謎解きはサロンのあとで 後篇

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2013 [2013年08月25日 05時00分]
泊まった樋口精一・美枝子(珈琲工房ひぐち)邸にて起床後、持参のマンデリンを淹れ…え? ホセ(川島良彰氏)も樋口夫妻も飲みたい? 奇特だ(笑)。ホセは散歩に、私は散走に、途中で合流して‘コーヒーハンターvs.珈琲狂のコーヒー談歩’、これまた奇特(笑)。催事会場の中部学院大学(各務原キャンパス)へ移動してもコーヒー談議は延延と続く…晩夏恒例のコーヒー催事、今般は第34回コーヒーサロン「コーヒーで世界は変えられる」、果たしてコーヒーで世界は変えられるのか?……謎解きはサロンのあとにいたしましょう。
 謎解きはサロンのあとで (1)
 
2013年8月21日
「第34回コーヒーサロン コーヒーで世界は変えられる」
 
 謎解きはサロンのあとで (8)
第22回第29回に続き、東京大学東洋文化研究所池本研究室主催「コーヒーサロン」の特別出張講座の扱い、実質は樋口精一氏が主導する催事の仕立ては連年通りだが、今般は企画段階から意見具申し開催広報を買って出た私…深煎り、いや深入り過ぎ? したがい‘帰山人による恐怖の質疑応答’(?)はナシ、提灯持ちは黙って聴講する(笑)。
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講演1:「グローバル経済とコーヒー:解説」 池本幸生氏
突飛な問いかけ‘犬は笑うか?’ ⇒ 体性感覚‘ペンフィールドのホムンクルス’ ⇒ 表情を読み取る‘共感’ ⇒ 社会疫学‘リチャード・ウィルキンソンの『格差社会の衝撃』’ ⇒ グローバルな世界の生産者と消費者の断絶 ⇒ 「コーヒーで世界を変えた人」‘ムルタトゥーリの『マックス・ハーフェラール』’ ⇒ ‘アマルティア・センの『正義のアイデア』’ ⇒ 何が起こっているのかを知る・認証制度・コーヒーサロン…という強引で見事な面白い話。
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講演2:「なぜ“サステイナブルコーヒー”なのか」 樋口美枝子氏
「珈琲工房ひぐち」が、サスティナブルコーヒーを知り、CBD/COP10や川島良彰氏に触れ、SusCAJやユニーと共に認証コーヒーの概念と販売の普及に取り組んできた報告。樋口美枝子マネージャの登壇デビューは堂堂たる話っぷり(てか、ダンナより上手い?)。
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講演3:「コーヒーで世界は変えられる」 川島良彰氏
エルサルバドル ⇒ ジャマイカ ⇒ ハワイ ⇒ スマトラ ⇒ マダガスカル ⇒ レユニオン ⇒ 他の生産国(エチオピア・タンザニア・ケニア・イエメン) ⇒ コーヒー産業の実状(負のイメージ/麻薬:ゴールデントライアングル/貧困:ルワンダ/障害:フェダール農園&匠カフェ)…という著書『私はコーヒーで世界を変えることにした。』に沿った内容と最新事情で、私には新味薄いがホセの生噺しという価値は聴者に充分と思えた。ハワイ在任当時にフォーシーズンズホテルへ行ったらバンドマンと間違えられて裏から入れと言われた、スマトラ在任当時にベースキャンプへ帰ってきたら賄いのオバチャンがトイレ用の溜め水で野菜を洗っていた、イエメンであまりに寒いのでターバンを巻いてそのままロンドンへ飛んだらヒースロー空港で捕まった…この手の話はナマで観て聴くべき演芸なのである。
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質疑応答
事前&会場クエスチョネアによる講演者の応答。ESDユネスコ世界会議、日本国内のコーヒー栽培、支援の価格付加(寄付金の是非)など、一部はホセの話が浸透した前提での質疑が現れた、参加者の進化? この先にやっと、「変えられる」か討議の道がある。
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その後、実質はコーヒーサロン打ち上げの‘コーヒーアミーゴス中部’発足記念な懇親会が‘ぶるうすかい’(各務原市産業文化センター8階)で催され参加。何故だか会の後半、初対面の挨拶やら焙煎の解説やらを私に求める参加者が多数…危うく飯を食い損ねるところだ(笑)。皆とコーヒー談議を続けながら、散会。コーヒーに浸った30時間であった。さて、「コーヒーで世界は変えられる」か?…この謎解きをサロンの後で私は考えてみた。
 
