オメデタイ和食

ジャンル:グルメ / テーマ:日本料理・寿し・割烹料理 / カテゴリ:食の記 [2014年01月03日 00時30分]
「和食;日本人の伝統的な食文化-正月を例として-」(Washoku, traditional dietary cultures of the Japanese, notably for the celebration of New Year)が、「トルココーヒーの文化と伝統」などと共に、Intangible Cultural Heritage(無形文化遺産)の代表一覧表に記載されることが、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の政府間委員会で2013年12月4日に決定された。まったくもって‘オメデタイ’話である。
 オメデタイ和食 (1)
 
無形文化遺産に登録された「和食;日本人の伝統的な食文化-正月を例として-」は、「日本食文化の世界無形遺産登録に向けた検討会」(農林水産省主催:4回/2011年7月~11月)の3回目に、「会席料理を中心とした伝統をもつ特色ある独特の日本料理」 という名称で検討されていた。これは、当初より料亭「菊乃井」の村田吉弘氏が理事長であるNPO法人日本料理アカデミーが提唱する‘日本料理=会席料理’という概念に沿う内容で進められていたからである。だが、先行して手本としていた「韓国の宮中料理」が登録見送りとなる予見と発表されるや、4回目の検討会では一転して「会席料理を中心とした…」という名称に懸念が示され、とにかく審査が通りやすい題名へ変えるべきとの大合唱になった。ここに、‘和食’(WASHOKU)なる語が突如として浮上したのである。このように、無形文化遺産に登録された‘日本人の伝統的な食文化’とする「和食」とは、2011年11月、唐突に‘偽装’された概念であった。じぇじぇじぇ! ‘オメデタイ’話である。
 オメデタイ和食 (2)
その後、文化審議会「無形文化遺産保護条約に関する特別委員会」(文化庁主催:3回/2012年1月~2月)で、候補名を「和食;日本人の伝統的な食文化」(WASHOKU;Traditional Dietary Cultures of the Japanes)と決し、2012年3月9日に無形文化遺産保護条約関係省庁連絡会議で代表一覧表の記載に向けて提案することを決定した。それでも、‘自然の尊重’を掲げて「和食」を‘社会的慣習’として理解させることには難渋し、結局はより具体的な例示である‘-正月を例として-’(notably for the celebration of New Year)が名称に加えられて、ようやく審議が通った。なのに何故だろう、(外務省以外の)関係省庁や同意団体は、‘-正月を例として-’の部分の表記を省いて、「和食」の語ばかりを喧伝している。まったくもって‘オメデタイ’話である。
 
 オメデタイ和食 (3)
辻調理師専門学校校長で辻調グループ会長の辻芳樹氏は、委員を務めた「日本食文化の世界無形遺産登録に向けた検討会」を計4回中に2回欠席し1回遅刻しているものの、一週間のフランス現地調査へ他委員を引き連れ、無形文化遺産登録の準備に尽力した。
 
 《本書執筆中の2013年10月現在、世界的な和食の広がりとは別に、日本国
  内では和食文化の「ユネスコ無形文化遺産」登録が大きな話題になっている。
  (略)ところが、その盛り上がりの中で、私たち日本人が知らなければならない
  ことがある。和食はいったいどこに向かおうとしているのか。》 (辻芳樹 『和食
  の知られざる世界』 新潮新書550/新潮社:刊/2013年12月)
 
岩村暢子氏は、第2回辻静雄食文化賞(2011)受賞作品の一つ前に、『普通の家族がいちばん怖い』(新潮社:刊)を著した。本の副題は、「徹底調査!破滅する日本の食卓」(2007年)を文庫化で「崩壊するお正月、暴走するクリスマス」(2010年)へ変えられた。
  
 《先の食材偽装問題が「洋風化」「簡便化」の末に、家庭料理が素材から遠ざ
  かったことを背景に噴出した事件と言えるなら、「和食」の無形文化遺産登録
  は「簡便化」に出遅れて消え始めた和食文化を再び日常に取り戻そうとする、
  ギリギリの動きとも言えよう。文化遺産登録と偽装問題がどちらも同じ2013
  年の日本に起きているのは偶然とは思えないのである。》 (岩村暢子「日常
  から遠ざかる和食 無形文化遺産登録と食材偽装」/2013年11月26日
  『朝日新聞』)
 
