スターバックス デモニアックス

ジャンル:グルメ / テーマ:コーヒー / カテゴリ:珈琲の記:2013 [2013年05月04日 05時00分]
「スターバックスのすっごい真実、教えます。」は、‘Starbucks Coffee Japan 10th Anniversary Magazine’である『スターバックス大解剖』(エイムック1320/枻出版社/2007年)に掲げられた惹句であるが、その解剖されていない中身に真実は無かった。“Everything but the Coffee:Learning About America from Starbucks”(University of California Press/2009年)こそが、スターバックスを解剖していた。ついに、「スターバックスのすっごい真実、教えます。」を果たす本の日本語訳版が登場!
 デモニアックス (1) デモニアックス (2)
 
『お望みなのは、コーヒーですか? スターバックスからアメリカを知る』
(ブライアン・サイモン:著/宮田伊知郎:訳/岩波書店/2013年)
 
 《本書はスターバックスの時代の批判的検証であり、スターバックスが顧客
  と結んだ約束と現実との乖離を明らかにすることを目指す。(略)…幸せ
  と救済を、買うことで実現しようとする消費者市民の僕ら一人に一人にと
  っても、読後感は陰鬱なはずだ。》(p.17)
 
本書『お望みなのは、コーヒーですか? スターバックスからアメリカを知る』は、題名通りにグローバル企業による戦略を解き明かし、アメリカ合衆国の消費社会の欲望と喪失との実態を浮かび上がらせている。宮田伊知郎氏は、《邦訳の刊行にあたって恐れているのは、この本が「スタバ」批判の根拠として受け取られるのではないかということである。》(p.292)と「訳者あとがき」で述べている。けれども、「本物(リアル)のコーヒー」(第1章)から離れ、「ありきたり(プレディクタブル)でも個性的」(第2章)と嘯き、「サード・プレイスもどき」(第3章)で欺き、「自分へのご褒美で気分直し」(第4章)と誤らせ、「毎日の冒険者のための、ヒア・ミュージック」(第5章)まで嘴を容れ、「そんなにエコではないカップ」(第6章)で汚して、「やましさ抜きのグローバリゼーション」(第7章)に酔っている…それらスターバックスの悪行の数数もまた揺るぎない真実。とうから「スタバ批判」をしていた私は当然の根拠とする。
 
 《…スターバックスのコーヒーの質が一九九〇年代後半から落ちていったと
  いう専門家もいる。(略)パスカの共同経営者は、スターバックスがスペ
  シャルティ・コーヒー市場のなかでは最も安い豆を買い漁っていたことす
  らあるのを覚えていた。》(p.45)
 
 《サンティアゴ・ドルムスは…(略)「スターバックスは協同組合から買い付け
  なんかしていません」。彼は繰り返し言った。「スターバックスは羽振りの
  いい中間業者や大規模・中規模の農場からしか豆を調達しないのです」》
  (p.255)
 
私が独り吠えていたスターバックスの悪行、例えばルワンダコーヒーエチオピアコーヒーに対する貪婪さを明示している著作は稀であり、本書は当に「スターバックスのすっごい真実、教えます。」である。したがい、「罪もあろうが功もある」などと、ややもすれば腰が引けた半端な言説を続けているコーヒー業界の関係者多くは、本書を読んで目を覚ますべき。ハワード・シュルツが買収した(1987年)以降、あるいは近く21世紀に入って以降近年のスターバックスは、コーヒー業界にとっても「過去に功もあろうが、今は罪ばかり」であろう。その証左は、本書発売の約2週間後に放送された「火消し」(?)番組でも露わとなったか。
 
 《人を幸せにする笑顔…まずは笑顔で…常に笑顔で…とにかく笑顔で…み
  んなを笑顔にする…笑顔になってくれる…人を幸せにする笑顔…なんだ
  か店中に笑顔があふれていた》(番組プロローグ) 《…コーヒーのかたわ
  らに笑顔がある…笑顔のかたわらに幸せがある》(番組エピローグ)
  (「仕事ハッケン伝」Season3 #4 IMALU×カフェ店員/NHK/2013年
   4月25日放映)
 
