アンタこそ大バカだ!

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2013 [2013年09月09日 01時00分]
世界最大の食品飲料会社ネスレの日本法人社長を務める高岡浩三は、スターバックス
などカフェチェーンの侵攻やコンビニエンスストアのコーヒーショップ化に対抗するために
コーヒーショップ事業を打ち出す。提携した喫茶店やカフェに「カフェ ネスカフェ」の看板
を掲げさせ、1台100万円超の専用コーヒーマシンを無償で貸し出すのである。高岡は
「5年のうちには1000店舗くらいを目標にしていきたい」と息巻く。マシンに使う‘インスタ
ントコーヒー’の名を捨ててイメージをすり変える…‘やられたら、やり返す!倍返しだ!’
 アンタこそ大バカ (1)
 
 ネスレ日本「インスタント」の呼称やめる 「ネスカフェ」刷新
 《ネスレ日本は28日、インスタントコーヒー「ネスカフェ」を9月1日から全面刷新すると
  発表した。加工したコーヒー豆の細かい粉末を混ぜることで香りを強くした。刷新に
  合わせ、1960年以降53年間続いた「インスタントコーヒー」の呼称はやめて「レギュ
  ラーソリュブルコーヒー」として売り出す。(略)高岡浩三社長は会見で「技術革新が
  進み、もはやインスタントコーヒーではない」と話した。》
  (日本経済新聞/2013年8月28日)
 
 アンタこそ大バカ (3)
「さよなら、インスタント。」会見をした高岡浩三に新たな試練がのしかかる。‘レギュラー
ソリュブルコーヒー’という呼称に対して、馴染めない、‘レギュラーコーヒー’と混同する、
‘きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ’並みに発音し難い、という非難の
声が上がった。だが、ネスレ日本の‘挽き豆包み製法’は従前の‘インスタントコーヒー’
を名乗れないという事情があって‘レギュラーソリュブルコーヒー’を生み出したのである。
すでに「香味焙煎」シリーズを‘レギュラーソリュブルコーヒー’として3年も先行販売して
いる。さらには、スペシャルゲストの市川猿之助に《革新は叩かれる。でも孤立無援の中、
勇気を持って進んでいけば、しばらくしてから評価される。》、と高岡は言わせた。消費者
に受け入れさせて無理にでも定着を狙い非難を排す…‘土下座して詫びてもらいます!’
 
 《突然、インスタント・コーヒーなるものが売り出されたのである。ただ、湯を注ぐだけで
  コーヒーができあがる魔法のような粉末に、私は飛びついた。飛びついて、すぐにト
  リコになってしまった。(略)ラジオから流れる音楽を聴きながら、コーヒーの香りと味
  を楽しむ……。そんな夢のような時間を苦もなく現実にしたインスタント・コーヒーを
  “偉大”といわずして、何と形容すればよいのか。そのころの私は、大真面目にそう
  思い、仕送りの金が届くと、必ずイの一番に「ネスカフェ」を一瓶買いに走ったことを
  覚えている。》 (清水哲男「インスタントのことなど」/『日本の名随筆 別巻3 珈琲』
   /作品社:刊/1991年)
 
 《香り深いコーヒーが湧き立つテーブル……。その一杯があるだけで、なんとなく文化
  の匂いが感じられる食卓に変化したのではないだろうか。同時に、三時のお茶の時
  間もコーヒーブレイクに取って代わられた。そう、確かにインスタント・コーヒーには文
  化の匂いがあったのだ。(略)コーヒー専門店のレギュラー・コーヒーが脚光を浴びて
  いるのも、実はインスタント・コーヒーがその火点け役だったことは言を俟たないだろ
  う。日本人の舌と咽喉を苦いコーヒーに慣れさせてくれたのがインスタント・コーヒー
  だったのである。》 (都地政治「コーヒー人気の功労者 あなどれないインスタント・
  コーヒー」/『別冊サライ』No.13 大特集「珈琲」/小学館:刊/2000年)
 
