重力の使命

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2014年01月04日 00時30分]
地球の上空600キロメートル、温度は摂氏125度からマイナス100度の間で変動する、音を伝えるものは何も無(ね)ェ、気圧も無ェ、 酸素も無ェ、生命は存続でき無ェ…おらこんな宇宙いやだ、地球へ帰るだ…事態の‘gravity’(重大さ)自体が映画の重力か?
 重力の使命 (1)
 
『ゼロ・グラビティ』(Gravity) 観賞後記
 
 重力の使命 (2)
[あらすじ] 飛来した宇宙ゴミによってスペースシャトルが破壊され、被災した医療系技師の女性が、ISS(国際宇宙ステーション)、宇宙船ソユーズ、天宮(中国宇宙ステーション)と飛び渡り、宇宙船神舟で大気圏へ突入して湖に着水後、泳いで陸に上がり、生還した。
 
 重力の使命 (3)
本作の主演者サンドラ・ブロック(ライアン・ストーン:役)に、宇宙服のストリップティーズで『バーバレラ』(1968年)のジェーン・フォンダと、下着で戦って『エイリアン』(1979年)のシガニー・ウィーバーと、体を丸め浮かんで『2001年宇宙の旅』(1968年)のスターチャイルドと、類似性を指摘する感想が多いようだ。だが、私は『ゼロ・グラビティ』を観ながら、何故か『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』(1980年)を思い出す。ここが‘gravity’…
 
 《それは、ある時は近親の死に出発し、ある時はせまり来る自身のそれを目前
  に、興味と恐怖を同時におぼえながらも、しかしエロスとは逆の方向にのみ徹
  底的にたけり狂う、“怪物”的に偉大なドラマでさえあった。(略)父の死に出発
  した、自らの同様な“死”ある未来への恐怖感が、無意識に彼を過去の方向に
  誘うのは、これは当然すぎるほど当然で、そういう結果、人は当人の意識とは
  裏腹に、むしろ死へと接近する。タナトス的な衝動とは、つまりそういう事なの
  である。(略)だから、『アルタード・ステーツ』に関しては、こう言う事も出来る。
  これは、単純きわまりないエロス型の“SF映画の時代”に再び突入してしまっ
  た事に対する、ケン・ラッセルらしいSF的な反論である……。》 (石上三登志
  「アルタード・ステーツ──ケン・ラッセルの反SF」/『奇想天外』1981年5月
  号/『SF映画の冒険』 新潮文庫 1986年 に収載)
 
映画『ゼロ・グラビティ』は、娘の死に出発し、せまり来る自身のそれを目前に、恐怖をおぼえながらも、しかしタナトスとは逆の方向にのみ徹底的にたけり狂う、‘常人’的に偉大なドラマであった。そういう結果、観客は当人の意識とは裏腹に、むしろ‘生’へと接近する。視角的なメタファーによるエロス的な衝動とは、つまりそういう事なのである。本作は、‘死’への欲動(トーデストリーブ)で構成された『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』の対極に位置する作品であり、‘生’への欲動(レーベンストリーブ)のみで構成されている。『ゼロ・グラビティ』は、エロス型の“SF映画の時代”へ再突入を渇求する話なのである。現実世界が‘死’に接近している…事態の‘gravity’(重大さ)自体が映画の重力なのだ。
 
 重力の使命 (4)
2011年にCCAJ賞とヴェルジ賞をダブル受賞した田口護に先んじて、2009年にアカデミー主演女優賞(『しあわせの隠れ場所』)とゴールデンラズベリー最低主演女優賞(『ウルトラ I LOVE YOU!』)をダブル受賞したサンドラ・ブロック、『ゼロ・グラビティ』の主演は、アンジェリーナ・ジョリーでもマリオン・コティヤールでもスカーレット・ヨハンソンでもブレイク・ライヴリーでもナタリー・ポートマンでもなくなって、‘隣のオバさん’サンディーで好かったのである。助演はジョージ・クルーニーだが、ロバート・ダウニー・Jrでも、なんならジョニー・デップでも好かった(?)ほどに、『ゼロ・グラビティ』はサンドラ・ブロックのプロモーションビデオなのである…姿態の‘gravity’(重大さ)自体が映画の重力なのだ。
 
 重力の使命 (5)
『ゼロ・グラビティ』はSF映画の良作であったが、重力の井戸の底に囚われている人類に相応しいのは、派生映画である『アニンガ』(Aningaaq)の方だろう。 ここが‘gravity’…
 
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コメント

No title
ナカガワ URL [2014年01月06日 00時50分]

アニンガ観ました。全く知りませんでした。グリーンランドでロケしたんでしょうか。こういうのは誰の発想なんでしょう、監督?プロデューサー?どう広まっていくと仮定して出費したのかしら。
「アルタードステーツ」!!ですか。思いもつきませんでした。こちらはせいぜい「カプリコン1」が「ダイハード」に進化したくらいしか思いつきませんでした。3Dメガネかけて最前列で観ていたら頭がクラクラしてきました。
ちなみに、ソユーズが着水した場所はどこですか。淡水の熱帯?

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2014年01月06日 02時05分]

アニンガは監督の息子が撮ったらしい。まぁバイラルマーケティングはリドリー・スコット「プロメテウス」あたりに倣ったんじゃないかな?
(ソユーズじゃなくて神舟ね)町山智浩によればイカルス号も着水したパウエル湖だそうですよ、つまり着いたのは「猿の惑星」だったワケ(笑)

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
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