パシフィック・ムリ

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2013年08月15日 01時30分]
「あのゴジラが最後の一匹とは思えない。もし、水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類が、また世界のどこかに現れてくるかもしれない」(by山根恭平)……そして、その同類は現れた。本多猪四郎の死後20年が過ぎ、レイ・ハリーハウゼンが5月7日に死んで95日後、2013年8月10日に、その‘Kaiju’(怪獣)は太平洋から現れてきた……
  パシフィック・ムリ (1)
 
『パシフィック・リム』(Pacific Rim) 観賞後記
 
  パシフィック・ムリ (2)
映画『風立ちぬ』で宮崎駿(監督)が嘘臭くも「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」いたが、映画『パシフィック・リム』では、ギレルモ・デル・トロ(監督)がクレジットのエンディングにて「レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」としていた、嘘臭くない献辞で感涙にむせぶ。『パシフィック・リム』に登場する人型巨大兵器イェーガーは、神経‘プラグスーツ’を着たパイロットと‘シンクロ’し(エヴァンゲリオン)、‘バロムクロス’したパイロット2人で1体が制御され(バロム・1)、パイロットの動作がそのまま反映され(ジャンボーグA)、操縦ポッドは頭部に‘パイルダーオン’されて‘ロケットパンチ’を繰り出す(マジンガーZ)のである。自称‘オタクガイジンで’他称‘オレたちのトトロ’のデル・トロ曰く、「尊敬して止まない日本のマンガ、ロボット、怪獣映画の伝統を尊重することを心がけました…ドウモ、アリガトウ」(日本限定版予告編の監督コメント)…「こちらこそ」と応じて、それ以上でもそれ以下でも無い「おバカ」なイェーガー、じゃなかった、「おバカ」なエイガ、それが『パシフィック・リム』。
 
  パシフィック・ムリ (3)
本作では‘Kaiju’(怪獣)たちが大暴れするが、人間も負けていない。第3世代イェーガーのジプシー・デンジャーに搭乗する森マコ(菊地凛子)の幼少期を演じた芦田愛菜が最凶。過去にロボット‘HIYOBO’と共演していた実績があるとはいえ、芦田愛菜のワザとらしいクソ演技には思わず吐き気を催す。また、芦田愛菜が菊地凛子に育つ世界ならば、鈴木福が長ずるに及んで柴咲コウになってもおかしく無い…オカシイだろ! デル・トロ大失策。
 
  パシフィック・ムリ (4)
本作は『パシフィック・リム』であり、「アトランティック・リム」では無い…何故か? 憶測するに、『パシフィック・リム』は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のプロパガンダ作品だ。「皆でTPPに入って香港のよーな貧富ゴチャマゼの国際都市群になろうゼ、イェー」がぁ、このUSA映画の本音ではないだろうか? まぁ、‘パシフィック・リム’(環太平洋地域)で群れていても、コヨーテ・タンゴ(日本)はとっくの昔に敗けて、チェルノ・アルファ(ロシア)とクリムゾン・タイフーン(中国)は早早に潰れ、ストライカー・エウレカ(オーストラリア)は生意気を懲らしめられて主導権を奪われて、ジプシー・デンジャー(USA)が英雄である筋書きでしかないのだけれど。日本人はジプシー・デンジャーに載せてもらえるけれども、載った途端に弱弱しく女女しい従属、それが森マコの役回り。「上手いなぁ、イェー」がぁ?
 
  パシフィック・ムリ (5)
『パシフィック・リム』は‘男の映画’である。内田樹が、《アメリカの男はアメリカの女が嫌いである。私の知る限り、男性が女性をこれほど嫌っている性文化は地上に存在しない。》(内田樹:著『映画の構造分析 ハリウッド映画で学べる現代思想』晶文社:刊/2003年)と言うので、本作は‘男の映画’である。町山智浩が、《男の夢ですよ。本当に。モデルとかと結婚するよりも、はっきり言ってこっちの方が男の夢です!はい。》(町山智浩:談/『たまむすび』TBSラジオ/2013年7月16日)と言うので、本作は‘男の映画’である。だが、パイロットたちはイェーガーを‘She’と女性代名詞で呼び、そのイェーガーは巨大な船を振り回して‘Kaiju’(怪獣)を殴りつけ、その怪獣は妊娠していて子を産み、その子怪獣に飲み込まれた闇商人は腹を切り裂いて復活し…そもそも、その怪獣たちは太平洋の海底に開いた異次元トンネルを通って襲来する…《フロイトを読んだ方はすぐにお分かりになると思いますが、トンネルは夢においては「女性性器」の象徴だからです。「女性の性器は、空な腔洞があってなにものかを容れることができるという性質を備えたすべての対象によって象徴的に表現されます。すなわち、〈凹み〉〈溝〉〈洞穴〉〈管〉〈瓶〉〈箱〉〈トランク〉〈筒〉〈荷箱〉〈ポケット〉などによってです。〈船〉もこの系列に入ります。」》(内田樹/前掲書)…巨大ロボットと怪獣、その双方を女性として愛し、また嫌悪する『パシフィック・リム』。
 
  パシフィック・ムリ (6)
本作がミソジニー(misogyny:女性嫌悪)に満ちている証拠として、森マコ役の菊地凛子の実年齢(映画公開時)は三十路(みそじ)に2歳を加えた32歳(ミソジニー)なのである。『パシフィック・リム』は最後に原子力で〈トンネル〉を破壊する、だから《あのゴジラの同類が、また世界のどこかに現れてくるかもしれない》…‘pacific’(平和の)無理が示される。
 
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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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