 アンタこそ大バカ (2) アンタこそ大バカ (4)
物語は鳥目散帰山人の反撃に移る。…ネスレ日本は忘れたのか?日本でインスタント
コーヒーの輸入が完全自由化された1961年7月の直後、同年9月に《会員の有機的な
結合によりインスタントコーヒー業界の健全な る向上発展》をはかる目的で「日本インス
タントコーヒー協会」が設立されて以来、その事務所がネスレ日本(現:東京コマーシャル
オフィス)内に置かれていることを。「もはやインスタントコーヒーではない」と言い放った
高岡浩三は、「日本インスタントコーヒー協会」を「日本ソリュブルコーヒー協会」に改称さ
せる覚悟があるのだろうか。…ネスレ日本は忘れたのか?‘レギュラー’が先にあって、
‘インスタント’が後にできたのではない、‘レギュラー’コーヒーは‘インスタント’コーヒー
のレトロニム(retronym)として生まれた呼称であることを。 「さよなら、インスタント。」
を掲げた高岡浩三は、‘レギュラーソリュブルコーヒー’という呼称の本質的な矛盾を解く
見識があるのだろうか。…ネスレ日本は忘れたのか?‘挽き豆包み製法’を先行で嘯い
た品「ネスカフェ 香味焙煎」が、日本珈琲狂会アウォード2010において「ヴェルジ賞」を
授けられたことを。因循姑息とされた製法を《技術革新》と偽った高岡浩三には、刷新や
革新を説く道理があるのだろうか。…ネスレ日本は忘れたのか?日本におけるインスタ
ントコーヒーは、その呼称も含めて《偉大》な《文化の匂い》を放ち続けてきた、その中心
には常に「ネスカフェ」があったことを。自らが生み出した‘文化’を打ち棄てる非道の改
称‘レギュラーソリュブルコーヒー’に自省もせず羞愧もしない…‘アンタこそ大バカだ!’
 
コメント (6) /  トラックバック (0)

コメント

No title
樋口精一 URL [2013年09月09日 12時00分]

気持がいい文章ですね。帝飲食料新聞に投稿されてはどうですか。

to:樋口精一さん
帰山人 URL [2013年09月09日 16時08分]

お褒めはありがたいです。でも毎号のようにネスレの広報記事載せてる帝飲はマズイでしょう(笑)ヘタすりゃ「10倍返しだ!」をやられる…ま、痛くも痒くも無いけど(笑)

No title
じょにぃ URL [2013年09月09日 21時23分] [編集]

帰山人さん。

じょにぃも気を付けて
ブーメランが来ないように
日々精進したいと思います。(笑)

それにしても
帝飲食糧新聞なんて初めて聞いたのもさることながら
それをさらっと内情を入れて返す帰山人さんがすごいです。
毎回帰山人さんの情報量のすごさに感心させられます。

もしかして珈琲業界では知ってて当たり前ですか?(^^;)

to:じょにぃさん
帰山人 URL [2013年09月09日 23時52分]

じょにぃさん、帝飲を知っていて当然か否か、近頃では難しいところです。一昔前、昭和期には(読んでいる読んでいないは別としても知っていて)‘当たり前’という状況だったと思います。それは、珈琲屋や喫茶店を営むならば喫茶業組合や商工組合に加盟するのは当然だった、という状況に似たところがあります。「(業界のジジイ共が牛耳る)組合?何ソレ?入らないと珈琲屋やれないの?」と訝しむ平成カフェ世代(?)の方々には、業界組合と同様に業界新聞も不要に思えるでしょう。まぁ、業界新聞は昭和の遺物でしょうなぁ…つまり私も樋口さんも昭和の遺物なんです(笑)

ご無沙汰しております
山神親父 URL [2013年09月11日 12時28分]

こんにちは、お久しぶりです。
お変わりなくあちこちを走られているようで、
素晴らしいですね。

そうこうしている内に、あっという間に来月は
また斑尾ですね。
今年もエントリーされてますか?
我が家では、さすがに颯人は出場叶わず(^_^;)、
代わりに中2の次男が初出場です。
そして私は、5年目にして初の50kmにチャレンジです!

ちなみに颯人は、斑尾の翌日から味スタで国体3000mに出場します。
応援よろしくお願いします。

to:山神親父さん
帰山人 URL [2013年09月11日 23時34分]

どうも。今年は山神‘弟’登場ですかっ!私は親父様にロングのコースガイドをしてあげたくても走力が違いすぎるので悪しからず^^;
颯人クンの予選&決勝が斑尾翌日&翌々日とは…こりゃ4日間お祭りですナ。では、斑尾前夜祭でお会いしましょう^^/

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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