進撃の虚人

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2014 [2014年01月12日 01時00分]
コンビニエンスストアがすべてを支配する世界。コンビニの餌と化した日本人はコーヒーで壁を築き、鬱屈した店員からコーヒーを手渡される不自由と引き換えに侵略を防いでいた。だが、壁をも越える超大型コンビニ‘セブン-イレブン’の襲来により、日本のコーヒー店の‘家畜の安寧’も‘虚偽の繁栄’も突如として崩れ去ってしまう…。「コンビニコーヒー」進撃。
 
2013年10月31日、実は‘嗤う豚’である調査兵団「日経トレンディ」は「2013年ヒット商品ベスト30」の1位に、正体も香味も不明な奇行種(?)「コンビニコーヒー」を選んでしまう。
  進撃の虚人 (1) 
 《単に「売れた」というだけでは選びません。とくに重視しているのは、消費者の
  ライフスタイルまでを変えるだけの新規性があったかどうか、ということです。
  (略)数年前までコンビニで淹れたてのコーヒーなんか飲めませんでした。20
  12年からコンビニが取り入れ始め、2013年セブン-イレブンが参入して一気
  に消費者に新しいライフスタイルをもたらしました。1~8月の国内のコーヒー
  消費量を前年同期比で6%アップさせるという驚くべき「数字」も出しています。
  業界全体の底上げにまでつながった、という影響力を踏まえての1位です。
  (略)「安くて美味しい」だけではなく「ひとりでも楽しめる」「いつでもどこでも」
  「時短にもつながる」といった個人生活に関わるなんらかの付加価値があるも
  のがヒットしています。》 (渡辺敦美/コンビニコーヒーは、「消費者のライフス
  タイル」を変えるインパクトがあった/日経トレンディネット/2014年1月9日)
 
全て間違い。セブン-イレブンが「コンビニコーヒー」を導入し始めた時期は、1980年代の前半。その後の約30年間に、サイフォン、ドリップ、カートリッジと方式を変えながら進撃と撤退を繰り返した。2012年を《コンビニコーヒー戦争元年》としたのは、「日経トレンディ」(2012年5月号「コンビニコーヒー大戦争」)自身である。だが、その「コンビニコーヒー」、「2013年ヒット予測ランキング」(2012年11月1日発表)では名も出されず、「2013年上半期ヒット商品ベスト30」(2013年6月3日発表)では7位とされ、「2013年ヒット商品ベスト30」で突如1位とされた。‘屍踏み越えて進む意思’を‘嗤う豚’は虚言を吐きまくる。「セブンカフェ」の販売数が5千万杯を突破し、年間販売目標を4億5千万杯に上方修正され(2013年5月24日発表)、1億杯(同年7月18日発表)、2億杯(同年9月末推定)、3億杯(同年12月12日発表)と販売数を伸長…日本マクドナルド「マックカフェ」の3億杯を抜いて、日本最大のレギュラーコーヒーカップ売りチェーンとなった…つまり、《単に「売れた」というだけ》なのである。《「ひとりでも楽しめる」「いつでもどこでも」「時短にもつながる」といった個人生活に関わるなんらかの付加価値》で、《「消費者のライフスタイル」を変えるインパクト》は、コンビニエンスストア自体に備わる《新規性》(?)であって、「コンビニコーヒー」は、《単に「売れた」というだけ》なのである。‘地に墜ちた鳥は風を待ち侘びる’…
 
  進撃の虚人 (2)
 《ファッション性とライフスタイルの変化から、スターバックスなどセルフ式カフェ
  が支持された時期を“第一波”、マクドナルドなどファストフード店が本格コー
  ヒーに参入し始めた時期を“第二波”、そして今年1月、コンビニ最大手のセブ
  ン-イレブンが対面式コーヒーに本格参入したいまの状況を、業界では“第三
  波”と呼ぶ。》 (最大手セブン-イレブン参入でコンビニ「コーヒー戦争」過熱/
  『ZAITEN』2013年5月号/財界展望新社)
 
どこの業界のどのような輩が呼ぶというのか?…「コンビニコーヒー」は、“サードウェイブ”なのであろうか? ここでも‘屍踏み越えて進む意思’を‘嗤う豚’は虚言を吐きまくっている。「セブンカフェ」の《新規性》は、三井物産・丸紅・AGF味の素ゼネラルフーズ・UCC上島珈琲・富士電機・小久保製氷冷蔵・東罐興業・佐藤可士和らを結集したことでもなければ、香味の良し悪しでもなければ、1杯100円という価格でもない。いわゆるフルサービスを厭うたスターバックスコーヒーやマックカフェのセルフ方式を超えて、店員からコーヒーを手渡される《対面式》までも廃したことである。…これはカフェなのか? それとも新種の自動販売機なのであろうか? 手渡されない《新規性》が、“サードウェイブ”なのであろうか?
 
  進撃の虚人 (3)
 《稲本: カフェって本来のイメージでいうと、日常生活に違和感なく溶け込んでる
  業態だったと思うんだけどね。「ご近所カフェ」というか、そう、ローソンとかセブ
  ン-イレブンみたいな感じのね。  柴田: たぶん、「あなたは家からすぐ歩け
  るところに、行きつけのカフェがありますか」と問いかけたら、「NO」っていうの
  がほとんどなんじゃないですか。とするとね、本心では「わざわざカフェ」的な
  空間じゃなくて、「ご近所カフェ」を望んでるんじゃないかな。思うんだけど、フ
  ラッと街に出て、店選びが面倒くさくって、とりあえず行く場所って、あったらい
  いなって、ほんとに。》 (「東京カフェの本当のところ」 柴田廣次×稲本健一/
  『料理百科』 第50号/柴田書店:刊/2001年)
 
