人間だけが有害

ジャンル:ライフ / テーマ:ひとりごと / カテゴリ:あ・論廻 [2014年05月27日 05時30分]
『週刊ビッグコミック スピリッツ』の24号(2014年5月12日発売/小学館)は、究極のコーヒー漫画を狙う(?)「僕はコーヒーがのめない」(福田幸江:作 吉城モカ=霜月かよ子:画 川島良彰:監修)の連載をスタート、だが同時に、至高のグルメ漫画として君臨している(?)「美味しんぼ」(雁屋哲:作 花咲アキラ:画)による前号から続く‘鼻血’騒動の最中であった。
 人間だけが有害 (1)
 
 《『ビッグコミックスピリッツ』は読んでない方には想像もつかないだろうが、実に
  「コア」なマンガ雑誌である(私のところには、名越先生のご厚意で、毎週小学
  館から送られてくる)。読者層がものすごく狭い幅で限定されているのである。
  つまり、一八歳から二四歳くらいまでの就活中、ニート、引きこもりなど、将来
  が決まらないでうじうじしている男性読者をメインターゲットにした雑誌なので
  ある(そんな雑誌があるんですよ。驚くでしょ)。ここまで日本の出版社が「読
  者の差異化」を推し進めていることを私は不明にして最近まで知らなかった。
  ともかく、この読者層の精神的な脆弱性が日本社会の「弱い環」であることは
  間違いない。》
  (内田樹「『スピリッツ』療法」 2005年6月/『街場のマンガ論』/小学館:刊)
 
今でも『週刊ビッグコミック スピリッツ』の読者層が変わらないとすれば、‘鼻血’の表現がWeb上を主に‘炎上’する騒動になったコトも理解できる(賛同や納得をしているワケではない)。そして、双葉町・福島県・大阪市・大阪府・環境省などの行政機関やその関係者が抗議を表したり苦言を呈した相手は、《一八歳から二四歳くらいまでの就活中、ニート、引きこもりなど、将来が決まらないでうじうじしている男性読者をメインターゲットにした雑誌》だというコトになる。こちらには、理解も賛同も納得もできない。むしろ、バカじゃないのか?
 
 《まず原理的なことを確認しておきたい。それは表現そのものに「有害性」という
  ものはないということである。それ自体有害であるような表現というものはこの
  世に存在しない。(略)人間だけが有害であり得る。マンガやアニメや小説が
  自存的に「有害」であるということは(残念ながら)不可能なのである。間違い
  なく、有害性というのは人間を媒介とすることによってしか物質化しない。》
  (内田樹「非実在有害図書について」 2010年4月/『街場のマンガ論』/
   小学館:刊)
 
「美味しんぼ」の‘鼻血’表現は、‘有害’であるのか?…《復興を進める福島県全体にとって許しがたい風評被害を生じさせている》(双葉町の抗議文)のは、漫画を漫画として捉えられない抗議者ら自体である。民意の代弁かのようにしたり顔で‘言葉狩り’や‘描写狩り’をする人間こそが、《有害であり得る》のである。仮に、真っ当な根拠と判断があって漫画「美味しんぼ」を有害とするのであれば、行政機関は「有害図書」に指定をすればよい。市民の中で精神的にも物理的にも堪えきれない痛みを味わったとする者たちは、徹底した「不買運動」を起こせばよい。但し、他人に訊かれ煽られた結果として「不快感」を表明するような連中に、「美味しんぼ」や『スピリッツ』や小学館を裁く謂れなどは全くないのである。
 人間だけが有害 (2)
《精神的な脆弱性が日本社会の「弱い環」である》…原因がハッキリしていても、放射線は目に視えない。原因がハッキリしなくても、鼻血は目に視える。思考がハッキリしなければ、くだらない騒動は繰り返されるだろう。思考がハッキリしていても、復興は目に視えにくい…なぜならば、自存的に「人間だけがバカ」であり、そして、「人間だけが有害」だからである。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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