殺す前に相手をよく観る

ジャンル:学問・文化・芸術 / テーマ:art・芸術・美術 / カテゴリ:観の記:美面 [2013年12月13日 01時30分]
「ハイレッド・センター」結成50周年に催されている特別展、会場である名古屋市美術館のある白川公園に注意書きの看板が濫立する…これも美術に対する‘復讐の形態学’か? 穢らわしい! 殺したい! だが、誰を? 何を? 判然としないまま、‘殺す前に相手をよく観る’
 殺す前に観る (1) 殺す前に観る (2) 殺す前に観る (3)
 
ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展 (名古屋市美術館)
 
 《後方を振り返ってもしょうがない。ひたすら前方へ、前方へ。そうやって芸術に
  も前衛芸術というものがあったのである。私自身、前衛芸術青年だったからよ
  く知っている。(略)そもそも前衛芸術とは何かというと、芸術という言葉で代表
  される美の思想や観念といったものを、ダイレクトに日常感覚につなげようと
  する営みである。(略)…人間の日常の行為、日常の振舞いそのものを芸術
  の概念に接続しようという、そのおこないが後にハプニングと名付けられた。
  椅子から落ちる。道路に寝そべる。物を落す。道路を清掃する。(略)芸術の
  概念を、日常の感覚につなげようとする前衛芸術は、そうやって日常への接
  着を繰り返すうちに、日常に接近しすぎて、接着というよりもその中にはいり
  込み、日常の無数のミクロの隙間から消えていった。そうやって前衛芸術は
  消えたのである。》 (赤瀬川原平 『千利休 無言の前衛』 岩波書店:刊)
 殺す前に観る (4)
‘紐’の高松次郎と‘千円札’と‘梱包’の赤瀬川原平と‘洗濯バサミ’の中西夏之の3人は、1963年に、よく見もしないで「読売アンパン」を殺して、「ハイレッド・センター」を結成した。そこらあたりの陰謀とか攪拌とか称される「直接行動」を、残存した作品やら資料やら写真やらで示した今般の特別展は、美術展でも回顧展でも無い、悪趣味で不愉快なものだ。
 
 《当時の熱気を帯びた記録写真の数々をみて、本来ならポータブルで、使用可
  能、人々の行為を誘発するものであったはずのオブジェは、いま美術館の中
  でいかに生気を奪われ陳列されているかを、あらためて思い知らされた。》
  (能勢陽子“学芸員レポート ハイレッド・センター──「直接行動」の軌跡”/
   Webサイト『アートスケープ』)
 殺す前に観る (5)
消失したハズの前衛芸術の死骸をただ陳列して‘軌跡’とは、なんと能が無い企画だろう。刷毛もペンキも持っていなかったので、展覧会看板の横に「死す」と書き加えられず残念。腹立ちまぎれに会場の階段を力の限り踏み鳴らして上り、鞄を投げ落とす…だが、虚しい。
 
赤瀬川原平の作品‘宇宙の缶詰’は、‘梱包’から出てきたのか、本当はコーヒーからか?
 
 《ぼくのコーヒーの飲み方は運ばれてきたコーヒーにまず砂糖を少し入れ、ス
  プーンでゆっくりとかき回す。それからスプーンをそっと抜き取り、ミルクをコー
  ヒーカップの淵から、 「スロン」と入れる。(略)「スロン」と入れたミルクは、コー
  ヒーの表面をゆっくりと渦を巻いて、星雲状になる。天文に興味を持ちはじ
  めていたぼくは、コーヒーの表面にアンドロメダのような渦巻き星雲ができて
  いく成り行きを、じっと見つめた。星雲はコーヒーの表面をするする回って、
  やがて回転がゆっくりになり、静かに止まる。》
  (赤瀬川原平「コーヒーがゆっくりと近づいてくる。」/全日本コーヒー協会
   『Coffee Break』(コーヒーブレイク)vol.75/2013年5月31日)
 殺す前に観る (6)
「ハイレッド・センター」にとって宇宙は巨大だったのかもしれないが、そこから半世紀を経る間に宇宙は収縮に転じて‘コーヒーカップの星雲’ほどに矮小なものになってしまった…美術缶の外は穢らわしい! 缶の内も殺したい! ‘殺す前に相手をよく観る’…また観よう。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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