 《コーヒーの原産地であるエチオピアに「屠殺されたコーヒー」という名のコー
  ヒー儀式が伝えられている。皮の付いたまま乾燥させたコーヒー豆の先端
  を、まるで動物の首を切り落とすように喰いちぎり、深鍋で炒め、ミルクとバ
  ターを加えて煮立て、でき上がると長老が料理と同席者に祝福を与え、数
  滴を大地に垂らして祈りを献げる。(略)「屠殺されたコーヒー」という名は
  残忍である。その残忍さは十分に感じられなければならない。その意味は
  深いのである。「殺す」という行為は残忍である。そもそも人は殺さずに生
  きていけるのだろうか。 (略)人はいろいろなことを知ることができる。ホモ・
  サピエンスなのだ。しかしこのサピエンスの語源的意味は人が「食物の味
  を知る」である。味を知り、違いが分かるという満足感は人間の基本的な
  満足感に属しているに違いない。しかしこの種の違いの分かる人々が、エ
  チオピアやケニアのコーヒーの原産地の人々が伝統として知っていた「殺
  し」の意識を知っているかどうかは心許ない。どこからともなくやって来て目
  の前に存在するこれこれのコーヒー豆がどこの土地でどれだけの大地を
  殺し、どれだけの水を殺したか。 (略)コーヒーには単に自然の苦みばかり
  ではなく、社会や歴史の苦みも溶け込んでいる。それがいい。大人が生き
  ていく上で必要な認識など、苦しみからしか生まれてこないのである。コー
  ヒーはイスラムの起源の昔から「認識の水」であり、人々が集って「醒めた
  知性の飲み物」を飲むカフェはいつでも負性を帯びた情報の集まる場であ
  った。しかしコーヒーやカフェが少なからず社会に貢献して来たとすれば、
  それは負性の情報に対処する知性をかろうじて発揮させて来たからであ
  る。》 (臼井隆一郎「世界の動きとコーヒー豆」/陶磁郎編集部『珈琲の本
  焙煎を味わう』/双葉社:刊/1998年)
 
ブンナ・カル(Bunna Qalu/Buna Qalla)という「屠殺されたコーヒー」が、姿と場を変え、世界中に伝播されていった都度に、コーヒーは消費地としてのイスラム社会を変え、ヨーロッパ社会を変え、アメリカ社会を変え、今やアジア社会を変えつつある。また、コーヒーの‘殺し’の‘負性’は、南アジア・東南アジア・カリブ海・中南米・アフリカの共同体を解体し、民族固有の文化と言語を破壊し、コーヒー生産地と称する土地へと変貌させてきた。つまりは、過去から現在に至るまで、確かにも‘コーヒーで世界は変えられた’のである。であるならば、現在から未来に至っても、十分に‘コーヒーで世界は変えられる’であろう。但し、例えば、コーヒーのテイスティング(カッピング)をする際、《味を知り、違いが分かるという満足感》のみに浸るのであれば、世界を変えるべきコーヒーは必ず滅びるであろう。例えば、コーヒーに《何が起こっているのかを知る》際に、《目の前に存在するこれこれのコーヒー豆がどこの土地でどれだけの大地を殺し、どれだけの水を殺したか》を読み取らなければ、人人はコーヒーも世界も滅ぼしてしまうだろう。「コーヒーで世界は変えられる」…それはコーヒーの‘殺し’の‘負性’から決して目を逸らさないサスティナビリティによる。
 
 
【追記:2013年8月25日】
今般のコーヒーサロン会場で初めて遇ったコーヒーアミーゴス(?)の中に、ひときわ畏敬すべき女性がいた。ホセの友人で、ホセに薦められた石脇智広氏の著書を読んでいる、と(サロン会場で石脇氏とも顔合わせしていた)。コーヒーは今ほとんど飲まないが、その香りを楽しんでいて、家族向けに自宅の一隅でカフェを開いている、と。珈琲工房ひぐち(アピタ各務原店)の豆買い常連で、ブレンド品の名称はもちろん、スペシャルティコーヒーの農園名をスラスラと挙げる、畏れるべきコーヒーアミーガである。今後は、コーヒー毎の香りに合う菓子を研究したい、とも。その名は‘優依ちゃん’、歳は10か11か。…今般の催事で最強の参加者、‘優依ちゃん’ならば「コーヒーで世界を変えられる」かもしれない。
 
コメント (2) /  トラックバック (0)

コメント

No title
ナカガワ URL [2013年08月27日 00時52分]

いつもくだらない基礎的質問すいません。このブログの原稿執筆は、直接投稿ですか?PCのソフトで下書き推敲後投稿ですか?

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2013年08月27日 01時32分]

え?スラスラ直接に書き綴って投稿なんてワケないじゃありませんか…PCのメモ帳に書いては消し、読んで書き直し、遅筆の悪文…それでやっとこの程度です。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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