お美しい!

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:art・芸術・美術 / カテゴリ:観の記:美面 [2014年07月12日 01時30分]
「おいしい!」と言われたらじっとしておられずに燥いでしまうのは、何も‘BISTRO SMAP’の香取慎吾ばかりではない。以前には「ごはんだよ!」と言われただけで三重県立美術館へ出かけてしまった私が、「おいしい!」とまで言われて黙って見過ごすワケにはいかない。
 お美しい! (1) お美しい! (2)
 
「おいしい! アートで味わう食の世界」 (おかざき世界子ども美術博物館)
 
 《ユネスコの「無形文化遺産」に「和食」が登録され、「食」への関心が更に高まっ
  てきました。家族で食卓を囲む風景、友達と食べるランチ、美味しい食べ物は
  人を幸せにしたり、人と人のコミュニケーションを豊かにする存在でもあります。
  (略)本展で日本そして世界の「食」に出会い、食べる楽しさ、食の大切さを感
  じながら、同時にアートに触れることで想像と創造の世界を広げてください。》
  (企画展「おいしい! アートで味わう食の世界」)
 
違うね。無形文化遺産に登録されたのは「和食」ではないし、今更「食」への関心が高まったとも思えない。ま、だからといって例えば「食育」云々などと安易に言って欲しくもないが、それにしても、「無形文化遺産」とか「和食」とか俗っぽい言葉から始めて企画展の意図を説くこともバカバカしい。だったら、「女体盛り」や「わかめ酒」から説いた方がよほどマシだ。
 
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まず、「日本の食」をテーマにしたアート作品(?)。小豆を顔に付けて裸で踊る祭礼「小豆裸(あずら)の儀」を由来とする虚構の説が民俗学的には不出来な境貴雄氏の「アズラー」(AZURER)…興が乗らない。同氏の巨大どらやきタワー「どらやきいっぱい」は、迫力あって面白い…齧ってから重ねたのか? 重ねてから齧られたのか?山本麻璃絵氏の木彫「自動販売機」は、何故クスノキ…《食の世界》に臭(くす)し木でイイのか? plaplaxと望月勤氏の「つみき寿司」と「つみきおでん」、‘この作品はあそべます’…では、アレ、食い意地ぬ!
 
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次に、世界のお弁当箱登場!(?)。服部直美氏の弁当再現本(『世界のお弁当 心をつなぐ味レシピ55』/情報センター出版局:刊 河出書房新社:復刊)の写真パネルと弁当箱の展示は、能がない…弁当の中身(精巧な模造で可)が入った弁当箱を展示して欲しかった。
 
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最後に、おいしいの秘密を探る(?)。「おばあちゃんのレシピ・さしすせそ+α(調味料)の博物館・工場見学」という展示は無視して、「ニコバーガーゲーム」と「おべんとうトランプ」で大人独りがモクモクと遊ぶ、心がモグモグと遊ぶ、気がパクパクと遊ぶ…で、「おいしい!」。
 
 《わたしは、かきあげたかつおぶしを詩人に見せた。かつおぶしは、うすい、う
  すい雁皮のように、湯上がりの乙女の肌のように……。「やあ、きれいだな。
  芸術品ですね、先生」 「そうだ、料理は芸術だよ」(略) 「でも、先生、カンナを、
  上手に使うのはむずかしいでしょうね」 「変な、安もののかつおかきで、汗を
  かいて、かつおぶしをごしごしけずって、木屑や、砂のようなけずり方をするよ
  り、上等のカンナでかく方が、どれだけ楽だかしれやしないよ」 「そうですかね。
  先生、オンナも、カンナと、同じですね」 「どうして」 「いい女房をもらっておけ
  ば、一生味がよくて経済的ですね」(略) わたしはビールを飲んだ。詩人はウ
  イスキーをなめつつ、「オンナとカンナ」と、うたうようにいった。》
  (北大路魯山人「カンナとオンナ」/『独歩』3・4号 火土火土美房独歩会:刊
   1953年)
 
 お美しい! (14)
「おいしい」は「お・美(い)し・い」という女房詞(ことば)であって、「美(い)し」は「美(よ)し」つまり「良し」であり、「美(い)し」は「美(うま)し」つまり「旨し」でもある…《そうだ、料理は芸術》、すなわち《オンナも、カンナと、同じ》に「お・美(い)し・い」モノを生み出す存在であろう。今般の「おいしい! アートで味わう食の世界」は、それほど「良し」でも「旨し」でもなかった‘子どもダマシ’の展示だったが、それでも‘大人ダマシ’の遊び企画としては堪能であった。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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