そう、コンビニエンスストアがイメージ通りに《日常生活に違和感なく溶け込んでる業態》になったと思うのであれば、《フラッと街に出て、店選びが面倒くさくって、とりあえず行く場所》として、《ローソンとかセブン-イレブンみたいな感じ》のコンビニ自体が「ご近所カフェ」と化したのである。家庭からも仕事からも離れ、店員との交流からも客同士の交流からも離れ、誰とも集わず会話を要さない、干渉の無い孤独が求められた時、新たな「ご近所カフェ」で「コンビニコーヒー」は進撃するのである。それは、客も店員も、気後れも気兼ねも気恥ずかしさも覚えなくて済む「貧者」のコーヒーである。奇行種「コンビニコーヒー」は、「貧者」の虚栄心の壁を崩して、‘家畜の安寧’も‘虚偽の繁栄’も日本のコーヒー店から奪い去った。果たして何らかの‘反撃の嚆矢’はあるか? ‘オレ達の戦いはこれからだ!’と言えるか?
 
コメント (10) /  トラックバック (0)

コメント

No title
シマナカロウ URL [2014年01月14日 09時53分]

帰山人様
ボクもコンビニコーヒーを愛飲(アイーン!)してます。
〝馬馬コーヒー〟もウマいですが、コンビニコーヒーも
なかなかいけます。「貧者の一湯」がたぶん自分に合っているのだと思います。

No title
ナカガワ URL [2014年01月14日 22時14分]

マクドのプレミアムまでは飲みに行ったのですが、セブンまでは行く気になれません。Aコースで個人の箪笥預金を吐き出させ、Cコースは低賃金の労働力の確保かしら。ユニクロのパートから華麗に転身コンビニオーナーに。24時間365日15年間、その地域のサードプレイスに。セブンのオーナーには、「セブン」なみの相当過激なストレス発散が必要そうです。

to:シマナカロウさん
帰山人 URL [2014年01月14日 22時53分]

ロウ師、コンビニコーヒーを飲むのは自由ですが、真珠婚まで迎えた男が「イケる」なんて言ってはいけません。それでは私が珈琲豆を贈っても、‘豚に真珠’というpearl of wisdomの通りになります。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2014年01月14日 23時10分]

セブンの‘ザー’は、コーヒーを売る際に店員をコインの投入口にしてしまいました。ヤプーやムカデ人間よりも醜悪です。セブンの‘ジー’には、それを悲嘆と感ずる時間すら与えられません。だから私も行く気になれないのです。

No title
ナカガワ URL [2014年01月14日 23時27分]

それでも、その仕事を引き受ける人たちが存在するのですね。実はわたしも何回か夜中なら勤められるかな、なんて考えたことがあります。道路工事の警備よりは寒くないかな、なんて時期がありました。15年目に更新するとき、例えば2029年、コンビニに人がいるのかしら。例えば40歳でオーナーになった人は55歳になったとき、何と声をかけられるのでしょう。15年間毎年黒字行進して、そのオーナーは何を夢見て何にお金を使うのでしょう。さらに15年更新したら、2044年70歳----アニンガになっちゃうかしら。アウーアウーアウー

to2:ナカガワさん
帰山人 URL [2014年01月14日 23時52分]

>何を夢見て何にお金を使うのでしょう。
あ、その答えは簡単。実はカミさんが某コンビニへ勤めにいってます。オーナーは疲れ果てていますが、近々もう一つ店舗を出すそうです。アウーアウーアウー

No title
じょにぃ URL [2014年01月15日 11時04分] [編集]

帰山人さん。
先日昼食のラーメン後の匂いを消す為に
サークルKサンクスのコーヒーを買いました。
カップを貰ってマスィーンにおいた瞬間。
前者の残り汁がポタリと落ちました。
カップを交換して貰おうとも思いましたが
もうどうでも良くなりそのまま砂糖ミルクたっぷりで
飲み干しました。
あのポーションに挽きたてお豆ちゃんを入れるなんて無駄な技術を考えるんだったらセブンみたいに豆のままで放置している方がまだ良いのではないかとか考えました。
コンビニのコーヒーも実態ももう少ししたら
日本人の中からコーヒーの『自由』(せかい)を望む≪あの少年≫が現れてくれるのではと勝手にエレーン(エラい)妄想をしています。
そもそもコンビニはカフェの代わりにはなり得ないとじょにぃは考えています。
しかしながらある意味コンビニとカフェ両極端の選択肢が与えられた今、日本人の感覚の質にかかっているようにも思います。

to:じょにぃさん
帰山人 URL [2014年01月15日 13時26分]

コーヒーを飲む場は全て‘カフェ’といえるのか?コーヒーが存続する社会は‘カフェ’の機能が前提なのか?果たして、《オレ達は皆、生まれた時から自由だ…どれだけ世界が恐ろしくても関係無い どれだけ世界が残酷でも関係無い》《いいから黙って全部オレに投資しろ!!》とカフェのオーナーは言えるのか?

缶コーヒーよりはいいんですよ、たぶん
kurorisu URL [2014年01月28日 15時15分] [編集]

はじめまして。
うちの職場は1Fにセブンレブンがありまして、非常に繁盛しているようです。
私は外出した夜中にコーヒーが飲みたい時に飲みます。

女性で、同性から見たら絶対にイケてないのに男性からはモテる人みたいに、対象者が必要としているところに上手い具合に入り込んでいけるのが、コンビニコーヒーなのかなと思います。

to:kurorisuさん
帰山人 URL [2014年01月28日 23時20分]

ようこそ。あぁ確かに‘上手い具合’がコンビニの身上なのかもしれませんね。で、姑息な欲をあたかも必要と思わせるところがコンビニの怖いところなんですよ、たぶん。100円コーヒーの欲…オソロシイ…

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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