さて、《私たち日本人が知らなければならないこと》は、《「和食」の無形文化遺産登録》が《食材偽装問題》に相反する事象などではなくて、まったい同じ根から伸びたものである、ということだろう。これらは‘富士山’の世界文化遺産登録や‘東京オンリンピック’の招致決定に沸き踊る愚蒙と同様、《破滅する日本》の顕現という点でも、《同じ2013年の日本に起きているのは偶然とは思えない》話なのである。まったくもって‘オメデタイ’話である。
  オメデタイ和食 (4)
年明けて今2014年の《崩壊するお正月》に‘-正月を例として-’、《日常から遠ざかる》「和食」が《いったいどこに向かおうとしているのか》を考えてみたが、そもそも荒唐にして‘無稽’の遺産を名乗らせる食文化に先行きは見えない。正月早早‘オメデタイ’話である。
 
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コメント

No title
しらちゃん URL [2014年01月03日 00時53分] [編集]

会席料理云々の話は貴殿のこのblogで初めて知りました。なにこれ、自然遺産がだめだから文化遺産とかで攻めた富士山と同じじゃん。登録すべきものがあるのか、登録したい事情があるのか、不思議な話です。

私は「和食」なんて統一概念はないと思っています。雑煮だって地域によって作り方は全然違う。山間部と海辺の食事は元々違っていた(同質化したのは冷蔵庫や交通網の発達したここ数十年のことでしょう)。私の故郷の信州は、海がなくて魚が捕れないから、動物性タンパクを得るためにイナゴやハチの子を食べていました(私はいまでも食べている、笑)。これも和食として登録してほしいな。昆虫食は世界遺産だよ!!!

to:しらちゃん
帰山人 URL [2014年01月03日 01時29分]

どうしても「登録したい事情」があったのだヨ。無形文化遺産は基準見直しが決まっていて特に食関連分野が厳しくなる、だから登録しておくならギリギリ「今でしょ」って事情。で、「登録すべきもの」なんて何でもよかったワケ、‘フジヤマ・ゲイシャ’の食バージョンなら何でもネ。増税、招致、秘密保護…日本の国政のやり口は皆同じなのサ。
「和食」ってのは「洋食」のレトロニムとして成立したわけで、‘伝統的な食文化’でも何でも無いんだけどナァ…

No title
ナカガワ URL [2014年01月12日 03時05分]

結局、登録されたのは「和食;日本人の伝統的な食文化-正月を例として-」なのですか。「和食」なのですか。それとも「和食;日本人の伝統的な食文化」ですか。それとも「日本人の伝統的な食文化」ですか。新聞などには「正月を例として」がないようですが、要は「おせち料理」が登録された、ということなのですか。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2014年01月13日 19時57分]

「和食;日本人の伝統的な食文化-正月を例として-」以外に正解はありません。「おせち料理」じゃなくて「おせちがらい料理」だと思います。

No title
ナカガワ URL [2014年01月14日 22時28分]

『和食の知られざる世界』には、《いったいどこに向かおうとしているのか》きちっと読み応えのある結論が書いてあるのですか。

to2:ナカガワさん
帰山人 URL [2014年01月14日 23時39分]

《日本人が武道としての柔道をあれこれ議論しているスキに、いつのまにか…柔道は西欧世界が中心になってしまっている。和食もそうなる可能性がある》ので、‘ギミック和食’や‘ハイブリッド和食’を超えた‘プログレッシブ和食’で異文化に勝負を挑むべき…という話です。仮に私がブラッシュストロークで食事した後に飲みたくなるのは、お茶なのかコーヒーなのか…いや、何も喫したくないんじゃないのか…結論なんて書いてあるワケありません。おそらく遠からず閉店するでしょうし…

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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