泣けないカレー

ジャンル:映画 / テーマ:映画感想 / カテゴリ:観の記:映面 [2013年07月02日 01時30分]
あれはいつだったか…名古屋から移って東京は伊皿子坂の上とも魚藍坂の上ともいえる地で再開している‘お水はいっさい出しません’のカレー専門店で、私は独り‘泣けるカレー’を食べていた。大型バイクで乗り付けた後客が「落ちてますよ」と私のジャケットを拾い上げた。その客は「昨夜飲み過ぎたのでココのカレーで体調を整えたい」とアッと言う間に2皿平らげ、「お先に」と挨拶して出ていった。ああいうのを‘優男’(やさおとこ)というんだろうなぁ、カレー完食後のアイスクリームを食べながら私は思う。‘優男’は福山雅治だった…実におもしろい。
  泣けないカレー (1)
  
『真夏の方程式』 観賞後記
 
  泣けないカレー (2)
 《原作からさらに濃密になっていると思います。よく味が乗っているといいますか、
  2日目のカレーとでも言いましょうか(笑)、そういうギュギュっとした感じです。
  様々な登場人物がいますが、そういう登場人物が混ざり合っていて、初日の
  カレーでは人参やジャガイモがそれぞれ分離していたものが、2日目になると
  ぎゅーっと凝縮されて味がつながっていくというような、そういった仕上がりに
  なっていると思います。》 (福山雅治:談/レポート:2013年6月23日 ジャパ
  ンプレミア/映画『真夏の方程式』Webサイト
 
でも、ありえないんだよね。同じ『ガリレオ』映画でも、前作『容疑者Xの献身』(2008年)が題名通りに‘献身’の殺人を描いたのと異なり、本作の『真夏の方程式』では‘保身’の殺人だらけ、情動の描写が薄っぺら。それを《ギュギュっとした感じ》とは…聞き捨てならないな。真に《ぎゅーっと凝縮されて味がつながっていく》、アノ‘泣けるカレー’を福山雅治は忘れた?
 
  泣けないカレー (3)
 《この小説の執筆前、私の頭の中には二つの映像がありました。一つは少年と
  湯川学が海でロケットを飛ばすシーンで、もう一つは美しい女性と湯川がダイ
  ビングをしているシーンです。(略)映画では、私が頭で描いた映像が見事に
  再現されています。いえ、私が想像していたものよりも美しいものに仕上がっ
  ているといっていいでしょう。》 (東野圭吾メッセージ:映画『真夏の方程式』に
  ついて/映画『真夏の方程式』Webサイト
 
この映画の観賞後、私の頭の中には二つの映像が残った。一つは少年を湯川学が駅で諭すシーンで、もう一つは美しい海で女性と湯川がダイビングをしているシーンである。湯川は「(子どもを)苦手じゃない、嫌いなんだ」と言っておきながら、殺人の共犯者である小学生の柄崎恭平に罪を明示しないで励ましている。さっぱりわからない。いや、『真夏の方程式』の福山雅治は、実は別作品の登場人物である‘野々宮良多’を演じさせられた、との仮説も立てられるか?「仮説は実証して初めて真実になる」、『そして父になる』(2013年10月公開)で…。そして、玻璃ヶ浦だか堂ヶ島だかで殺人者である川畑成実とダイビングをしていても、今般の湯川は心象の海に深く潜っていない、‘変人’ぶりもロケットのように海へ落ちただけ。慎重に進めなければ、ある人物‘変人ガリレオ’の人生が大きく捻じ曲がる危険性がある…。
 
  泣けないカレー (4)
 《…また、「科学技術と自然の共存」といった今日的なテーマに対して、湯川が自
  らの考えを語る場面が設けられているのも、作品にさらなる深みを与えている。》
  (イントロダクション/映画『真夏の方程式』Webサイト
 
湯川学は、「人間はそういうことを繰り返して文明を発達させてきました。その恩恵はあなたたちも受けてきたはずだ。あとは選択の問題です。」とか、「今の日本にとって資源の問題は避けられない。」とか、映画を社会派っぽくしよう、と胡乱な台詞を吐く。しかし、「天才科学者と天然の共存」といった今般の映画にとって、吉高ウィイ~由里子が演じきれていない岸谷美砂の問題は避けられない。『ガリレオ』シリーズ実写版は、そういう失敗を繰り返して内容を悪化させてきたか?福山雅治は、《…自分たちでいうのもなんですが、泣けるというか多分グッとくる所はいくつかあると思います。》(前出のジャパンプレミアで談)というが、忘れるな、君は独りじゃない、2人でグッとくるが具は溶けきった‘泣けるカレー’を食べたじゃないか…だが、映画『真夏の方程式』は、全く味が乗っていない‘泣けないカレー’だな…実に不味い。
 
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コメント

No title
ナカガワ URL [2013年07月02日 08時27分]

カレー屋で有名人、昔麹町のアジャンタで豪快に食いまくる大林素子を目撃したくらいです。
センセのブログのおかげで、久しぶりに観たり、食べたり、飲んだり、楽しませてもらっています。感謝。

to:ナカガワさん
帰山人 URL [2013年07月02日 19時43分]

‘ガリレイの生涯’はアインシュタインの原爆断罪に倣って2日目のカレーみたいでもイイのかな?じゃ、‘真夏の方程式’も煮込み直して欲しいナ。‘真夏の方程式’公開への誘導は、‘聖女の救済’放映じゃなくて‘ガリレイの生涯’上演だったのかな?文学座が公演する時代ですよ…ボクたちの負けだ。また、川畑親娘みたいな家がやってるカレー食べに行こう、っと。

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鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
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