スターバックスが日本へ再進出した(1996年)約5年後に、「世界初のスタバファンブック」を掲げた『スターバックス マニアックス』(小石原はるか:著/小学館:刊/2001年)が刊行された。この本にも、「仕事ハッケン伝」のように著者の体験記「目指せ、バリスタ!」が載っているが、体験記にも全体にも「笑顔」の一言も無い。先述の『スターバックス大解剖』(2007年)が後年に出ると、そこには「いつもの香りといつもの笑顔」などの文言が、僅かに散見される。それが、当節は「笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔」…マクドナルドのスマイル0円よりも貧相で下劣な《コーヒーのかたわらに笑顔がある》? 笑顔のあるカフェのコーヒーはあるいはオイシイのかもしれないが、笑顔を売り物にするカフェのコーヒーは確実にマズイ。『お望みなのは、コーヒーですか? スターバックスからアメリカを知る』は、「マニアックス」ではなくて“Demoniacs”「デモニアックス」と呼ぶべき、スターバックスの邪道を示す好書。
 
コメント (6) /  トラックバック (0)

コメント

すごい本ですね。
珈琲国王(GreenP's) URL [2013年05月05日 16時42分] [編集]

こんにちわ。
読んではいませんが、コンセプトがすごい本ですね・・。
出版された方は勇気あるな〜と素直に思います。
僕には内容の真意が読み取れるかわかりませんが、一度読んでみたいと思います。

僕の住んでいる福島県郡山市は、東京や愛知に比べたらずっと田舎な街ですが(震災後、さらに衰退しています)、それにもかかわらず、近くの国道沿いに最近スタバが出来ました。
郡山駅前には元々1店舗あるんですが、アメリカ大手企業が、こんな郊外にまでわざわざ来なくても・・と正直思ってしまいます。
マクドナルドなどと同様、世界中を自分色に染めたいんですかねぇ・・。

to:珈琲国王(GreenP's)さん
帰山人 URL [2013年05月05日 17時28分]

そうですか?虚言や妄言ならば‘勇気’も必要かもしれませんが、こういう本は躊躇無く‘元気’に出版してほしいなぁ、と。
先日クローバー店舗に関するWeb記事冒頭に「鳥取県以外の全ての都道府県で展開しているスタバ」とあったら、‘鳥取ディスってる’と反応する声多数。スタバに地元を染めて欲しい日本人もいる、ってコトですナ。そういうブランドの共依存的状態を暴いたイイ本です。オススメします。

なるほど・・
珈琲国王(GreenP's) URL [2013年05月06日 00時06分] [編集]

レスありがとうございます
確かに自分の所在地だけないとなると、「差別しているのか」という感じになるかもしれませんね。

僕の地元は北海道札幌なんですが、都会と言われながらコンビニやファミレスなどはほとんど地元企業で、ここ6〜7年の間に一気に大手が新入し始めました。
帰省する度に「札幌もずいぶん内地企業が参入してきたなぁ」と思います。

各方面で「暴露本」や「ネット晒し」が横行しているので、真偽はともかくあまりこういう風潮は好きになれないのですが(知らないうちが幸せ・・と思う腰抜けなので(^^;)、この本はぜひ読んでみたいと思います。
GWの散財のほとぼりが冷めたら、嫁に交渉・・のパターンで(笑)

to2:珈琲国王(GreenP's) さん
帰山人 URL [2013年05月06日 00時25分]

あ~私が紹介すると、私の‘悪意’(?)が混じってしまいますが(笑)、著者のブライアン・サイモン氏も訳者の宮田伊知郎氏も丁寧で良い仕事をしていると思います。膨大な注釈や出典を見ても、歴史学・社会学の著述「作法」を心得ている旨は間違いなしです。ある種の‘現代ブランド喫茶文化論’とでも言えるでしょうかネ。

No title
ちんきー URL [2013年05月06日 01時47分]

気、気になるう~
メチャ面白そう・・・と思ってアマゾンで検索したら・・・3,360円!!
中古品が出るまで「お預け」かと・・・

to:ちんきーさん
帰山人 URL [2013年05月06日 20時19分]

ふふふ、あんまり売れない本だと思うのでスグ安く出るかどうか、気長にお待ちください^^;

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Author:kisanjin
鳥目散 帰山人
(とりめちる きさんじん)

無類の珈琲狂にて
名もカフェインより号す。
沈黙を破り
漫々と世を語らん。
ご笑読あれ。

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