅煎りのシングル・オリジ
  ンの豆を、常時6種類売っている店。6種類のうちの2種類は、スタンディング
  で100円で飲むことができる。こちらも、行って飲んでみたけど、見事に浅煎
  りで酸味のある味だった。今年は、ブルーボトルが東京に上陸するそうだし、
  いよいよ日本でもサード・ウェーブが本格化するに違いない。個人的には大
  歓迎な話である。》 (ホイチョイ・プロダクションズ 「サード・ウェーブ・コーヒー
  新しきを温ねて故きを知る」/前掲Webサイト)
 
このコラムで、《セカンド・ウェーブは、1971年にシアトルで創業した焙煎の会社、スターバックスが、1987年からヨーロッパ式の深煎りのコーヒーをウリにし始め、これがイタリアの食文化の流行に乗って、「シアトル・コーヒー」として、全米を席巻したとき》、《地理的に上質のアラビカ種が安く手に入るアメリカでは、そもそも深煎りにする必要がなかった》(柄沢和雄氏より伝聞)、(サードウェイブコーヒーの)《火付け役は、2001年に元クラリネット奏者のジェームス・フリーマンがサンフランシスコで始めた「コーヒー界のアップル」と称されるブルーボトル・コーヒー》などと、軽忽な解釈で誤謬が説かれるは笑止の沙汰。
 
だが、ホイチョイ・プロダクションズの馬場康夫氏と思われる‘ボク’にとっては、《豆は浅煎りで、味は薄めでやや酸味のあるコーヒー》が美味いのであり、それがサードウェイブのコーヒーであり、つまり「サードウェイブはファーストウェイブの再来」なのである。私はスターバックスが《「シアトル・コーヒー」として、全米を席巻したとき》を、セカンドウェイブそのものではなくて、1960年代より始まったセカンドウェイブに対する「バックラッシュ」(Backlash/揺り戻し・反動)であると捉えているし、本来大きな一つの‘波’(いわゆる「スペシャルティコーヒー」の‘波’と言い換えてもよい)がバックラッシュによって分断されたかのように喧伝されているのが、セカンドウェイブとサ-ドウェイブであると捉えている。すなわち、馬場康夫氏の解釈とは異なる。しかしながら、《見事に浅煎りで酸味のある》コーヒーが好きな馬場康夫氏から見れば、当に「新しきを温ねて故きを知る」つまり「サードウェイブはファーストウェイブの再来」でしかないのである。サードウェイブのコーヒーは、この滑稽で軽忽な解釈が相応しい程度のシロモノ、気取り無く‘本質’を突いた愉快な話。
 
サードウェイブコーヒー、それは‘温故知新’によるものか、それとも‘温新知故’であるか? それはセカンドウェイブの‘温故知新’であり、またファーストウェイブの‘温新知故’である。輪郭さえ茫とした風潮を読み解くだけでも極めて難しい…‘波’に本質は無い、空疎である。
 
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コメント

No title
kino URL [2014年08月18日 10時21分] [編集]

あの~昔「正しいアメリカン」を知っているお店はあまりなかったように思います。レギュラーにお湯を足すのをアメリカンと言って薄くて胃の調子が悪い時飲むものでした。私の経験ですが、住んでいるところに昔たった一軒だけありました(今そのお店はありません)。アメリカンを正しく理解しているお店が。初めて飲んだ時目が覚めるようで、思えば今のスペシャルの味そのものです。当時はもっとびっくりしましたね~。なぜかレギュラーより高かったです。一人でも行きたいお店でしたがマダムお一人でやっていらして、ケーキ、パン、サービスにはホカホカの蒸しパンが付いていました。時代の先取りだったんだな~と30年前を懐かしく思い出しました。

コモリ URL [2014年08月18日 21時49分]

帰山人さんコンニチワ。昨今ごく少数の人達の批判と憐憫を浴びながら、スターバックス関連の本を読んでいる地方都市の者です。

知らなかったことがありました。スターバックスの創業者ジェリー・ボールドウィンは、アルフレッド・ピートから「焙煎」を教わっていたのですね。そして、初期スターバックスは、街の作家(ゴードン・バウカー)や歴史教師(ゼブ・シーゲル)といったひとたちの、文字通り溜まり場だったのですね。焙煎機を囲って、コーヒー談義をする。まさにアメリカ版(西尾の)フレーバーコーヒーさんのような様相でしょうか? そこに勘違いしたハワード・シュルツが「入社」してくるまでは。。

<本来大きな一つの‘波’(いわゆる
「スペシャルティコーヒー」の‘波’と言い換えてもよい)がバックラッシュによって分断されたかのように喧伝されているのが、セカンドウェイブとサ-ドウェイブであると捉えている>。。結局アメリカでは、ピートさんの自家焙煎珈琲店が現れてから大きなものはいまだ変わらず、愚直な焙煎人と狡猾な商売人に代表される「波」が、押しては返しているということなのでしょうか。

追伸
「カフェは乗っ取られ(ハックされ)ても、喫茶店はただ自滅するだけ」。

先日書かれていたあの文言は、肝に銘じました。

to:kinoさん
帰山人 URL [2014年08月18日 23時13分]

さて「正しいアメリカン」とは如何なるコーヒーか?…浅煎り?ぽえむ(日本珈琲販売共同機構)のメニュー?…私に言わせれば、抽出液の濃度がある程度以上に薄いコーヒーです。したがって「水(お湯)で割ったらアメリカン」も「正しいアメリカン」です。どうも巷間では整合性の無い余計なゴタクを並べているようですが、正しいモノが美味しいとは限らない、美味しいから正しいとも言い切れない、それがコーヒーなのであります。

to:コモリさん
帰山人 URL [2014年08月18日 23時31分]

おっとアブナイアブナイ…スターバックスの本性と来歴と変容の話、仮に自滅することはあってもハックしないされないのが本来の喫茶店である話、いずれも「狂グレーダー」を名乗る以上は当然知っているべき見識ですよ。深く心に刻んでおいてください。

No title
kino URL [2014年08月19日 10時11分] [編集]

ハイッ!!
勉強しましたv-295v-290

to2:kinoさん
帰山人 URL [2014年08月19日 13時12分]

おろ…拙者の言葉は箴言ではなくて戯言でござるよ。

コモリ URL [2014年08月19日 13時55分]

刻みました。笑

ありがとうございました。

to2:コモリさん
帰山人 URL [2014年08月19日 17時26分]

おろ…拙者の言葉は金言ではなくて戯言でござるよ。

- URL [2015年12月26日 18時28分]

トリバコーヒーはサードウェーブじゃない気がしますが?
浅煎りは、シングルオリジンじゃないし。。。

本当に行かれました?

to:(名無し)さん
帰山人 URL [2015年12月26日 20時17分]

《本当に行かれました?》とは誰に訊いているのですか? 私は行っていませんよ。 『トリバコーヒー』を日本の《サード・ウェーブ・コーヒー》の例に挙げて《浅煎りのシングル・オリジン》と語っているのは、引用元の「ホイチョイ・プロダクションズ」ですよ。 突っかかりたいのであれば、馬場康夫氏にしてください。 粗忽過ぎるし不愉快です。 本当に私の記事を読みました?

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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