ポアオーバーなコーヒー

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2013 [2013年11月09日 23時00分]
休日の昼下がり、3杯目のコーヒーを喫しながら買い置いてある雑誌のページをまた捲る。『Discover Japan(ディスカバー・ジャパン)』2013年12月号 Vol.31(枻〈えい〉出版社:刊)だ。「コーヒーとお茶。」特集の惹句は「話題のサードウェーブ・コーヒーは日本からはじまった」…サードウェイブは日本で発祥?…私の胸中で途方もない違和感が膨らんでくる。
 ポアオーバー (1)
 
《サードウェーブの火付け役》で《大の親日家で喫茶店をこよなく愛する》と本誌で紹介されているブルーボトルコーヒー創業者のジェームス・フリーマン(James Freeman)氏へのインタビュー記事や彼のコメントを読んでも釈然としない。この違和感の根はいったい何?
 
 《「マスターは両方を見比べて最終的に奥のカップを温めて、懇親のコーヒーを
  注ぎ入れてくれました。その演出は言葉にならないほど完璧で、コーヒーの温
  度も味もすべてが最高だった」 日本文化は細部までに行き届いた演出と情熱
  とが魅力だという。》(p.21)
 《ジェームス・フリーマンが日本製のコーヒー道具を採用するのはやはり「味」と
  「演出」に決め手があったようだ。(略)またジェームスは「演出」の重要性につ
  いて自身の体験を話す。 (略)日本のコーヒー文化に大きくインスパイアされ
  たジェームスは顧客へ提供するコーヒー時間の「演出」に強い情熱を欠かさな
  い。》(p.22)
 《「なにに対しても、均等にきづかう、スキのないおもてなし」》(茶亭羽當につい
  て:p.33)
 《「エイジド・デミタスをいつも飲むよ まるでショーのような演出だよ」》(カフェ・ド・
  ランブルについて:p.38)
 《「手仕事の中で作られる ミステリアスなコーヒー」》(大坊珈琲店について:p.42)
 
日本のコーヒー店の渾身の仕事ぶりを見て(懇親?の)「演出」つまりはパフォーマンスやショウと捉えている…来日したハリウッド映画の俳優やミュージシャンの燥ぐ態で吐く妄言と何ら変わらない。取材を受けたジェームス・フリーマン氏か、それを文に仕立てた茶太郎豆央(松村太郎・河邉未央)氏か、いずれかあるいは双方共が、日本の喫茶店の文化的特性を「演出」としか感じられないらしい。この軽佻な感性と蒙昧な知性で、「話題のサードウェーブ・コーヒーは日本からはじまった」などと誤りを‘宣う’ことは、行き過ぎた煽り文句を超えて、日本のコーヒー文化に対する面汚しでしかない。直ちに撤回させるべきである。
 ポアオーバー (2)
 
《サードウェーブの名づけ親》と本誌で紹介されたトリッシュ・ロスギブ(Trish Rothgeb/Skeie)氏へのインタビュー記事の脇には、「サードウェーブまでの流れ」が誤って示される。
 
 《セカンドウェーブ(1960年代~2000年頃) コーヒーの味にフォーカスが当た
  り、エスプレッソが広まった。特にシアトル系カフェとしてスターバックスが代表
  格。 (略)サードウェーブ(2000年以降) それまでの波の大量生産・大量消
  費に対するオルタナティブとして発展中。(略)》(p.24)
 
セカンドウェイブこそが、《それまでの波の大量生産・大量消費に対するオルタナティブとして》1960年代に始まったのである。トリッシュ・ロスギブ氏が《新しいコーヒーの概念をアメリカスペシャルティコーヒー協会へむけ2002年の年末にひとつの記事を寄稿した》(p.24)際にも、スターバックスを‘an example of a hyper-Second Wave company.’(‘Norway and Coffee’/ “Newsletter of the Roasters Guild” 2003年春号)と称している通りに、シアトル系カフェの巨大チェーン化はセカンドウェイブ後期にみられる変質後の姿であり、‘波’の本質では無い。本誌はトリッシュ・ロスギブ氏のサードウェイブ提唱の《アイデアの元は女性解放運動で第一波、第二波、第三波があります》(同p)と明かしている。この閑話として、私がUSAのコーヒー史をフェミニズムの‘波’で喩えるならば、本来のセカンドウェイブに対する「バックラッシュ(Backlash)」こそがスターバックスなどのシアトル系カフェの巨大チェーン化である、と捉えたい。それこそが、フェミニズムと同様にコーヒーにおいても、サードウェイブが未だ曖昧糢糊とした定義し難い概念でしかないこと、その理由となる。社会的背景を顧みない「サードウェーブまでの流れ」は、賤陋でしかない。
 ポアオーバー (3)
 
