よって件の如し

ジャンル:ライフ / テーマ:ひとりごと / カテゴリ:あ・論廻 [2014年08月09日 05時30分]
五色の襤褸(ぼろ)舟、‘為後日漫画読後之状差上申処仍而如件’…よってクダンの如し!
 よって件の如し (1)
 
近藤ようこの漫画『五色の舟』(BEAM COMIX/KADOKAWA〔エンターブレイン〕:刊)を読んだ。腰巻には、《津原泰水の傑作幻想譚、奇跡の漫画化》と謳われている。その原作である津原泰水の同名小説「五色の舟」は、『NOVA2』(大森望:編/河出書房新社:刊/2010年)に初出、『SFマガジン』700号記念企画「2014オールタイム・ベストSF」の国内短篇部門で1位に選出された(過去のSFマガジンオールタイム・ベスト国内短編部門1位は、1989年と1997年が小松左京「ゴルディアスの結び目」、2006年が星新一「おーいでてこーい」)。津原泰水は、《本書の原作である短編「五色の舟」には、もうひとつの題名があった。手塚治虫の『W3』(ワンダースリー)をもじった「ワンダー5」だ。見世物一座の惨めさではなく、勇気凜々たる特別な五人を描いているのだという矜持があった》と、漫画『五色の舟』の巻末に稿を寄せている。だが、かつて近藤ようこは、《──たのきんトリオのファンだと聞きましたが……》という問いに対して、《好きです(笑)》と答えていた(「同窓生対談 高橋留美子V.S.近藤ようこ ふたりでいっしょにマンガ描いてきた」/『マンガ奇想天外』No.6/奇想天外社:刊/1981年)…ならば、漫画『五色の舟』は、「W3」というよりも「たのきんトリオ」系であろう。また、《色とりどりの襤褸(ぼろ)をまとった あの美しい舟の上に》で始まり、同じ詞で終わる本作は、「ワンダー5」というより「ゴレンジャー」が相応しい?
 
 《明らかにある種の個性を内包していることが感じられる新しい漫画家の登場を
  眺めるのは楽しいことだ。(略)“幻の漫画家”はいま、確実にその個性の輪郭
  をぼくらの前に呈示し始めたようである。》 (亀和田武「近藤ようこさんに関する
  二、三のエピソード」/『マンガ奇想天外』No.4/奇想天外社:刊/1981年)
 
 《重きに伏したその姿を、どれ程のものと計ることは僕には出来ないけれど、彼
  女に息づくキャラクター達は、決して弱くはないもので、むしろ背負いて尚「な
  んの軽やかに跳ねてみせようではありませんか」──そう言ってるような気が
  してならない。》 (飯田耕一郎「いつか空に満月」/『マンガ奇想天外』No.8/
  奇想天外社:刊/1981年)
 
近藤ようこの作品を初めて目にしたのは、『マンガ奇想天外』誌を読んでいた時だったか? 確かに《明らかにある種の個性を内包していることが感じられ》はしたのだが、《決して弱くはないもの》が描かれていた作品群は、10代の私には‘女臭い’感じが過ぎて、どこかで《どれ程のものと計ること》を拒んでいた。《あなたがた──男たち はやく 立ち去りなさい》(近藤ようこ「サホヒコとサホヒメ」/『マンガ奇想天外』No.4)と、常に言われているようで… だから、今般の『五色の舟』が初めて単行本で読んだ近藤ようこの漫画作品だ(…と思う)。
 よって件の如し (2)
そこには、「くだん」がいた。《むしろ背負いて尚「なんの軽やかに跳ねてみせようではありませんか」──そう言ってるような気がしてならない》「くだん」がいた…よってクダンの如し!
 
 《敗戦の色が濃くなりつつあった昭和19年から20年にかけて西日本一帯に
  「終戦を予言したクダン」の噂がひろまったのはまぎれもない事実のようです》
  (とり・みき「くだんのアレ」牛の人 その二/『事件の地平線』/筑摩書房:刊
   /1998年)
 
 よって件の如し (3)
漫画『五色の舟』は、その終盤が原作から改変されて、「くだん」によって導かれた《「産業奨励館が原爆ドームにならなかった世界」》(近藤ようこ「あとがき」/『五色の舟』)、広島県産業奨励館が壮観を誇ったままのパラレルワールドを描く。それは、‘似て非なる’もう一つの世界であり、現実の「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」でコピペした挨拶文を読み上げる内閣総理大臣と称する輩には、決して移って欲しくない世界である。そして、新たな大戦の色が濃くなりつつある今、新たな「くだん」が現れるのかもしれない。今後は極東最大となるアメリカ軍基地を抱える岩国に、そろそろ「開戦を予言するくだん」が現れても、何らおかしくはないだろう。戦禍を予言する件(くだん)…よってクダンの如し!
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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