面白南極女料理人

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2014年03月02日 23時30分]
映画の惹句《その一皿がフランスを変えた。》とは、何を意味するのか? 確かにユネスコの無形文化遺産へ登録するほど、「フランスの美食術」(the Gastronomic Meal of the French)は‘遺産’と化して向後が見えない。またも、フランスの料理映画を観よう。
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『大統領の料理人』(Les saveurs du Palais) 観賞後記
 
その女料理人がパリで活躍したのは過去のこと…話の舞台が『バベットの晩餐会』ではユトランドにあったのに対して、『大統領の料理人』ではフランス領南方・南極地域にあるクローゼー諸島のポセッション島アルフレッド・フォール基地において話が語られている。‘サントノレ55番地’(大統領官邸エリゼ宮)での昔日は、主人公オルタンス・ラボリにとって厭わしくも忘れ難い過去なのである…ん? 『大統領の料理人』は「面白南極料理人」! 《『南極料理人の悪ガキ読本』(亜璃西社)を読むと、西村少年にはお婆ちゃん子だった影響が色濃いことが分かる。見るもの、聞くもの、作るもの。ある時期まではすべて、お婆ちゃんを通しての日々を送っていたようだ。》(高尾友行「解説」/西村淳『面白南極料理人 笑う食卓』/新潮社)…基地を去るオルタンスは、‘最後の晩餐’を「サントノレ おばあちゃんのクリーム」で締める。それは、郷愁を伝統へ、鬱積を文化へ、すり替えて生き残ろうとする‘フランス料理’そのものを象徴している。料理人の倦厭と煩悶を示す作品。
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『大統領の料理人』が描いたオルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ:演)対パスカル・ルピク(ブライス・フルニエ:演)という「専属女料理人対主厨房料理長」抗争は、実際にはダニエル・デルプシュ対ジョエル・ノルマンの確執であった。デルプシュの悵恨は深くも長い。
 
 《…週に2~3回はカトリーヌから報告の連絡が入りました。実は、若鶏のファル
  シが出てくるシーンで、こんなこともありました。制作サイドは二人のMOF(フラ
  ンスの国家最優秀職人賞)の称号を持つシェフを雇い、料理を再現させたん
  ですが、カトリーヌが言うには、立派なブレス産の若鶏がフォアグラやフライド
  パセリで豪華に美しく盛られ、三ツ星レストラン風になっていたそうです。私と
  一緒にこの料理を作ったことがある彼女は、“全然違う。ダニエルが見たら怒
  るわよ”“勝手なことをするなら私はもうやらない”と言ったとか。そこで、美術
  チームが、私のアドバイスを求めに来たんです。映画では、私のレシピ通りに
  なっていますよ。 (略)MOFのシェフが、私のように田舎で料理人をしている女
  性の意見を採り入れなければならなかったことは愉快でしたね(笑) (略)今で
  はずいぶん進歩し、多くの女性が厨房に入っていますが、私が若かった頃は、
  厨房は男性社会でした。その仕返しに30年かかりましたが、この映画ができ
  たことで溜飲が下がった気がします。》 (「食通たちを魅了するダニエル・デル
  プシュにインタビュー!」/『ELLE à table』Webサイト/2013年8月5日)
 
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‘二人のMOFの称号を持つシェフ’であるジェラール・ベッソンとギー・ルゲがデルプシュの憂さ晴らしで八つ当たりを受けてしまったことは、愉快でもあり不快でもある。今ひとつ解せないことは、映画の中で大統領のエドワール・ニニョン『フランス料理讃歌』(1933年)‘推し’にオルタンスが意気投合していること。ココは、「いいえ、マダム・サンタンジュの『料理の本』(Le Livre de cuisine:1927年)と『おいしい料理』(La bonne cuisine:1929年)でしょう、大統領!」と斬り返して欲しかった。田舎のおばあちゃんの家庭料理…《その一皿がフランスを変えた。》のか否かは判ぜないが、『大統領の料理人』は南極料理人となったおばあちゃんが怨毒をじっくりと煮込んだ料理映画である、ココが面白い。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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