喫茶店を想う 2

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2014 [2014年06月16日 01時00分]
休日の昼下がりに3杯目のコーヒーを喫しながら、買い置いてあった雑誌のページを捲る。『WIRED』(ワイアード)Vol.12(GQ JAPAN 2014年7月号増刊/コンデナスト・ジャパン:刊)の特集は「COFFEE & CHOCOLATE STARTUPS/コーヒーとチョコレート 次世代テック企業家たちのニュービジネス」である。…ん? この特集は、《…デジタルの世界は、まだまだこの「黒い液体」に学ぶことが多いのかもしれない。》と語り締められる。その「黒い液体」コーヒー(またはチョコレート)は、《次世代テック企業家たちのニュービジネス》のために存在するのか? 学ばれた後の「黒い液体」コーヒーは、どこへ連れ去られるのか?
 喫茶店を想う2 (1)
 
『WIRED』(ワイアード)Vol.12の特集「コーヒーとチョコレート」は、「ブルーボトルの夢」から始まる。《どのようにして適切な豆を選ぶか。どこで誰がその豆をつくっているのか。焙煎はどうこだわるべきか》、《コーヒーそのものだけじゃなくて、その飲まれ方や、提供のされ方に至るまで、すべてのプロセスに対して情熱をもって創業者は取り組んでいた》…だからブルーボトルコーヒーは“コーヒー界のアップル”と称せられるらしい。創業者のジェームス・フリーマン氏と彼のブルーボトルコーヒーが掲げる取り組みは、かつてハワード・シュルツ氏と(彼が乗っ取った)スターバックスコーヒーが掲げた‘ミッション・ステートメント’に酷似している。「ブルーボトルの夢」は、実は「スターバックスの夢」を追いかけているだけではないのか? 投資と肥大化の先にあるのは、頓挫と陳腐化である。今般ブルーボトルが調達した《4,500万ドル》という金額(ハワード・シュルツがスターバックスを買収した額の11倍強)は、頓挫と陳腐化への加速度を示すことになるだろう。記事はこう言う、《スターバックスの魅力は「ザ・スターバックス・エクスペリエンス」と表現されたが、“組み立てライン”でつくられるエクスペリエンスに、ぼくらはもう興味を失っている。ブルーボトルは違う言葉を使う。「ソウル」。》と。だが、10年も経たない時点に誰かが言い始めるだろう、「ブルーボトルの魅力は『ソウル』と表現されたが、“組み立てライン”でつくられるソウルに、ぼくらはもう興味を失っている」と。ハッキリ言おう…ブルーボトルは“コーヒー界のスタバ”。
 喫茶店を想う2 (2)
『WIRED』(ワイアード)Vol.12の特集「コーヒーとチョコレート」には、背筋が寒くなるような話が並ぶ。「ブルーボトルコーヒー」以外に「サイトグラスコーヒー」、「ダンデライオンチョコレート」、「ブロッサムコーヒー」、「パーフェクトコーヒー」が取り上げられている。笑えることには、『WIRED』(本家USA版)の創業者ルイス・ロゼット氏が乗っ取った「チョー」まで並べている。記事は、「ぼくらはこうやってコーヒーとチョコを“ハック”した」と題しているが、これら6つのコーヒー屋&チョコレート屋は、テック企業にとって単なる装置であり形式であり様相や情勢でしかない、ボンヤリとした虚像の商材でしかない。いずれは(或いは既に)、「ぼくらはこうやって投資家連中に“ハック”された」という悔恨の情にかられるだろう。本特集は、ドキュメンタリー映画(?)『A FILM ABOUT COFFEE』も取り上げていて、これはこれで興味深いが、《「量」から「質」》や《ダイレクトトレード》という語は、テック企業家たちが“ハック”するコーヒー屋に対する姿勢を示すものだろう。今後も“ハック”されて栄枯盛衰を味わうであろうコーヒー屋やチョコレート屋、私にはそれらを「喫茶店」とは呼べない。少なくとも日本においては、テック企業家らの目に侵されない、スターバックスやブルーボトルへ行ったこともなければ関心もない、そうした各地の無名の数多の「喫茶店」にこそ、その文化の実像がある。自滅はしても“ハック”しないされないのが、「喫茶店」だ。
 
《COFFEE & CHOCOLATE STARTUPS》…スタートアップとは、狙った対象に短期間で急成長を強いて(場合によっては売り飛ばしたり潰したりして)一攫千金を得ようと弄する人の集合体である。そこには、何をどう間違えたとしても「喫茶店好き。」は含まれない。そんな世迷言をつぶやきながら凄惨な雑誌を閉じると、傍らのコーヒーもすっかり冷めて…
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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