十年一昔 其の1

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2013 [2013年07月26日 01時00分]
日本における‘スペシャルティコーヒー’の輓近10年、それは十年一昔か? あるいは、十年一日の如しか? はたまた、十年一剣を磨いたか? スペシャルティの得体は何か?
 
  十年一昔1 (1)
2003年11月に発売された赤いジャケットのコーヒー本『珈琲の楽しみ方BOOK』は、店頭・Webを問わず常に人気を博してきた。このロングタームセラー本は、「日本スペシャルティコーヒー協会」(SCAJ)現会長である田口護氏が監修したカンガルー文庫(成美堂出版:刊)である。『珈琲の楽しみ方BOOK』では(僅かに‘インドネシア・スマトラ・ゴールデン・マンデリン’を‘スペシャリティ珈琲としてのブランド名’と紹介していることを除いて)‘スペシャルティコーヒー’に触れられていない。同年同月に発売された『田口護の珈琲大全』(田口護:著/NHK出版:刊)には巻末近くに「日本におけるスペシャルティコーヒーの展望」が付され、直後の「珈琲用語解説」でも項目が存在する。
 《スペシャルティコーヒー   現在のところ、厳密な定義がなく、その基準は各
  国のスペシャルティコーヒー協会に準じている。大まかにいうと、「際立つ風味
  と印象度のすばらしさで評価される高品質コーヒーのことで、かつてグルメコー
  ヒー、プレミアムコーヒーと称されていた高品質コーヒーもスペシャルティコー
  ヒーの概念の中に包摂されつつある。》(『田口護の珈琲大全』p.156)
「日本スペシャルティコーヒー協会」が設立された2003年の‘スペシャルティコーヒー’は、定めきれない語義だけが紹介されて、掴みどころが全く無い朧げな存在であった。
 
  十年一昔1 (2)
今2013年6月に発売された青いジャケットのコーヒー本『美味しい珈琲バイブル』は、「日本スペシャルティコーヒー協会」現会長である田口護氏が監修したカンガルー文庫(成美堂出版:刊)の新刊である。10年前の赤い文庫本が「豆の選び方・挽き方、ブレンドの仕方がわかる」を掲げていたのに対して、今般の青い文庫本は「プロの淹れ方、スペシャルティコーヒーの知識を凝縮」がショルダーコピーに掲げられている。相応した‘スペシャルティコーヒー’の時代が到来した、ということか? 『美味しい珈琲バイブル』の巻末「コーヒー用語事典」には、‘スペシャルティコーヒー’の項目が登場し説かれる。
 《スペシャルティコーヒー   栽培履歴を明確にし、産地ならではの風味や特徴
  を備えた高品質のコーヒー。ただし、世界共通の厳密な定義は無いのが現状。
  消費国と生産国の多くに協会がある。》(『美味しい珈琲バイブル』p.172)
未だに厳密な定義が無いこと、‘十年一日’である。しかし、変化も見られる。例えば、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)による階層の区分(いわゆる‘コーヒーピラミッド’)が掲載され(p.84)、かつては《スペシャルティコーヒーの概念の中に包摂されつつ》あったハズの‘プレミアムコーヒー’がスペシャルティの下位概念に貶められていること、‘十年一昔’である。10年前の『田口護の珈琲大全』の中で「日本におけるスペシャルティコーヒーの展望」が語った‘スペシャルティコーヒー’の概念は異なる。
 《「スペシャルティコーヒーとコモディティコーヒーは決して対立する概念ではない。
  コモディティコーヒーをさらに精製し、立派なコーヒーを出そうとしているなら、
  これはもうまぎれもないスペシャルティコーヒー運動の一つです」 米国クヌッ
  センコーヒーのエルナ・クヌッセン女史がスペシャルティコーヒーの概念を提唱
  してからおよそ30年。また、米国SCAAの設立に遅れること20年。今、ようや
  く日本における高品質コーヒー時代の幕が開こうとしている。》(『田口護の珈
  琲大全』p.154)
さらに10年を経た《日本における高品質コーヒー時代》(?)は、SCAA主導の階層格差による狭隘で拙陋なる概念が蔓延っている。それでも喜ばしいことには、新刊の『美味しい珈琲バイブル』の総体は、正当なる‘スペシャルティコーヒー’を追っている。
 
日本における‘スペシャルティコーヒー’の輓近10年、十年一昔でもあり、十年一日でもあり…十年一剣を磨いた、とまでは言えないか? スペシャルティの得体は知れない。
 
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コメント

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シマナカロウ URL [2013年07月26日 13時58分]

帰山人閣下
たしかに得体は知れないわな。ボクにもようわからん。しかし田口御大は〝おスペ〟を高く評価しておる。でもねえ、飲んでみると、その違いがよく分からないんだ、正直なところ。ボクが筋金入りの〝喉めくら〟だからかねェ。そんなご大層なものより、ボクには閣下オリジナルのブレンド(ニカラグア2:グアテマラ1:スマトラ1)のほうがよっぽど旨いな。またください。

to:シマナカロウさん
帰山人 URL [2013年07月26日 22時44分]

ロウ師、‘違いがよくわからない’と言うよりも、‘違いはあっても美味くない’んじゃありませんか?クヌッセンたちが当初に強調していたのも、‘special’とか‘perfect’じゃなくて‘distinct’で‘unique’だったんですから…おスペは「奇天烈珈琲」なんですよ。つまり私の創る珈琲のことでもある。次の奇天烈珈琲、暫くお待ち下さい。

No title
ナカガワ URL [2013年07月26日 23時28分]

21世紀に入って、ほぼ歴史上初めて生産地が自発的に高値で売るために、味香りを意図的に変化させてみよう、と活動し始めた、ことが大切らしいです。だから、スペシャルティコーヒーという現物のコーヒーが存在するのではなく、スペシャルティコーヒー運動が存在するだけ、らしいです。
新世界のワインが発見されたのではなく、評価方法、発見する方法が発明された----そんな感じでしょうか。
もちろんユニークであれば、すべてOKで、それ以前にあった品質管理体系やグレードの考え方が、水準規準の役目を果たさなくなってしまうほどだと「?」です。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2013年07月27日 02時14分]

「運動が存在するだけ」…つまりFTやサスと同じでスペもベクトルを示すものだと…そういう言い逃れっぽいところ自体もベクトルだと…胡散臭いなぁ。
「味香りを意図的に変化させてみよう」…そうなんですか?私ゃてっきり、スペってのは‘ご当地グルメ’と言い方を変えた昔ながらの地場産品だ、と思ってました。むしろ、グランプリ大会を目指す‘B級グルメ’開発だったワケですか…胡散臭いなぁ。

No title
ナカガワ URL [2013年07月27日 13時44分]

うーん、すいません、どこかの政治家の答弁みたいで。パーカー好みが作れるコンサルタントみたいなのもいると思います。
スペシャルティコーヒーという現物があるのでなく、スペシャルティコーヒーを作っている人がいるだけなのです----とこんなんでどうですか。ますます胡散臭いかしら。「ウサン」という狂会好みのフレーバーが際立つかな。

to2:ナカガワさん
帰山人 URL [2013年07月27日 18時34分]

奇天烈珈琲に胡散珈琲…やっと本来のスペシャルティらしくなってきました。作っている人がユニークであれば、尚好いですねえ。国際審査員の人物評価フォームも作ってください。項目にはユーモアとかウィットが必須。

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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