デミタス カオス

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2014 [2014年03月16日 01時00分]
「デミタス」(demi‐tasse)の世界は、調和がとれて秩序だっている「コスモス」(kosmos)か?
 《「失礼ながら一言……ドゥミタスはエスプレッソとはちがいます。できますれ
  ば三〇分くらい時間をかけて飲んでいただきたい。温度変化による味わ
  いのちがいを楽しんでもらいたいもので……」 エスプレッソを飲むみたい
  に、二口、三口で飲み干そうとしたら、カウンターの向こうから、やや時代
  がかった台詞でやんわりたしなめられた。》 (嶋中労:著『コーヒーに憑か
  れた男たち』/中央公論新社:刊)
少なくとも、コーヒーに憑かれた連中が語る「デミタス」は、社会に不調和で疲れそうな感じ…そんな頭のオカシイ連中の話より、美術館にでも行って「デミタス」の世界を探った方がマシ。
 デミタスカオス (1) デミタスカオス (2)
 
「デミタス コスモス 宝石のきらめき★カップ&ソーサー」 岐阜県現代陶芸美術館
 
 デミタスカオス (3)
東京在住の鈴木康裕・登美子夫妻が40年にわたって収集した18世紀から20世紀前期のデミタスのカップ&ソーサー約300点が、マイセン、セーヴル、ロイヤルウースター、ロイヤルクラウンダービー、ミントン、コールポート、コープランド、ロイヤルドルトン、ウェッジウッド、KPMベルリン、ニュンフェンブルク、ローゼンタール、ロイヤルコペンハーゲンなど窯や工房の別で展示されている。陶磁史としてどうのこうの言うよりも、コレクション自慢として立派だ。必ず夫妻2人で相談して購入してきたというデミタスのカップ&ソーサーは、好んで集めたという気軽さがかえって燦燦とした‘きらめき’を呼んでいるのだろう。肩肘張らずに、好ましい。
 
 デミタスカオス (4)
鈴木康裕氏が‘お気に入り’というKPMベルリンの上絵金彩花文(172)やカールスィーム工房上絵金彩リスト図(205)、登美子夫人が‘お気に入り’というウィーンの上絵金彩菫のリース図(223)なども美しいが、エルバート・H・ゲイリー(USスティール取締役会長:「安全第一」の生みの親)の注文品であるロイヤルクラウンダービーの上絵金彩果実飾り文(97)も好い。また、セーヴルの上絵金彩花のガーランド図透彫(31)は、『珈琲交響楽 5』(味の素ゼネラルフーヅ:刊)に載っている「コーヒーカップのコレクター」ルタレックさんの同型よりも尚一層美しい、見事。だが、展覧会全体を通じては、解説がありきたりの名窯紹介に留まっていて、テーマが「デミタス」であることに焦点を当てては踏み込めていないことが、いま一つ惜しい。
 デミタスカオス (5)
 
 《デミタスの起源について、「1806年にナポレオンがイギリス製品をボイコッ
  トする大陸封鎖令を発したことから、ヨーロッパ諸国で砂糖やコーヒー豆
  が極端に不足した。このことがきっかけでチコリコーヒー(チコリや穀物を
  焙煎した、カフェインを含まないコーヒー風味の飲み物)などの多くの代
  用品が生まれることになる。こうしたなか、ローマのカフェ・グレコの3代目
  オーナー、サルヴィオーニは、苦肉の策としてそれまで出していたコーヒー
  の量を3分の2にして、価格を下げることで当座をしのいだ。」とする説も
  ある。前段については周知事項であるが、後段部分は、今回出所を特定
  することができなかった。よって、このことのみでデミタスの起源とすること
  は早計と考え、本稿では参照していない。》 (立花昭「デミタスの登場と展
  開について」 註3/『デミタス コスモス 宝石のきらめき★カップ&ソー
  サー展覧会図録』)
 デミタスカオス (6)
立花氏(岐阜県現代陶芸美術館学芸員)の判断は適確であるが、強いて言えば《前段については周知事項》とする中身にも、「コーヒーの代用品となる以前からチコリや穀物は飲用摂取されていた。むしろコーヒーはチコリ飲料の代替として拡散した可能性すらある」という課題が残っているのであって、やはり大陸封鎖令云々をデミタスの起源とすることは早計? 「デミタス」の世界は、調和がとれて秩序だっている「コスモス」か?…否、「デミタス」の世界は、無秩序で雑然たる「カオス」(chaos)である。‘混沌’だから面白い、「デミタス カオス」だ。
 
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コメント

No title
URL [2014年03月16日 09時42分]

はるかぜ風デミタスクリーン

No title
シマナカロウ URL [2014年03月16日 12時54分]

帰山人様
〝頭のオカシイ連中〟はよかったな。
たしかに、あの連中は〝くるくるぱー〟だ。
それにしても40年にもわたり、よくもまあ、
あの連中と倦かずにつき合ってきたもんだよ。
こっちだって危うく〝ぱー〟になっちまうところだ。
くるくるぱーの卸元でもある閣下も他人事じゃない。
それ以上〝ぱー〟が進行しないように気をつけてね。

to:風さん
帰山人 URL [2014年03月16日 17時53分]

ん?春風亭小杯とでも…

to:シマナカロウさん
帰山人 URL [2014年03月16日 18時24分]

ロウ師、〝ぱー〟と〝天災〟は紙一重と言いますから避けるに避けれません。今後も倦かずにお付き合いください。但し、私の〝ぱー〟は‘per-spect’のパーですから心配するに及びません。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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