本を正す

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2014 [2014年04月05日 01時00分]
「銀ブラ」とは、何か?…A:東京の銀座通りをぶらぶら散歩すること。(『大辞泉』/小学館) B:“銀座でブラジルコーヒーを飲む”の意。(『美味しい珈琲バイブル』/成美堂出版)…で、「銀ブラの語源はBではない、Aである」とギャンギャン喚き立てる‘怒りのコーヒー本’登場。
 本を正す (1)
 
『「銀ブラ」の語源を正す カフエーパウリスタと「銀ブラ」』
(星田宏司・岡本秀徳:著/いなほ書房:刊)
 
『「銀ブラ」の語源を正す』は、“銀座でブラジルコーヒーを飲む”説(B)を《まったくデタラメな珍説、いやデッチ上げ説》(「まえがき」p.3)と誹る星田宏司、その俗説の横行(?)を《社会病理現象ともいうべき異様な事態》(「あとがき」p.198)と厭う岡本秀徳、両氏によるコーヒー本である。その中身は、検証の精度や論拠の確度よりも、《歴史を捏造することは許されない》(本誌カバー帯状のコピー)という‘怒り’が特徴である。当初は「チョット間違えてるんじゃないか。私はこう思うなぁ」という程度の私見が、ちっとも周囲へ浸透せずに無視され続ける(と唱える側が感受する)と、やがて次第に「チクショー、何でわからないんだ」と声高な罵詈を連呼して、終いには「オマエらは大バカだ」と周囲に対する憎悪の連鎖から自ら逃れられなくなっていく。こうした経過は、コーヒーの世界でも独自の焙煎論や抽出論を唱える者などにも多く見受けられるが、本書『「銀ブラ」の語源を正す』もこの例に漏れない。孤立感や疎外感による‘怒り’が論証と称される執着と拘泥を深めていくのであり、こうしたコーヒー研究者が陥りがちな《病理現象ともいうべき異様な事態》を明瞭に示している典型が本書である。
 
 本を正す (2)
「銀ブラ」とは、何か?…本書『「銀ブラ」の語源を正す』の星田宏司氏(第一部担当)は章題でも《第三章 「銀ブラ」の語源は「銀座をぶらつくこと」である》と掲げているが、他方で《毎日ブラブラしているプランタンの連中を銀ブラと呼び…》(p.18)、《ぶらとは遊民、地廻りのことで、『銀座のぶら』とは、そういうてあいのことを言ったことばだった》(p.19)(以上:松山省三説)を論証で引用している。また、共著者の岡本秀徳氏(第二部担当)は《第二章 「銀ブラ」語源異聞録》の中で、《『銀ブラ』という語は、銀座のブラ、すなわち、銀座の地廻り、銀座のゴロツキといった意味だったのが、転換して、銀座をブラブラするやから、と言った意味になったのだ》(p.150)、《ブラは多分、ブライカンのブラかと思う》(p.152)(以上:池田弥三郎説)を掲げている。つまり、星田・岡本の両氏とも、B説どころかA説でもない、C:銀座の無頼漢(ブライカン/ごろつき・ならず者)という説を、「銀ブラ」の古い時代の由来として示している。これでは、《「銀ブラ」の語源は、「銀座のカフエーパウリスタでブラジルコーヒーを飲むこと」ではない》(第一部第一章)というB説の否定には首肯できるとしても、だから「東京の銀座通りをぶらぶら散歩すること」というA説が「銀ブラ」の‘語源’である、という断定もできない。B説の流布や徘徊を憎むあまりに「B説の否定=A説の肯定」と短絡させて読み取らせて、本当の‘語源’がA説なのかC説なのかを論究しえない本書は「銀ブラ」の‘語源’を‘正す’などと仰仰しく題するに値しない。『「銀ブラ」の語源を正す』の本(もと)を正すべきところだ。…そろそろ私も、「チョット間違えてるんじゃないか。私はこう思うなぁ」という程度の私見が、「オマエらは大バカだ」とギャンギャン喚き立てる無粋に陥りそうなので、この辺で終えよう。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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