それにつけても、論や動向としての「サードウェイブ」は肯定も否定も自由であろうが、旧来‘Pour-Over’と称して実態は‘Poor-Over’(?)としか思えないプアオーバー()を、本誌では《ドリップではなく、ポア・オーバー!(略)ドリップではなくポア・オーバーと頼むのが正解》(p.24)としている。プアではなくてポアならば‘Poor-Over’とは言えないが、では、『Discover Japan(ディスカバー・ジャパン)』の「コーヒーとお茶。」特集は‘Phowa-Over’として、ポア(pho ba)して現世から消し去るべきであろうか?…誤った特集はもう懲りた…そんな世迷言をつぶやきながら醜悪な雑誌を閉じると、傍らのコーヒーもすっかり冷めて…
 
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コメント

未だによくわからない・・
珈琲国王 URL [2013年11月10日 21時02分]

どうもです!
最近よくお邪魔してすみません。

よくセカンドウェーブとかサードウェーブとか聞きますが、どれがどの時期のどんな波を示しているのか正直さっぱりわからず・・こちらの記事を読んでなんとなくわかったような気がしました。

どれかのウェーブがエスプレッソブームなのはわかるのですが・・実家は小さい頃からずっとカリタのドリップだったので、それ以外の淹れ方ってあるの?って二十歳過ぎるまで気がつきませんでした(正直カリタのドリップがインスタントコーヒーという代物だとおもっていたので)

最近海外でもドリップなどが脚光を浴び始めているとか真偽がよくわからない情報もありますが、特にはやらなくてもいいような気がするんですけどね・・お店で安く飲める国なら、一瞬で出せるエスプレッソでいいと思いますし、そもそもこってりが好きな国でドリップコーヒーが長期的にウケるとは思えないような・・。

to:珈琲国王さん
帰山人 URL [2013年11月10日 22時58分]

エスプレッソブーム(正確には、エスプレッソマシンが置いてあるシアトル系カフェのコーヒー牛乳飲料ブーム)は、「セカンドウェイブの後期」あるいは「セカンドウェイブに対するバックラッシュ」に位置づけられる、と思っています。
私の捉えるウェイブ論では、エスプレッソvs.ドリップ(とかフレンチプレスとかエアロプレスとか)という抽出方法が‘波’の本質を示すものとは思っていません。ドリップ(という抽出方法)が脚光を浴びているんじゃなくて、抽出に使用する「器具」と「演出」がウケているんですから…そういう無調法は捨て置けばよいのです。

No title
じょにぃ URL [2013年11月12日 10時44分] [編集]

帰山人さん。

この雑誌、昨日ラジオで紹介して知って買いました。
ラジオの中で『サードウェイブは日本で発祥』
と声高々に説明していたので運転しながら???でした。

ついでに茶太郎豆央さんの本
サードウェーブコーヒー読本が出ていたので買ったら
写真がほぼ同じで使い回し?と思いました。
読む気も失せてぱーっと流してしまいました。

珈琲からお茶への流れ
日経おとなのOFFと内容は違えど同じです。
これも使い回し?みんな足並み揃えるんだなぁと感じます。

でもやっと本・BSから
地上波に情報が出てきたかなぁと感じます。
正しく伝えてくれるかは別問題ですが。

KONOではなくハリオが海外に受け入れられたのは
単に企業規模と価格なんだろうなぁと
勝手に分析しています。

批評の鋭さ・適格さには帰山人さんに到底はかないませんので
じょにぃは企業・社会の裏・思惑等を
ネガティブ全開で生々しい所を分析しています(笑)

to:じょにぃさん
帰山人 URL [2013年11月12日 21時17分]

演出バカ連中にV60がウケた要因は‘スパイラルリブ’の意匠でしょうナ。
映画公開が近づい「た中、ヨシ労」せずしてネタにしよう、って足並揃えでしょ…「コーヒーから茶(あるいは酒?)」という流れは、意外と海外にも聞こえはイイ…コレを「珈琲利休流(こーひーりきゅーる)」という…(しまった、ネタをこのコメントで使ってしまった!:笑)

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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